照らしたがりの男1
輪廻転生、という言葉を知ってるか?
仏教やヒンドゥー教に見られる思想で、極々簡単にいえば
死した肉体から魂が離れ紆余曲折を経て新たな肉体に宿るって話だ。
システムとしては、魂には経験を肉体には遺伝子を情報として蓄積して、
生命の進化を促すものなんだと。
単細胞生物から始まり、脊椎動物への肉体の進化に伴い魂も進化を遂げる。
進化した魂はまたそれに相応しい肉体に宿り進化を促す。
だが、このシステムには欠陥があったんだ。
それは単純な需要と供給の問題で、進化した生物は地上に繁栄し
その数を増やしたが、進化した魂は同じように増えやしなかった。
遺伝子をもとに生産される肉体に対して、生産されてから
経験を積み重ねる魂とではバランスがとれねぇ、当然だな。
ヒトが繁栄するに従ってシステムが悲鳴を上げ始めた。
そこでようやく気づいた管理者は泡を食って対策を始めたんだとさ。
バランスが崩壊し魂をもたない肉体がで始めては深刻なエラーが起きる、
しかし数に余裕のある微生物の魂ではヒトの肉体に噛み合わずやはりエラーを起こす。
新たな魂の進化を促すにも既に遅く、何らかの時間稼ぎをしなくては
『輪廻転生』システムは崩壊を起こすところまで来ていたらしい。
そこで管理者ははたと気づいた、それなりの強度でダブついてる魂があるじゃあないか…ってな。
結果として形の合わない魂を強度に任せて肉体にブチ込んで、
後々問題が起きるかもしれないが、それはそれ…
思うに管理者ってのは底抜けの楽天家か、怠け者なんだと思うぜ。
そのお陰で飯を食えてるわけだから何とも言えないがね。
それで・・・笑わずに聞いてくれよ、ここまでも荒唐無稽だったが
こっから先はもっと破天荒というか・・・まぁ、聞いてくれ
それで・・・ブチ込まれた魂ってのがヒトの進化とともに
神秘性が薄れ、存在を維持できなくなった連中なんだ。
つまりは魑魅魍魎、神話に語られる化物から
語られなくなった神々に至るまでヒトという器に叩き込まれた訳だ。
型の合わねえ器に入った連中は大抵の場合、本人の意思にかかわらず
遅かれ早かれ何かしらの問題を起こす。
俺達はそういう連中の世話をしてるってわけだ、先達としてな。
それじゃあ、アンタの魂が何者か・・・照らしてみようじゃないか
おかしい、と思った。
目の前の少女が、俯いたまま表情を崩さないのだ。
大仰に世界の真実を語り、決め台詞からの渾身のドヤ顔。
困惑するなり驚くなり噴出すなり馬鹿にするなり・・・
何かしら反応してくれてもいいじゃないか。
正気ですか!?とか言ってくれればまだ手はあるんだ。
真実だって証明する手段も幾つかある。
なのに少女は沈痛な面持ちのまま、
この事務所へ連れて来たときからさっぱり変わらない表情のまま
視線は一向にこちらへ合わせようとしないのだ。
これは俺が頭のおかしいヤツだと思われてるのだろうか?
それとも荒唐無稽すぎて飲み込めていないのだろうか?
そんなことを考えながら俺がゆっくりと少女の正面の椅子に座ると、
不意に少女はこちらへ向き直って中腰になり、視線の高さを俺と合わせる。
その表情は何かの覚悟を決めたような、
恐れているような強張ったものだった。
そして少女はゆっくりと口を開き、
その言葉を発した。
「私が・・・私がその『管理者』なんです・・・」
「正気か!?」
という話を思いついたので適当に書いてみるテスト
初投稿なんでお手柔らかにね!