田間ちゃんのはなしのおわり
「…諦めて真っ直ぐ当たって来なって。笹山と間宮みたいに」
カエル男笹山の真っ直ぐなアプローチは大学でも有名で、それに応えた間宮のダイレクトアタック(物理的な)は当人たち以外では宮田と田間だけが知っている。根掘り葉掘りきいたから(笹山から)。
真っ直ぐ、かあ。
「宮田ちゃん?」
宮田を呼ぶ声がして、その声に田間はびくっとからだを震わせた。どうしてこの男はタイミングよく現れるのだろう。
「よお、お節介」
「やーめーて」
「なら間男?」
「…宮田ちゃーん、それ意味違うからー」
ちくん。田間の胸が痛んだ。軽口を叩く宮田と餅屋のあいだに入れない、臆病な自分がいやだった。
(真っ直ぐ、当たって)
脳裏に笹山のカエル頭がよぎった。そして、天の邪鬼な間宮のきらきらした照れ笑い。
どうせ、と田間は思う。今のままでいても男トモダチは増えても女友達は増えないし、男トモダチが彼氏に昇格することは、ない。田間が黙っている限り、一線は越えられないのだから。
よし。
「大学デビュー」、したんだし。
ぶっちゃけてダメだったら、もっと遠いところに行こう。「社会人デビュー」だって残ってるし、海外行っちゃえばなんとかなる…かもしれないし。
憧れてるだけじゃきらきらできない。
「も、餅屋さんっ」
「田間ちゃん?」
がばっと勢いづけて起き上がった田間に餅屋は驚いた。田間は勢いのままにいってしまう。
「わたしと寝てください!」
因みに場所はサークル会館のロビーだったりする。学内でも目を惹く田間の発言に、居合わせた学生たちがぎょっとして視線を送ってくる。
「は、はあ?」
「わ、わたし、高校までは、というか戸籍上は男で、生物学的にはどっちつかずなんですけど!どちらの性別にするかずっと迷っていてとりあえず男できたんですけど!一度女のコになってみたくて、大学デビューしたんです!」
「え!お、…!?」
「餅屋さん!と、とにかくわたしと寝てみてくれませんか!?」
餅屋に抱きつく勢いで迫り、田間は真っ直ぐぶつかってみた。
…当たりかたが違うような気がするけど、ま、いっか、と宮田は思った。あたしのけしかけかたが悪かった、田間も間宮に負けず劣らず純粋だったんだった。
田間と餅屋のこの後は当事者の問題で、なるようにしかならない。馬に蹴られる前に、と宮田はいそいそと逃げ出した。
好奇と驚愕と嫉妬と、いろいろ入り交じった視線が二人を取り巻いている。とにかく、餅屋の運命は、かみのみぞしる。
田間のはなしは一応おしまいです。は?ってなったところで終了。
駄文にお付き合いくださり、ありがとうございました。