再会
第二章 再開
あれから2ヶ月が経った。季節は夏から秋に変わり、辺りの山は紅色へと変わった。あれから2ヶ月過ぎても、彼と再開することは無かった。
(今頃、何してるんだろうな・・・。)
そんなことを、考えながら、窓を通して、空を見上げる。
「薫、今日暇?」
「うん。」
「じゃあさ、ライブ行かない?」
「いいよ。」
誰のライブなのか、この時は知りもしなかった。
近くのライブハウスに足を踏み入れ、一番に目に入ったポスターに、見たことのある人がいた。
(うっ、嘘ー。廣瀬君・・・)
そう、廣瀬唯斗君だった。まさかバンドをしているだなんて知らなかった。
「かっこいいよねー、ブラスト。」
「ブラスト?」
「そう、blackSTRAIGHTだから、ブラスト。特に、ボーカルのyuito。」
(ブラストかー。)
メンバーは、三人。格好いい人ばかりで、人気も多いらしい。多分、知らないのは私だけだろう。雑誌とかあんまり読まないし。
「何突ったってんの?早く入ろう。」
「うん。」
既にライブは始まっており、丁度ブラストの番だった。
「キャー。」「カッコイー」
など、女子達の黄色い声が響き渡る。
「今晩は。ブラストです。」
廣瀬君が、バンド名を行った後、ドラムを叩く撥を持った人が、手を上にあげて、リズムをとった。
ー君にしか似合わない このドレス
君の代わりは何処にも居ないから
仲間とふざけあった少年時代は
今は綺麗な思い出
今そこにいるあなたの方が
もっと 綺麗だね
いっそ 僕が流れ星になっても
君は気付かないでしょう
どこへ居ても僕はいつも傍にいるよ
2君にしか聞こえない 僕の歌声
何故か届かない僕の気持ち
皆それぞれ進む道があるけれど
離れて初めてわかる
今その言葉君に伝えたい
ずっと “愛してる”
いっそ僕が流れ星になったら
君は気付くのでしょう
傍に居なくても気持ちは離れないよ
いっそ僕が流れ星になっても
君は気付かないでしょう
何処にいても僕はいつも傍にいるよ
辺りから拍手が起こり、その後にボーカルのyuitoが話始める。
「今日は、応援してくれてありがとう。今日歌った曲は、新曲は『流れ星になっても』は、僕がキャンプで出会った彼女に向けての歌です。その彼女が、今、この会場に来ています。・・・」
そのまま舞台から降り、女子たちが道を作った。その間から通ってくるyuitoは、白馬の王子様みたいな感じだった。
「おいで。」
yuitoが私に向かって手を伸ばした。
「薫、yuitoと知り合いだったのー?」
隣にいた七瀬が、私に突っ込みを入れる。それも耳に入らず、近付いてくるyuitoに目を奪われていた。
「ステージ上がってきて。」
私の手を握りながらそう言うと、微笑みを浮かべ、引っ張るように王道を歩いてゆく。そして、先にステージに上がると、手を差し伸べてくれた。私はその手を握り、ステージに上がった。
「彼女が、キャンプ場で会った、僕の運命の人です。」
(えっ、運命の人ってどう言うことー?)
私は、口元に手を当てた。
周りから、ブーイングが起こる中、私は何をしていいのか分からず、そのまま突っ立っていた。
「それじゃ、次行くよ。『桜』。」
甘く優しい声で呟くと、持っていたギターを引き始めた。ほかのメンバーは、この曲では、動かないらしい。
桜
1年に一度会える 桜が咲く季節
この瞬間 それが大事な時間
時には迷い 傷ついて
涙が出る時もある
経験とは自分を強くする
蕾が開き桜が咲く
当たり前の事だろうけど
桜の花弁の数は
自分が強くなった数
桜の花弁散る時
僕の命は散るでしょう
(切なくて、辛い歌が多いんだ。なんでかな、目頭が熱くなってきた。)
「君の名前、聞いてもいい?」
歌が終わったあと、小声で囁いて来た。
「私は、・・・永瀬薫。」
ライブが終わったあと、七瀬には先に帰ってもらい、近くのファミレスで廣瀬君と話をした。
「えっと、薫ちゃん。」
「・・はいっ。」
「学校ってどこ?俺は緑山男子校。」
「えっ、嘘。私は隣の学校の緑山女子高。」
緑山は、男子校と女子高に別れていて、大学までエスカレーター式。制服は、チェックの緑。女子には結構人気のある制服で、毎年新入生が多い。
「そんな近い学校にいたのに、どうして合わなかったんだろうね。俺達。」
「そうだね。」
そんなことを言いながら二人で笑いあった。
「赤外線しよ?」
「うん。」
スクールバックから、ガラケーを取り出し、赤外線の場面を取り出す。そして、携帯を重ねる。
「今日はありがとう。薫ちゃん、またね。」
「うん。バイバイ。」
廣瀬くんと別れ、一人で暗い夜道を歩いていた。
「なーに独りで歩いてんだよ。襲われたらどうすんだ」
と声をかけてきたのは、幼馴染みの玲織だった。口は悪いけど、優しい。
「何だ、玲織か。」
「なんだとは無いだろう?独りで歩いている寂しそうな幼馴染みを送ってあげようと思ったのによ。」
「何よ。余計なお世話よ。あたしの事なんてほっといてよ。」
私は、玲織の事がすきだった。でも、教室で玲織が、
「あいつはただの幼馴染み。」
って言う言葉を聞いて、諦めたんだ。
「ちょっと待てよ、薫。」
玲織は、私を強く抱き締めてきた。必死で腕から離れようとした。でも、玲織の力は強くて、叶わなかった。ようやく落ち着いた私を見て、玲織が喋り初めた。
「俺は、お前のことが好きだ。」
真剣な眼差しで、私を見つめてそう言った。私は戸惑った。確かに、昔は玲織の事が好きだった。毎日一緒に居て当たり前、そうどこかで思い込んでいたんだ。でも違っていた。
〝当たり前〟っていうのは、好きではないのだと。そう、恋愛感情ではないのだと知ったのだ。
だから、私は少し戸惑った後、答えた。
「ごめん玲織。あたし・・・」
涙を目にためながら、玲織を見つめる。
「分かった。・・・ごめん。」
玲織が、私の肩から手を離し、目を背けて、
「帰ろう」
と一言だけいうと、脚を動かした。
私はその背中に、心の中で〝ごめん〟と呟いた。