閑話:帰り道に第三者が集まって
さてさて、こちらは喫茶店に取り残された餅屋。
あれはぜってー両想いだろう、と頭を抱えながら逃げていった間宮の表情を思い出していた。
「…あんな表情もできるんだなぁ…」
感情の読めない間宮、とは仲間うちでの共通認識だ。そこそこ間宮を知ってる餅屋もそれは違わないと思っていた。
「間宮ちゃんはツンデレかあ…」
一人納得した餅屋は伝票を掴むと席を立った。この情報はすぐさま笹山に伝えなくてはならない。目に見えて元気のない友人には紛れもなく吉報だ。
その時、カララン、と喫茶店の古びたカウベルが鳴り、餅屋の視線がそちらに向いた。
餅屋は思わず言った。
「げ」
「あんたねえ、人の顔見て言うセリフじゃないわよ」
そう言って餅屋を睨んだのは宮田だ。その後ろに田間がいる。
「間宮に何してくれたのかしら」
姉御肌の宮田と外見はおっとりお嬢様な田間は間宮の友人だ。
間宮、宮田、田間の三人はサークル内でしりとり仲間とか呼ばれてる友人同士で、個性は違えど仲が良い。ただ、男女構わず話しかけられやすい宮田と、男友達に囲まれやすい田間と、一人で好きなように動きたい間宮が一緒に行動することは少ない。
ましてや、宮田と田間が二人連れというのは珍しく。
…自分はこの二人を怒らせたらしい。
悟った餅屋は促されるまま再び席につき、チョコレートパフェを追加注文した。甘いものでもなければ切り抜けるのは難しそうだった。
「カエル男の件は口出し無用だから」
「そうそう、第三者は見守るのが正道ですよ」
女二人に男一人、両手に花の状況なのに何だろう、この窮地みたいな感じ。
(宮田ちゃんはともかく…田間ちゃんからも悪意をひしひしと感じる…)
女の友情ってこんななのか。
「…二人とも、間宮ちゃんのこと好きなんだねえ」
餅屋が思わずつぶやくと、何を当然、とも言うように宮田が眉をしかめ、田間が笑った。
「大好きだからこそ、こんなに間宮を困らせた餅屋くんを許すわけにはいかないの」
田間が携帯を開き、受信メール画面を餅屋に見せた。
件名:(無題)
本文:とうしよう もちやにはれた
「はれた?」
「間宮慌てると濁点とばすから」
「一瞬、“ほ”れただと読んであせったわ」
餅屋にホレた。
「…そーんなドロドロ展開になる要素はなかったって」
「ドロドロ展開も面白いっちゃ面白いけどね。餅屋は笹山に刺されるだろうけど」
「…宮田ちゃんって、俺のことホント嫌いだよね」
「今さらよね」
どこで宮田への対応まちがったのだろう、と考えても今さらだと餅屋は頭を振った。
で。
餅屋にバレた。
「バレたっていうか…」
「バラしちゃったんでしょ間宮。変なとこわかりやすいからね」
「でも間宮困らせたことには変わりありません」
「そうそう。だから餅屋にはあたしたちを接待する義務が発生しました」
と、宮田と田間がメニューを開き、どれから攻めようか相談している。
「…ご接待したら間宮ちゃんのご機嫌直してくれるんだよな?」
「それは接待の内容次第」
にっこり笑った田間を見て、餅屋は、人の恋路に口出しなんかするんじゃなかった、と本気で思った。
「…俺、金おろしてきていい?」
「身代に携帯置いてくなら」
「…中身、見ないでね」
近くのATMはどこだったかを考えながら、餅屋は呟いた。
このまま帰りたい。
(そんなことしたらもっと状況悪化するんだけどさ)