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大狼と最弱たち

 え、なに?なになに?

 さっき、どこかへ向かったビーバーが焦って戻ってきた。顔がとても険しいかった。

 「村長…た、大変です。ヤツです!早く逃げて下さい」

 「何!?」

 え、え、ヤツって何?え?え?

 彼が言った時、天井がギシギシ鳴らし始めた。

 そして、天井は粉々に壊れ、少し黄ばみがかった大きな牙みたいなのと灰色の毛が見えていた。それは、何かの動物だと分かった。そいつは口を小さく空け、勢い良くこっちへと近づけて来た。俺は何とか回避できたが村長に知らせに来た彼が下半身だけ出ている状態で口に咥えられていた。ソイツは、彼を完全に口の中へ入れた。

 「……え?え?」

 俺は全く状態が把握出来ていないどころか思考停止していた。

 ソイツは次に俺に向かって口を開けてきた。

 俺は、思考停止のままで身動きがとれなかった。

 口が目と鼻の先まで来たとき横から強い衝撃を受けた。俺は、その衝撃で巣の出入り口近くまで飛んだ。衝撃の正体は村長が自らの危険をかえりみず俺を助けるために体当たりしたものだった。そのおかげで、さっきまで思考停止していたのが動き始めた。でも、一歩遅かったらどうなってたか…

 「おい!ここはダメだ!そっから外へ逃げろ!」

 「…え?」

 「早くしろ!」

 「…あ、は、はい!」

 俺は、村長に言われたように急いで外へ逃げた。巣の外へ出て水面に顔を出した。

 俺の目の前に入った光景は、灰色の毛に紅い目をした通常よりも十倍は大きい狼だった。

 

 ―グルグルグル、グルグルグル…


 狼は喉を鳴らし森の方を向き睨めつけた。暫くして、睨めつけた方へ走っていった。そして、危機は通り雨のように去っていった。

 「おい!大丈夫か!」

 「…ええ」

 一匹のビーバーが駆け寄ってきた。彼は、とても険しい顔をして言ってきた。すぐに真剣な顔になり俺に頼みごとをしてきた。

 「今、誰でもいいから手を貸して欲しい。…手伝ってくれるか?」

 俺は、無言で首を縦に振り頼みごとを受けた。

 


  「こっちを手伝ってくれ、中にまだ家族がいるんだ」

 俺は、さっきの大狼に壊された家の撤去を手伝った。家の中には数匹のビーバーが閉じ込められていた。中には無残な姿で死んでるビーバーもいた。

 うっ…グロ過ぎて吐きそうだ。

 …あの時、なんであの狼は森の方に行ったんだ。

 俺は撤去作業をしながら脳内で色々と考えた。でも、やっぱり答えは出ない。

 「やっ!」

 「おっ!」

 声の後とともに背中に叩かれるような感覚が走った。後ろを振り迎えるとさっき助けを求めたビーバーだった。

 「さっきは助かった。君が手伝ってくれなかったら今以上に酷い事にっていたかも知れない。」

 「…いや…俺は、別に…」

 「それでもだ…」

 彼は、悲しい顔から真面目な顔へ変わった。そんな顔を見たら何も言えなくなった。

 その後、彼は笑顔になった。

 「え〜と、名前なんだったけ?あ…僕はマリスって言うんだ」

 「俺は、カイって言うんだ。よろしくな。マリス君」

 「うん」

 マリスは俺に口で隠れていた出っ歯を出し円満の笑顔を見せた。俺もいつの間にかに少し笑顔になっていた。この世界に来て初めて笑った。

 俺は、脳内で考えていた疑問を聞くとこにした。

 「なぁ、マリス君」

 「うん?」

 「聞きたい事が有るんだ。…いいかな?」

 「力になるかは知らないけど」

 「さっきの大狼ってなんで途中で森の方に行ったんだ?」

 彼は、予想外の質問が来たのか少しの間フリーズした。そして、我に戻ったのか俺の質問に答えようとした。

 「あぁ、それは…」

 「冒険者だろう」

 「「!?」」

 突如、ハードボイスの声が後ろから聞こえた。俺は、後ろに振り返るとこの村の村長だった。

 てか、村長あんたが答えるんかい!

 村長はそのまま話を続けた。

 「大狼は冒険者のところに行ったんだろう」

 「冒険者って言う事は人間がいるって言うことなんですか!?」

 「そうだ」

 この世界にも人居たんだ。安心したようなそうでも無い様な…

 エルフとかドワーフも居たりするのか?

 「その冒険者にはエルフとかも居たりするのかな〜って?」

 「何言ってんだ」

 いるはずないですよねー

 まぁ知ってましたよ。あれです。あれ、念の為って言う奴です。

 「いるに決まってんだろ!」

 え!?居るんだ。それもそっすよね、二足歩行と喋れるビーバーが居るのに逆にエルフが居ないとか有り得ないよな!まぁあ、知ってましたし…

 「で、その大狼は冒険者のところに行ったと?」

 「あぁ、お陰で助かったがな」

 村長はあまり嬉しそうな表情では無く、少し何処かへ落ち込んでいるようだった。俺は、宛て聞かないことにした。だって、聞いたら面倒くさそうだったからだ。

 「あと、その冒険者は誰でもなれるんですか?」

 さっきまで落ち込んでいた村長の顔が俺の問いを聞いた途端、すこしビクッとなり俺の顔を見てきた。

 「ん?お前、冒険者になりたいのか?」

 村長は俺の問を問で返してきた。俺は予想外の返しが来て焦ってしまった。

 「なりたいと言うかならないといけないと言うか…」

 「何を言ってるのか分からんが、辞めといた方がいい」

 俺は、焦ったせいで曖昧な答えをした。しかし、どっちにしろなりたい理由は無い。

 村長は俺の問を聞いて何だコイツって言いたげな顔をしてきた。俺は、その顔にイラッとキタがここはグッと我慢した。それは、俺が曖昧な答えをしたのもあるが村長に勝てる気が全くしなかった。勝てるどころか殺されると思った。 

 「え?なぜ…ですか?」

 「僕らビーバーはこの世の中で最弱なんだ」

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