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・納豆セット(おまけ)

ここで今回の掌編は終わりです。

ご要望や機会があれば、また書いてみたいかなと思います。

 学堂にやってくると、私は発券機で食券を買いカウンターに渡す。その際に「うどんをかけで」と選択もわすれない。

 発券機についているボタンの都合だろう。そばとうどんで同じ値段なのもあってか、そばのセットとうどんのセットは同じ食券で済まされている。だから、こうやって注文の際にはそばかうどんか、かけかもりかを意思表示しなければならないのだ。


 しばらくして、トレイには茶碗に盛られた白米と小鉢の生卵、丼にうどんが入りその上に掻揚げ、さらにはカップに入った納豆と薬味のネギまでついてでてくる。学食とはいえこれで290円というのは安すぎではないだろうか。あんまり安いと逆に品質が不安になってくる。

 というか、これはちょっとこれはあまりに量が多すぎる。少なくとも私には全部を食べきれない。それでも納豆がでてくるメニューは他にないので、これを頼むのだけれど。


 使い回せる黒い箸を手に、生卵を茶碗に落とすと醤油をかけ、かき混ぜる。

 だいたい均一な薄茶になった卵かけご飯を箸で少しずつかきこみ、咀嚼する。

 続いては、卵かけご飯を食べている間に、少しだけ冷めたうどんをほおばる。うちの学食のうどんのつゆは良い出汁をとっているのだが、それを飲めるほど胃に隙間はないのであきらめる。


 ふぅ、もうこれ以上ないくらいお腹がいっぱいだ。

 それでもかまわず、最後に残した納豆のカップを手に取る。


 小さなカップを手に、そこにタレもカラシもいれずに黒い二本の箸をその中へと挿入する。

 そしてゆっくりと中身をかき回しはじめる。

 豆と豆が個擦れ合い、徐々に粘りけを増していく。


 回せば回すほどネバネバが増していく。

 回せば回すほど糸が引き、箸にからまっていく。

 そうするうちに臭いも強くなったような気がする。


 それでも箸はとめずに、さらにペースをあげて動かす。

 なぜだかわからないが、この行為が私はたまらなく好きなのだ。


 かき回す、かき回す、かき回す。

 ネバネバが更に増していく。

 箸にからむ糸の量もどんどん増える。

 臭いはあたりに漂うほどだ。


 疲労から、私の息もあらくなっていく。

 次第に食堂の視線が集まってくる。

 ただ納豆をかき回しているだけなのに、どうして注目されるのか。みんなそんなに納豆が好きなのかな。

 みんなの注目なんて関係なく、私は納豆をかき回し続けるのだけど。


「あははっ」

 次第に笑みが浮かんでくる。

 理由は不明。

 たぶん、楽しいから。

 たぶん、嬉しいから。

 きっと、カップをかき回すのが、とてもとても気持ちいいから。


 私の混ぜた納豆が美味そうにみえるのだろうか、近くにいた男がツバを飲み込む音が聞こえた。

 それでも私の手はとまることなく、むしろそれを燃料としたかのように勢いを増してかき混ぜる。


「はぁはぁはぁはぁ……」

 あまりに熱中しすぎて、酸素が足りなくなる。

 納豆をかき混ぜるくらいで、こんなになってしまうなんて、どこまで運動不足なんだろう。


 腕が疲労から重くなる。

 でも、納豆をまぜる手はとまらない、とめられない。

 カップの中を必死にかきまわし、かきまわし、かきまわす。

 楽しい、楽しい、楽しい。とても幸せだ。

 自分でもどうして、こんなに楽しくて幸福感を味わえるのかわからない。ただ納豆をかき混ぜているだけなのに。


 ご飯は食べ終わっている。

 お腹は一杯だ。

 納豆も十分こねられている。

 にも関わらず、私の手はとまる気配はあらわれない。

 ただただ、嬉しく、楽しく、気持ちよくもある。

 混ぜて混ぜて混ぜていくうちに、自分が何をしたいのか、何をしてるのかあやふやになっていく。

 それでもなにかの終着点が近づいてくるのを身体のどこかで感じていた。

 まるで、身体が空へと飛んでいくようだ。


 そして、とうとうその境地へと到達する。

「あん!」

 甲高い声が漏れた。

 それを境に意識が飛び、白い光のなかに包まれていった。


 気が付くと、私の手はとまっていた。

 さっきまで夢中で納豆を混ぜていたのが嘘のようだ。


 まわりからは、なぜか男の人達が拍手を送ってくれる。

 どうしてだろう?


 私はフラフラと立ち上がると、納豆をその場に残し、食器を片付けにいく。

 残した納豆はきっと誰かが食べてくれるだろう。

自分で書いておいてなんですが、この話がなんなのか、よくわかっていません(汗

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