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カエル  作者: 保知葉
(本編)カエル
7/14

ひょうたん池の帰り道で


ひょうたん池からの帰り道、久しぶりに笹山と会った。


「……」


「……」


お互いに無言のまま、私の歩幅にして約十歩の距離で立ちすくむ。笹山にとっては五、六歩の距離だろう。

くそう、長い脚しやがって、と内心毒づいていると笹山がくるりと踵を返した。


待って。


そう言うより先に体が動いた、…らしい。

気がついたら笹山にタックルをかましていたわけだ。



宮田と田間と別れて向かった先は大学近くの公園だった。神社に併設されたここに、ひょうたん池がある。笹山が産まれて拾われた場所だ。…笹山妹によれば。

ひょうたん池はちっぽけな池だ。正確にいうと池というより水溜まりに近い。いつぞやの昔はひょうたんの形をしていた池だったそうだが、今は名ばかりが残る。


ひょうたん池で拾われた。

それが真実ならなんともシビアな話だ。卵から孵って云々を無視すれば、笹山は幼少時に池に落ちたところを助けられたのだろうか。…拾われた、というならば親は迎えには来なかったのか。笹山妹もそれを見ていた、いや、落ちている笹山を見つけたのが笹山妹だったのかもしれない。


そして笹山は笹山家の養子になり、今に至る、と。


思いついた話はありふれたドラマのようだった。ドラマならきっと笹山は笹山妹に恋をし、血の繋がりがどうのと悩む。それが第一の山場で、第二の山場は実の親のご登場だ。第三の山場で想いが通じ、あれよあれよとハッピーエンド。カエル男物語完。


「…あほらし」


呟いて帰ることにした。どう考えてもカエル男には繋がりはしない。魔法使いなんて嘘っぱちだ。


だって魔法なら。


そうしたら目の前に笹山がいた。そうしたら笹山にタックルしていた。


…どうして、こう、なるんだか。


笹山の上にのし掛かりながら立ち上がれもせず声もかけられず、目を上げた先の緑の頭を見ていた。鮮やかな緑はカエルというよりは…


「…マリモ」


「人に乗っといてそれはないでしょ」


いてて、と笹山が呻いたもんだからやっと私は起き上がることができた。立ち上がれはしなかったけど。


「ごめん、笹山」


「ったく、ラグビーすんなら草の上にしといてよ」


ジーンズ汚れちまったじゃねえか、と笹山が立ち上がる。振り向いて、座り込んだままの私に気付いた。


「…間宮?」


きょとん、と目を見開いたのは笹山だったのか私だったのか。腰でも抜けてんの、と笹山が問う。


「わかんない」


「わかんない、って…」


マリモ頭が首をかしげる。困惑を表した顔に私は泣きそうだった。

揺さぶられたりしない、と餅屋に言ったのは真実だったのだけど。

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