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カエル  作者: 保知葉
(本編)カエル
1/14

飲み会の帰り道で

飲み会の帰り道のことだった。


「俺、実はカエルなんだよね」


同じ方向だから送るという、笹山がジーンズのポケットに両手を突っ込んだ、いつものポーズで唐突に言った。


「は?」


私は聞き返す――何て言ったこの男?


「悪い魔法使いに人間にされちゃってさ、しょうがないから人間として生きてきたけど、そろそろ本来の姿に戻りたいわけ」


「…はあ、」


笹山、そんなに飲んでたっけ?と思い返すも、飲み会で笹山と絡んだ覚えがない。知らんところで飲まされてたか、…なら送ってもらうどころか送らないとだめだろうか。


「酔ってんねー、笹山」


「至極俺はマジメです」


「実はカエルの王子様でした、って?」


「いーえ、平凡なカエルだよ。やっとしっぽとれたとこ捕まって、魔法かけられたんだよね」


そういや私は笹山の妹見たことあんだけど、と思ったけど言わないでおく。酔っ払いめ、実はメルヘンチックだったんだな。外見に似合わず。


「へー、そりゃ大変だわ」


「でしょ? だから元に戻るのに協力してくんない?」


「うーん、いやよ」


即答で断った。


「えー、何でよぅ、」


「悪い魔法使いの魔法を解くなんて方法一個しかないじゃん。私カエルとはキスしたくないわ」


「人助け、いやカエル助けだと思ってさー」


「嫌よ。王子様ならまだしも、パンピーじゃあね」


「…けち」


「けちで結構」


笹山は右手で自分の頭かき回して、またポケットに突っ込んだ。


「間宮に断られたら誰に頼めってんだよ」


「アンリちゃんとかに頼めば一発よ」


笹山を大好きな彼女の名を出せば、渋面作って私の前に立ちふさがった。


「…間宮がいいんだけど、」


「私はカエルとはキスしないから」


見上げた笹山の情けない顔、ストロー突っ込んで空気吹き込んでふくらましてやろうかしら、って言ったら顔を青くした笹山が慌てて引いた。


「やめろソレまじ辛えんだからっ…あ、でもマウスToマウスなら大歓迎だけど」


「しないわよ」


私は笹山を追い越し、すたすた歩く。酔っ払いなんて相手にしてらんない。

後ろでけちー、と叫んでる笹山は放置した。

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