表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/55

二十二杯目✿指輪のないプロポーズ

6年前、絢の視点

 ハルと暮らし始めて、私は彼に甘えっぱなしだった。

 自分でも恥ずかしいくらい、べったりだった。

 甘い初恋に、溺れていたんだ。


 彼には、いつも誰かが関わっていた。

 よく一緒にいたのは、全身タトゥーの、ベビーフェイスなリーゼントの怪しい人。

 新宿のヤクザっぽい人、ガタイのいいオカマ達、江戸っ子訛りの師匠。


 そして妹のマナ。


 私は怖かった。

 いつもまともじゃない人達と付き合っていて、きがつくと、どこかへ行ってしまう。

 なにをしているかは教えてはくれない。

 たまに大金を持っている。

 そんな彼は、いつか、危ないことになるんじゃないかって。


 そんな私の勘は、あたった。

 彼が、がんちゃんと呼ぶ友達とでかけてから、一週間ほど帰ってこなかった時だった。


 私は、下北沢のライブハウスでバイトを始めていたので、それなりに私も忙しかった。

 田舎とは違い、ライブハウスもたくさんある。

 ブッキング、宣伝、メール。

 結構な仕事量で、クタクタだった。


 朝までライブハウスでの仕事をし、その日のバンドメンバー達と、近くの中華屋で打ち上げをした。

 朝日が眩しかった。

 マンションまでの道の途中、大きな公園のベンチで、彼は眠っていた。


 頭から血を出して、手の甲が腫れて、爪が何枚かはがれていた。


 私は息が詰まった。


 ハル「絢か……どうした?

 ないてんのか?誰かになん」


 絢「ばがあ!!なにしてんだよ!

 こんなに、こんな。

 大事な手なんだろ!!……どうして」


 寂しそうな顔で、少しだけ彼はわらった。


 ハル「そうだな。


 ……ごめんな」


 それだけ言うと、

 優しく、私を抱きしめた。


 絢「っう、……ウ……エーエッ」


 子供のように泣いた。

 声にならない声で、泣きつかれるまで泣いた。


 ハルは熱が出て、手の骨も折れていた。

 しばらく休んでいたけど、まだ包帯も取れていないのに、急に出かけたいと言い出した。


 電車に乗って、新宿につくと彼にとりあえずついていった。

 そこは、紳士服の店だった。

 小さな店舗で、まるで露天のような店に、やたらとチャラい、スーツ姿の男がいた。


 店員「ハルさん!うわー。

 その手、どうしたんすか?」


 ハル「まあ、事故だよ事故」


 店員「そっすか〜。

 それにしても、珍しいスネ!

 まさかスーツ買いに?」


 ハル「ああ。

 就職しようとおもってな」


 店員「ついに本職の方の仲間入りっすか!

 おめでとうございやす!!」


 ハル「ちげーよ。

 そろそろ結婚するんだよ。だから、まともに働くの!」


 絢「え?」


 店員「マジっすか!?

 ハルさんが!誰と?」


 ハル「このレディに決まってんだろ?


 なあ?」

 

 そういって、彼は笑うのだった。


 絢「……うん」


 私は生まれて初めて


 嬉しくて涙がでた。


 それは


 指輪のない、プロポーズだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ