表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カエル  作者: 保知葉
(本編)カエル
4/14

美容室の帰り道で

美容室の帰り道のことだった。


「よう、間宮」


「さ、さやま?」


さっぱり切ったらなんとなく落ち着かなくて、パーマかけたらよかったかな、と髪をいじりながら歩いていたら、笹山らしき人に会った。

笹山らしき、男。


「髪切ったんだな」


「こっちのセリフだって」


私、間宮はこの度ロングをセミロングに切りました。が、笹山は五分刈り?よりもっと短く、いや短髪になったのはこの際問題ではない。


「なんで緑なの?」


アッシュなんでものじゃない、鮮やかなグリーン。そんな色によく染めてくれたもんだと思うほどの。


「元の色に近づきたくて」


「あんたアオガエルか」


「たしか、ね。昔のことだから種類とか忘れちゃったけど」


緑髪の笹山はいつものように、ジーンズのポケットに両手を突っ込んだまま、首をかしげた。

それがそこそこさまになっていて。


「顔がいいやつってとっぴなことできていいわよね…」


あたしは切るので精一杯思いきったのに。


「ん?何か言った?」


「なんでもないわよ」


こっそり愚痴り、落ちてくる前髪をかき上げて離れようとした、ら、笹山がついてくる。


「ついてこないで」


「方向一緒だから送るよー」


「結構よ」


「まーみや、」


「なに」


「まだキスする気になんない?」


「なんないね」


「けーち」


笹山の横顔がすぐ近くに会って、笹山妹の言葉が頭をよぎった。



ひょうたん池で拾ったんですよ。



「笹山さあ、最近何かあった? ほら、家のこととかいろいろ」


「何だよ急に」


「いや突然カエルだの髪緑だの、気になるし」


「俺、カエルなの。髪は元に戻りたかったから」


「それが変なの」


「変じゃねえって」


「変わったって」


「間宮が変わらなすぎなんだよ」


は、と思わず立ち止まって、数歩先で笹山が止まった。


「間宮、変わんなすぎなんだって」


「…私だって髪切ったわよ、今日、今さっき」


「全然変わんねえよ」


「失礼ね」


セミロングとロングは追加料金が倍くらい違うのよ。


「カワイイけど」


「そりゃどうも」


「…やっぱ変わんねえ」


はあ、と溜め息ついた笹山は、右手で頭を掻いて歩きだした。


「笹山?」


「おーう、」


ひらひら後ろ手に手を振って、笹山はどこかに消えてった。私はよくわからないまま、家に帰った。

やっぱり、パーマもかければよかったかな。そう思っても遅かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ