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形にならない小説

 自分の国に帰ってからも、マン・ネリカは小説を書き続けました。以前のように大きな家に住んだりはしません。ボロボロのアパートの1室を借りて、執筆に没頭する日々を過ごします。


 マン・ネリカの書く小説は、もうムチャクチャでした。ムチャクチャ過ぎて、何が書いてあるのかサッパリわかりません。それでも、マン・ネリカ自身は満足でした。

 たとえ、形にはならなくとも、“自分らしい小説”を書くコトができているからです。


 そんな風にして、数年の時が経過しました。

 相変わらず、自分らしい小説を追求して書き続けるマン・ネリカ。以前に比べれば、随分と小説らしい小説になってきています。それでも、人々からの評判は良くありません。

 結局、どこの出版社からも声がかからず、自分でお金を出して少ない部数を刷って本を出しました。もちろん、あまり数は売れません。それでも、何人かのファンがついてくれました。非常に熱烈なファンです。マン・ネリカの出す新作を「今か!今か!」と待っていてくれるのです。

 そうして、新しく出す本は、そういった1部のファンの間では、おおむね好評でした。

「今回も、意味がわからないな~」

「けど、わからないなりに、おもしろさはあるぞ!」

「マン・ネリカ先生の書く小説は、オリジナリティがある。個性だけは誰にも負けていない!」

「意味なんて、どうでもいいんだよ。この本には不思議な魔力がある。本を開いて眺めているだけで、いろいろな気持ちにさせられる。心が温かくなったり、冷たくなったり、驚かされたり、怒りに駆られたり、恐怖に震えたり、いろいろさ」

「時には、読むのをやめたくなってしまう。本を放り出したり、ビリビリに破いて捨てたくなってしまいたくなる。それでも、なぜだか手放せないんだよな~」

 そのような感想でいっぱいです。

 マン・ネリカは幸せでした。たとえ、形にはならずとも、ついに自分らしい小説を書くコトができるようになったのです。そうして、その数は少ないまでも、熱心な読者まで獲得できたのですから。

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