表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カエル  作者: 保知葉
(本編)カエル
5/14

帰り道に喫茶店で

昼休み、食堂からの帰り道で餅屋に会った。


「間宮ちゃん3コマある?」


「空きコマだけど」


「じゃあお兄さんと茶しようか」


「餅屋のおごりなら、ね」


二人連れだって大学の裏にある小さな喫茶店に行った。


「で、」


注文して切り出したのは餅屋からだった。


「聞きたいことがあるんでしょ?」


優男風なのに男前、ざっくりすっぱり話すのが餅屋だ。笹山の自他共に認める親友。


「…最近笹山見ないんだけど」


美容室の帰り、緑頭の笹山に会ってから笹山に会っていない。


「大学来てるし、昨日の1コマ一緒の講義だったっしょ」


そう、正確には見かけているけど話していない。あの緑の髪は目立つから毎日見る。けれども笹山が私に話しかけることはない。私も話しかけるってことをしないから、そんな状態がずっと続いている。


「話ってか、笹山なんだけど、」


コーヒーが運ばれ、しばしの沈黙。私はブラック、餅屋は砂糖なしミルク入り、笹山は砂糖ありミルクなしだったっけ。


「笹山、何か悪い病気とか?」


「健康そのものだけど、不治の病ではある」


にやり、笑って餅屋は私を見た。


「何よ」


「知ってるくせに、間宮ちゃん」


不治の病、草津の湯でも治らない。


「…どうしろっていうのよ、」


熱いブラックコーヒーあおって舌火傷して。それでも苛立ちがおさまらない。

私が悪いのか。悪い魔法使いに魔法をかけられたのは笹山なのに、私のせいなのか。


「どうしろもこうしろも。間宮ちゃんの気持ちありのまま、笹山に返してあげれば」


「やってるつもりなんだけど」


「変わんなすぎでしょ」


「…だから、」


立ち上がって、伝票取り上げておごりなこと思い出して置いた。

くそ餅屋。


「…変わんないのよ。アイツがカエルだろうが、何だろうが」


「間宮ちゃん、」


「笹山がカエルだからって私が揺さぶられたりしないの。今更」


笹山にもうとっくに揺さぶられてたなんて、告白、させんじゃない。

餅屋のばか。

笹山のばか。

私にだって魔法がかかってるの、知らないくせに。


「ごちそうさま」


「間宮ちゃん!今、笹山、呼ぶからちょい待ちっ」


「待たない」


「後生だから!笹山の前で今のもっかい!」


「言うかバカ!」


間宮ちゃーん、とすがる餅屋の声がしたけど私は足早に店を出た。赤くなってる顔なんて、誰にも見せる気はなかったから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ