プロローグ
ふと目を閉じれば、思い出してしまう。あれは……いつの事だっただろうか。
桜が舞っていたから、春だったと思う。
俺は女性を抱えて何かを叫んでいる。不思議とその声は聞こえない。
抱えている女性の腹部からは止めどなく血が溢れていて、俺はそれを抑えようとするけれど一向に止まる気配はない。
血にも、けがにも慣れ親しんでいて、処置の心得もあるはずなのに、焦った頭は何も考えられないでいた。
周りに助けを求めようにも、辺りを見回しても人はいない。
そうしている間にも血は止まることなく溢れていて、俺は手が汚れることも構わずに抑え続ける。
理性ではもう助からないと、助けられないと理解していた。その思考を頭の隅に追いやる。俺は守ると決めたのだ。諦める事など出来るはずがない。
彼女の名前を呼びかけても、弱々しく微笑むだけだった。
もともと白く透き通った彼女の肌は、血を失った今、青白くなっている。
明らかに血を失い過ぎている。このままでは後数分しか持たないだろう。
それが分かっているのにも拘らず、俺はただ傷口を抑える事しかできない。
彼女の血で俺の手は勿論、俺の服も、彼女の服も汚れていた。
それだけに留まらず、俺の足元も血で水溜りが出来ていた。
その血溜りに桜の花びらが舞い散って、やけに綺麗だ。
(あぁ……彼女は死ぬのだな……)
そのあまりの美しさに悟ってしまった。彼女はこの美しい情景に看取られて逝くのだと。
もう一度、彼女の名前を呼びかける。彼女は弱々しく微笑みながら掠れた声で告げた。
その言葉を俺は未だに忘れられないでいる。
初めまして、らぎと申します。
white clover プロローグ 如何だったでしょうか?
なんとなくの思い付きで授業の間にちょくちょく書いていた作品ですが
思ったより短くなってしまった……
そして珍しくセリフがない
どうせ次からは増えていくんでしょうけどね(笑)
地の文が苦手なんですよねー
まぁ暇な時間を使って書いているので次は遅くなると思いますが
気長に待っていただけたらと思います。
……
待っててくれる人がいるといいなぁー(苦笑)
そんな感じです。
また一話でノシ