これがホントの第1話
あー、えっと何これ?どうした?
てかここどこよ?
色々混乱しつつ辺りを見回すと少し見覚えがあるような気がした。
というか、俺の地元だった。
あーうん、帰ってきてしまったものは仕方がない。地獄のような師匠との修行の末余程のことには動じないようになっていた。
まさか常にどっきりを仕掛けられるっていうあれ、意味があっただなんて。師匠凄ーい!
…まあおちょくってただけだろうけど。
とにかく俺は家に帰ってみることにした。やっぱり顔みたいし。どうしてるかなー父さんと母さん。俺の姿見たらきっと驚くぞー!
なんてちょっとテンション上がりながら逆立ちで家に行ってみた。いや、特に意味はないんだけど。
でも家には誰も居らず昔お世話になってた近所の人に聞いてみた。
おばさんめっちゃ驚いてたな。余りのことに錯乱しすぎて不審者と間違うんだもん。これにはマジ困っちゃう!何とかなだめて話をしてみた。
で、結果的に色々分かった。
…両親は死んでいた。
そういえば異世界に行ったのって交通事故が原因だもんな。そりゃ死んでいてもおかしくはない。おかしくはないが…それなりにショックだった。
なんだよ、師匠の修行結局意味ねえじゃん。
しかしショックに身をやつしている暇は俺にはなかった。
何故なら、10年前に死んだと思っていた人間が突如現れたのだ。それゃ世間は騒ぐ。
俺は毎日対応に追われた。正直すごくだるい。
結果、事故による記憶喪失で押し通すことに成功した。無理矢理くさかったがな。
そんなわけでその件に関してはなんとかなったわけだ。だが、俺にはもうひとつ目を反らすことのできない問題もあった。
え?就職?22歳だろうって?
うるせー!分かってるよ!わかってるけど後回しなんだよ!何とかする!
あ、そこ!小卒とか言うな!
そうじゃなくてだ。もっと根本的なこと。そう、地球の環境だ。
なんと、魔法が当たり前になっていた。ん?って話だが魔法の学校が、魔法を使ったスポーツが、魔法を管理する機関が当たり前にそこにあった。
よくよく聞いてみれば10年前、ちょうど俺があの世界に行った次の日突如として人々の頭に知識が舞い込んだらしい。
ようはみんな魔法が使えるってことだ。
俺はそれを歓迎した。正直、普通の世界に帰ってきて今持ってる魔法とかってどうしたらいいのか全く分からなかったからすごくありがたい。
だが、その変化のせいで俺はもう1つ致命的な問題を抱えてしまったのだ。
それは学校に通えというやつである。
国のお偉いさんっぽい人が言うには、この世界の学校は魔法を学ぶのであれば25歳まで入ることができるらしい。
いや、絶対馴染めないだろ。バカなの死ぬの?っていうと担当者は「小卒でもいいんですか?」と言った。
その一言が心をえぐり決め手となって若干喧嘩になってそして、俺は学校に通うこととなった。現在高等魔法学校二年生。
楽しい!!!!なんだ!高校生って!楽しすぎだろ!
いや、高校生って年齢じゃないのは分かってるんだがそれでも楽しい!
皆普通に話しかけてくれるし!お父さんお母さん、俺今高校生してます!
てか、マジで俺の10年の意味だよ。なんなんだよ勇者って。チョーウケるんですけど。
今は魔法学の授業中。
そういえば何故小卒の俺が高校生から始められてるかというと、向こうである程度の勉強していたからだ。
さすがの俺も中学生とは無理だな。馴染める気がしない。
「じゃあ次は賢者についてだ」
物思いに耽ってる間に次の内容に移ったらしい。
「巽、説明してみろ」
「え?えーっと…」
うわ、完全に油断してた。まさかこっちに来るとは。全然わかんねー。とりあえず適当に答えるか。
「進化前が遊び人のやつ?」
「なんだそれは」
先生の出す冷ややかな空気の中、あれ?ドラクエって知らない?とは言えず俺はその場で無言を貫いた。
「はあ、もういい。答えられないんなら他にいけるやついるか?」
とその時、はいと凛とした声が教室に響く。その声を出したのは隣に座る女生徒。黒髪ロングな純清楚系。
「おお、水島!任せた」
その水島こと水島涼子はスラスラと言葉を連ねる。
「賢者とは魔法学の権威のことです。優れた知識と常人には思い付かない発想を備えていることから協会は彼らの身を全力で守護しています。協会はその手段として、地下研究所に彼らの身を置き更に概念武装を与えています」
さすが、よく覚えてるなーなんて考えているとチャイムが鳴り響く。
「はい、じゃあ今日はここまで。テストも近いからしっかり復習するように。特に巽、いいな」
そう言い残し先生は帰っていった。俺を睨みながら。
相変わらずあの人は俺に厳しい。まあ、いいんだけどね。
そういえば名前何て言ったっけ?
田中とか斉藤とかその辺の感じだった気が。
俺があの教師のことを考えてウンウン唸っていると肩を叩かれた。
振り向くとそこにはさっきの水島さん。
彼女はクラス委員を勤めている。いわゆる優等生というやつだ。だからかは分からないが、落ちこぼれの俺に優しい。
「巽くん、賢者くらいは覚えてないとテスト大変よ」
と思ったらいきなり手厳しいことを。
「大丈夫大丈夫。もう覚えた」
「嘘。前もそんなこと言ってたけど結局覚えてなかったじゃない」
「そうだっけか?」
「そうよ。遊び人の進化前ってあれドラクエでしょ?よくあんなの答えたわね」
いや、逆によくあんな適当なボケ覚えてたな。俺ですら忘れてたわ。
「いいじゃねえか。で、賢い水島さんは俺をイジリにわざわざ来たのか?」
「そうじゃないわよ。いや、それもあるけど、今度の実習の話。どうせ忘れてるでしょ」
「そういえばそんなのがあったな。いや、覚えてるから。校外に妖魔を倒しに行くやつだろ」
「そうよ、よく覚えてたわね。でもどや顔するようなことじゃないと思うわよ。で、それに関して一緒のチームでやらないかというお誘いをしに来たのよ。あなたのお友だちも誘ってあるわ」
実習は自分達で五人程度のチームを作り行う。
俺の知り合いにも話をつけてるとは、なるほど根回しはできてるというわけか。
「そうだな。そういうことだったら喜んで入らせてもらうよ。で、俺のお友だちっていうのは?」
「佐々木くんと宮藤さんよ」
「ああ、あいつらか。了解」
「私の友達も一緒だからそこは分かっといてね」
じゃあ、とそのまま水島さんは友達のところへと行ってしまった。
…………………。
次回、実習へ!