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7話

 初めての猟から四日。

 転生してから二週間が経った。

 ここ最近の話をする前に、まずは通常のリザードマンの猟について説明する必要があるだろう。



 リザードマンの猟。

 …それは猟とは名ばかりの、ガチンコの殴り合いである。


 魔物を見つけると、どいつもこいつも我先にと武器を振り上げて飛びかかっていく。

 ここで一瞬でも躊躇しないのがポイントだ。

 他の奴等に自分の勇猛さをさりげなくアピールできる。


 一発ぶん殴ったら、そこからは泥臭い殴り合いの始まりだ。

 ひたすらに正面から武器で殴る、殴る。

 うっすら笑顔なんか浮かべると、より狂気が滲み出てアピールポイント高めだ。


 魔物からの攻撃は、防御はするが避けたりはしない。

 避けるのは臆病者のする行為であり、まっ正面から攻撃を受け止めてこそ賞賛されるのだ。


 そして、そんな泥んこレスリングの末にやっと獲物を仕止める。

 勝利の雄叫びをあげる勇敢な戦士の姿に、みんなウットリ甘勃起である。


 しばらくすると皆我に返り、俺も俺もとまだ見ぬ強敵(えもの)探索に再び駆け出して行くのだ。



 馬鹿種族だ。


 もうね、DNAに『馬鹿』って刻まれてるんじゃないかと疑うレベルの馬鹿種族。


 そりゃ死亡率も高いワケだ。


 リザードマンは決して弱い種族じゃあ無い。

 むしろ、沼地の生態系ではトップクラスに君臨していると言っても過言では無い。


 ただ、これは部族の誇りなのか、単に脳筋種族なのか。


 更なる強敵(えもの)を求めて、王城である筈の沼地を離れ、わざわざ地形的に不利となる平原や野山へと猟におもむくのだ。


 どっかの格闘家(ストリートファイター)か。



 …さて、そんな残念な種族の中で、俺が新たに提唱した猟のスタイルがどうなったかと言うとだ。


 もうね、楽ってレベルじゃ無い。

 もはや作業。


 新たに製作させた悪目立ちする大盾を構えたタンクを文字通り『盾』にして、ドクロとカリブがヒット&アウェイの遊撃。

 前衛に気をとられてる所に、林や藪からキザがスナイプ。

 苛立ちやダメージから動きが散漫になってきた頃合いを見計らって、ノーキンと俺がデカい一撃を入れる。


 大体これで済んでしまう。

 …俺が適当に考えただけの、こんな『ぼくがかんがえたさいきょうのふじん』が上手く機能してしまう辺り、リザードマンという種族が実はどれだけ能力が高いかがご理解いただけると思う。



 …まぁ、同期共も最初はあまり良い顔はしなかったけどな。

 今までのリザードマンの伝統を全否定するようなもんだったし。


 しかし、何度か繰り返して型がハマり始めると不二子ちゃんもビックリの手のひら返しよ。


 なんせほとんど怪我しない。

 タンクに攻撃が集中するけど、リザードマンのスペックを攻撃を捨てて防御のみに回した時の意外な堅牢さときたら。


 変態戦闘民族のリザードマン達の中で、珍しく弓矢を得物に選んだキザが占める功績もデカい。

 前述した通り、殴り合い主義のリザードマンにとって弓矢は臆病者の武器とされており、的当て用のオモチャか女子供がオヤツを得る為の物って扱いだった。

 キザが何を思って弓矢を選んだのかは分からないが、魔法が使えない俺達にとって貴重な遠距離攻撃になっている。


 ちなみに、連携が上手く機能し始めてから、俺は得物を変えた。

 あの槍は元々一人で猟をする事を想定しての武器だ。

 なので前の銛のようなタイプではなく、薙刀に近い形状の槍をあらたに製作した。

 前の槍より少しばかり長く作ったので、ポジション的にも使い勝手が良い。

 ここぞという時に遠心力をのせた強力な一撃をお見舞いできるのもグッドだ。



 そんな調子なワケだから、慣れてきたら実にサクサクと猟が進みはじめて、今では余程の強敵とエンカウントでもしない限り日に二桁の獲物を得るまでになっていた。


 食糧庫がパンパンだぜ。

 需要を供給が完全に上回ってる。


 おかげで大人連中に目をつけられて、どんな猟の仕方をしてるんだとか煩く質問されたけど、『サクッと行ってブスッてしました』とか適当に答えた。

 納得いってない感じだったんで、『いやぁ、あれ位全然余裕っスよ。逆になんであれ位狩れないんスか?さぼってんスか?』って言ったら、『役立たずの腰巾着の分際でっ!』とか言って襲いかかってきたからシメた。

 別に殺っちゃってもよかったんだけど、まぁ立ち位置とか色々考えて軽く頭骨を噛み割る程度にしておいてやった。

 そもそも腰巾着違うし。

 青年の事はそこそこ高く評価しているが、あくまで彼は参謀ポジだから。



 俺を含む同期共は、いつの間にか身長も2mを越えていた。

 これは大人のリザードマンより若干大きい位である。


 …つまり、見た目だけならもう大人の仲間入り。

 やったね!今夜はお赤飯だ!


 経験値は六人で分割されてはいるが、日に二桁の獲物から得られる経験値は分けても余りある物だったようだ。

 体格もより筋肉質になったし、鱗なんか他のリザードマン共と光沢からして違うもん。


 こりゃあアレだな、変異ももう秒読みって感じなんじゃねーの?

 多分だけど、成長期にどれだけ経験値を稼げるかが変異に必要な一つの鍵なんじゃねーかな?

 なんせこんだけ個体差がでてるワケだし。



 そんな感じで変異の条件を模索していたある日の朝。


 俺も想定外だったリザードマンが、突然の変異を成し遂げた。




 あの青年だ。

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