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外国の本屋さん

 マン・ネリカは、外国の本屋さんの中で驚きました。そこには、これまで見たことのないような小説が、山のように並んでいたからです。

「この本なんて、私の国では誰も読んでくれないわね。こっちの本なんて、書いたら絶対怒られるわ。これも!こっちも!この本も!」

 見る本、見る本、全てが新鮮でした!


 それから、マン・ネリカは片っ端から目についた本を購入し、ホテルに持ち帰って読みふけりました。喫茶店で読み、公園のベンチで読み、道を歩きながら読みました。おかげで、あやうく自動車にひかれそうになったくらいです。

「どうして、こんな素晴らしい小説の数々が、私の国では出版されていないのかしら?」

 マン・ネリカは、一瞬、そう考えましたが。それは決まっています。このような本を出しても、読んでもらえないからです。中には、それらの本の良さがわかる読者もいるかも知れませんが、そんなものは極少数でしょう。本の形に印刷して売ったとしても、赤字になるのは明かです。

「それでも。それでも、もう1度、このような小説を書いてみたい。そうして、本として出してみたい!」

 マン・ネリカは、強くそう思いました。心の底に少女時代の頃のような情熱の炎が燃え上がるのを感じました。

「けれども、私に書けるかしら?このような小説の数々が。昔の私にならば、それができたかも知れない。もっと凄い作品だって書いてみせる自信があった。でも、今の私では…」


 そう。マン・ネリカは、既に小説を書く力を失ってしまっていたのです。決まりきった形の小説を書くことはできても、そこから外れたモノは生み出せないのです。無理に書こうとしても、上手く形になってくれません。グチャグチャとわけのわからない形になって、それはもう読めた代物ではなくなってしまうのでした。

「いいえ!迷っている暇なんてありはしないわ!先に進まないと!書き始めないと!」

 そう決心したマン・ネリカは、サッと荷物をまとめると、ホテルをチェックアウトして帰路につきました。

 船酔いなんて関係ありません!帰りの船の中でも、小説を書き続けます。書いて!書いて!書きまくるのです!

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