宮田さんと願い事
宮田さんのはなしです。
不定期更新。
宮田さんは大学で姉御のポジションにいる。実際、宮田さんは同期の子よりふたつ上だから姉さんは姉さんなのだ。
ふたつ上だけど浪人したわけでもなく、就職からの一念発起でもない。中学で一回、高校で一回留年したのだった。そのため一応現役合格ではある。これで浪人したら心が折れそうだから頑張った。
そんな宮田さんには大学は過ごしやすいところだった。年下もいるし年上もいる。少ないけど同期の同い年もいる。高校まで気にしていた生年なんて話題にならない。なるとしたら成人式のときで、それくらいなのだ。
宮田さんは結構のびのび暮らしているが、悩み事がある。誰にも相談できないのだが、ランプの精を拾ったことだ。
「ねえ、そろそろかえったら?」
「きみの願い事を叶えたらかえるよ」
ランプの精は高校時代に拾った。留年するきっかけとなった父の海外赴任先で骨董品も扱う青空市場を訪れたときに、たまたま購入したミルクピッチャーについていたのである。だからミルクピッチャーの精なのだろうけど、便宜上ランプの精と呼んでいる。ミルクピッチャーの精は語呂が悪い気がするし、やってることはランプの精なのだし。
宮田さんは願い事がない。正確には、ランプの精に叶えてもらえる願い事がない。
「ぼくをそんじょそこらのランプの精と一緒にしてもらっては困る。ぼくはランプの精という職業に誇りをもっているし、就役ランプの精のようにひとを堕落させる願いは叶えない」
宮田さんは知らなかったのだが、ランプの精にも種類があるらしい。
何でも好きなことを3つ、とかいうのは就役ランプの精がよくやるこよで、就役ランプの精とはなにかの罰則としてランプの精をやらされている精霊らしく、宮田さんが拾ったランプの精は自らランプの精になった職業ランプの精なので、どんな願いを叶えるかも条件をつけている、んだそうだ。
だから、このミルクピッチャーに住んでいたランプの精は「単位がほしい」とか「働かずして金がほしい」とか、そういう願いはかなえない。ついでにいうと、「どうぞ元の世界におかえりください」もだめだった。
「世界平和」も願ってみたけれど、叶うまでの時間をきいて実行まえにキャンセルした。願い事って難しいんだなあ、と宮田さんは思った。