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神様のごとく行い  作者: ささかまぼこ
第一章:人を好きになるということ
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第一話:人が死ぬまでの時間

読み終わった後、だめだしなどを頂けると助かります。

「しっかし、お前も大変だな~、同じ日に交通事故、人の死ぬ瞬間に立ち会うなんて」

この人は俺の父親の杉田敦、俺が事故にあったと聞いて車で病院に来てくれたのだ。


「事故にあったと聞いたときは流石にあせったが、こうして無事でよかったよ。

幼い子供を助けたと聞いて父さんうれしかったが自分の命を一番に考えてくれよ」

「…うん」

俺はそれ以上何も言えなかった。事故にあって頭上に数字が見えたこと、

その数字が人が死ぬまでの時間を表していることを…。

幸いな事に父さんの時間はまだまだ猶予があった、おそらく平均的に長生きするんだろうと安堵した。

それでも肉親の死への時間が見えるのはまったくいい気がしない、気分は最悪だ。

浮かない顔をしていたのか、


「なんだ?ひょっとしてどこ痛むのか?」

「いや!ぜんぜん!!」

「そうか?そうだ!なんか食って帰るか?」

「いや、今日はいいよ。流石に疲れたから、家で休みたい」


家に着き、母と妹が出迎えてくれた。


「おかえりアキ、大丈夫?痛いとこない?」

「うん、大丈夫だよ」

「お兄もこんな時期に交通事故に会うなんて大変だね、中学卒業前だよ?」

「わかってるよ」

「ごはんどうする?食べれそう?」

「うん、でも今日はやめとくよ、疲れたから部屋で休むよ」


そう行って俺は2階の自分の部屋に向かった。

疲れたので自分のベッドにダイブしようとしたが、その前に自分の姿を鏡で見たからだ。


……やっぱり自分の時間は見えないか


鏡やガラスに映った人の時間は見えない為、自分の死への時間を確認することが出来ないのだ。

他人の死ぬ時間が見えるのも辛いが、そのせいで自分の時間が見えないのも恐ろしく怖い。

俺は何もかも忘れたくて、ベッドに飛び込んだ。寝てしまえばすべて元通りになるんじゃないかと淡い期待も込めて。


 翌朝、そんな期待も空しく家族の死ぬ時間はきっちり見えた、家族全員が平均的に長生きすることがわかったので安心はしたが、一夜たっても見えるということはこれからも見えるのかと思い気が滅入る


「それじゃあ、アキ、メイ、お父さんとお母さんは先に行くからな。アキも無理して学校行かなくてもいいんだからな」

父と母の仕事は学校の教師だ。教師というものは意外と朝が早い、部活動の顧問などをしていればなおさらだ。我が家では最後まで残るのは大概帰宅部の俺くらいなのだが、今日は妹のメイがいっしょだった。


「それにしてもお兄、本当に今日学校行くの?事故にあったの昨日なんだから休めばいいのに、高校受験も全部終わってんだから、一日くらい休んだって大丈夫っしょ?」

「休むと理由言わなきゃいけないだろ?説明するのが少しめんどくさいの」

「私だった休んでだらだらしてるけどなぁ」


この少し生意気そうな妹の名前は杉田芽衣、俺の二つ下の中学一年生だ。

俺と違い社交的ですぐ誰とでも仲良くなれるという羨ましい特殊能力をお持ちだ。


「それじゃ、俺先に行くぞ」

「あ!ちょっと待ってお兄、たまにはいっしょに行こうよ」

「そんじゃ荷物持ってやるよ」


このように、この頃の女子には珍しく兄嫌いにはならず、普通に接してくれる可愛い妹だ。

俺もついつい甘やかしてしまう。


  ……あれ?俺シスコンじゃないよな?


 俺とメイが通う中学校は同じだ、家から徒歩一〇分くらいに駅があり、そこから二駅先に俺たちが通う柊塚中学校がある。休まず学校に行くこと決めたのには理由がある、この目に映る時間になれることだ。

この間のようにすぐ死ぬことは稀だとしても、五年、一〇年で死んでしまう人を見ることは稀ではないだろう。そういう人たちに対して自分が出来ることと言えば、死ぬ時間を伝えることぐらいしか出来ない。

でも俺は医者でもなければ神様でもない、そんな俺の言うことを真に受ける奴などほとんどいないだろう。

だから俺はこの時間が見えてる間は動揺しないよう生活すると決めたのだ。


「おー!明弘おはよう、メイちゃんもおはよう」

「あ!雄二さんおはよー!」

「おはよう」


通学中で雄二と会った、俺は無意識に頭上の数字を見て安堵した。そこからは三人で他愛もない話をしながら学校へ向かった。その間メイは昨日俺が交通事故にあった事は雄二には言わなかった。この男に言えば学校中に知れ渡るのに一日かからないからだ。この妹は人が本当に嫌がることはしないのだ、…後で何か奢るはめにはなりそうだが。


「それじゃ、お兄、雄二さんバイバイ!」

「おう、じゃあな」


妹とは学校についてから分かれた。さて、ここからが本番だ。どんなことがあっても動揺するな。俺は少し気合を入れて教室に向かった。


 俺は駅のホームで帰りの電車を待っていた。時刻は夜の十九時、帰りのラッシュも過ぎ人もまばらにいる。結局あのあと意気込んで教室に向かったものの数年で死ぬような人はいなかった。学校内にもいなかった。大量の数字が見える為気分は少し悪くなるが、登校前より幾分は気が楽になった。

一年で百万人以上の方が死んでいると聞いたことはあるが、案外近くにはいないものだ。少し緊張も解けたので帰りに雄二と飯を食っていた、今はその帰りである。


もうすぐ電車来ると思い立ち上がり、ふと左側を見て驚愕した。電車を待っている女子学生の時間が、電車の到着時間とほぼ同じだったからだ。俺は思わず彼女のそばに駆け寄った。

「あの!!」


彼女の肩を掴んだ。すると驚愕しながらこちらを見て、次の瞬間涙を流しながら膝が崩れた。



次は5月26日までには投稿したいと思います。

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