基本に従ったちょっとだけ変な小説
“しょうせつのがっこう”で出された課題に従って、作品を提出したマン・ネリカは、学校の先生に呼び出されました。
「マン・ネリカ!ちょっと来なさい!」
なんだろう?また怒られるのかな?そう思い、ドキドキしながら先生の元を訪れたマン・ネリカでしたが、その反応は予想とは反対のものでした。
「素晴らしい!素晴らしいわ!やれば、できるじゃないの!」
「え?」
マン・ネリカは、驚いて返答できません。
「あなたも、ついに心を入れ替えてくれたのね。これならば、充分に世界に通用するわ!この学校を卒業するのも、もうすぐでしょう」
マン・ネリカの予想に反して、学校の先生は作品をベタ褒めしてくれました。
実は、それこそが人々に受け入れられる小説の秘密だったのです。
普通の人は、普通の小説を書こうとして、普通の小説ができあがってしまいます。どうにか工夫して、ちょっとだけ変な小説を書くのです。それは、しょせん、普通の小説でした。
けれども、マン・ネリカの書く小説は違っていました。元々が変なのです。自分が傑作だと信じて疑わないような小説。それは、人々の望む小説からは、かけ離れすぎていて、到底理解されません。それでも、そういった小説ばかり書いてきた影響が、にじみ出てしまうのです。
だから、マン・ネリカが一生懸命に普通の小説を書こうとした結果、根底では全然違った小説になっていました。ただし、人々が見るのは表面的な部分。表面的には、それこそがみんなの望んでいた“基本に従ったちょっとだけ変な小説”となっていたのでした。
「あなた、これをコンクールに出品なさい」
学校の先生に、そう言われて、マン・ネリカは素直にそれに従いました。