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ひとりぼっちのマン・ネリカ

 マン・ネリカは、孤独でした。友達も、恋人も、誰もいません。ひとりぼっちで、ただ小説を書き続けるだけ。それでも、決して寂しくはありません。そんな暇などありはしなかったからです。

 ひたすらに、ただひたすらに小説を書き続ける毎日。時間が空けば、出版社の人の指示に従って、サイン会など行います。全ては小説の為に。それ以外の時間などありません。寂しさなんて、感じるはずもないのです。

 寂しさだけではありません。喜びも幸せも、そこには何もなくなってしまっていました。最初は、書きたいから書いていた小説が、今や生きるコトそのものと化していたのです。その姿は、もはや小説を書き続けるだけのマシーンのようにも見えました。


 マン・ネリカは、お金の使い方を知りませんでしたので、お金の価値もわかりませんでした。言われるままに、広い部屋を借り、そこで小説を書き続けました。

 いつの間にか知らない人たちがやってきて、投資の話などを持ちかけてきます。よくわからないままに「はい、はい」と返事をし、全てをまかせてしまいました。放っておくと、お金は勝手に増えたり減ったりしていきます。


 それでも、マン・ネリカの興味は他には移りません。ただ、小説を書くコトのみに集中しているのです。いえ、それはもはや“興味”とすらいえなかったかも知れません。“義務”といった方が近かったでしょう。それどころか、他に生きる方法を知らなかったのです。

 まさに小説そのものの権化。“小説の神”と呼ぶ人まで現われるようになりました。けれども、それに反比例して、小説の内容はどんどん落ちていきます。元々、そんなに大した内容でもありませんでしたが、ここにきて、その質は地に落ちてしまっていました。

 初めて読む人には、その価値が全くわかりません。何がおもしろいのかサッパリです。ついに、新規の読者は、ほとんどいなくなってしまいました。それでも、昔からのファンがいつまでも追いかけてくれています。「この物語の最後は、どうなるのだろうか?」と待っていてくれるのです。

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