・犯人捜し
その本を手にとったのは偶然だったのか、あるいは必然だったのか。
本棚からすこしだけはみ出したその本。それが気になり入れ直そうと、分厚いハードカバーの本を開きぬくと、そこに一枚の紙が挟まっていることに気がついた。
「なんだろう?」
ひわいな記号がかかれたその紙はその中心がシワになっている。さらには『あなたの精液かけてください』なんて書かれている。たぶんこの文字は私とおなじ女の子のものだろう。
「でも、このシワって……」
鼻を近づけ、軽く臭いをかぐけれど、これといった臭いは感じられない。でも、私の直感はこれが淫らな行為の証拠品であると告げている。本当にそうなのか自信はないのだけれど。
誰がこんなイタズラをしたのだろうか。
図書館の利用者たちに目をむける。
みな、普通に本を読んでいる。
こんな真面目な場所でこんなことをするなんて、意外と面白いやつもいるものだ。
でも、生憎とあたしでは精液を吐き出すことはできないんだけど、どうするべきかな。
このまま本に挟んだまま元に戻すことは簡単だ。
この紙を丸めてゴミ箱へ捨てることも。
でも、どちらを選んでも面白くない。
「ならば……」
あたしは、自分のとるべきことを考える。
「……うん、この恋文を作った乙女の正体を探ることにしよう」
この紙一枚という限られたヒントで、それを特定するのはかなり難しいだろう。だからこそやる価値がある。
きっとこれを挟んだ乙女は軽いイタズラのつもりだったにちがいない。だからこそ、そのイタズラの犯人を赤裸々に暴くのだ。
そして、男子を含めた全校生徒にそれを開示しよう。そうだな、スキャニングして全世界に公開してもいいかもしれない。
そんなことをしたら、乙女はどんな顔をするだろう。
泣くかな?
それとも逆ギレ?
喜んでお礼を言ってくれるかも……ってのは流石にないか。
でも、きっとすごく驚いてくれるにはちがいない。
いまから、乙女がどんな顔を魅せてくれるか楽しみだ。
「やば、ちょっとだけ濡れてきたかも」
私は半紙をカバンにしまうと、犯人捜しを決意した。
でも、その前にちょっとだけ……。
「どこか良い場所はないかな?」
とりあえず、企画用に書いたのはここまでです。
あと1本おまけが付きます。