止まった筆
ところが、どうしたことでしょう?せっかく時間ができたというのに、筆が進みません。1ページどころか、1行も、1文字も書き進めることができないのです。
「これは…どうなってるの!?」
マン・ネリカも驚いています。なんと、マン・ネリカは小説の書き方を忘れてしまったのでした。
完全に小説の書き方がわかりません。あまりにも長い年月、パターン化した小説ばかり書き続けたせいで、自分らしい小説を書くということができなくなってしまっていたのです。
出版社の人や、読者の望むような小説を書くことはできます。いえ、それも、もはや過去のものとなってしまっていました。過去の読者が望んでいたような小説を書くことはできても、現代の読者が望むような小説は書けません。
読者の為をと思って書いた小説も、実際に読者に見せてみると、いい評判が返ってこないのです。
「ああいうものは、もう時代遅れだよ。あの頃は、もてはやされたかも知れないけれど、今はもう違う」
聞かれるのは、そういった意見ばかり。マン・ネリカが書く小説は、人々に見向きもされなくなっていました。
マン・ネリカは悩みました。
「自分の書きたい小説も書けない。読者の為にと思って書いた小説も受け入れられない。だったら、私はどうすればいいの?」
小説を書くことしか取り柄のなかったマン・ネリカです。今さら、他の道を進むことなどできはしません。どんなに考えても、いい方法が浮かんできません。自分の存在意義が見出せないのです。
「私なんて、この世界にいても仕方がないんだわ。消えてしまいたい。もう、いっそのこと死んでしまおうかしら…」
悩んで迷って、ついには、そんな風にさえ考えるようになりました。




