ふたりの空間
原稿用紙二枚以内を目標に書きました。
私の掌編作品五作目です。
僕と彼女は、いつも素直になれない。
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外はすっかり冬の景色だった。風が枯れ木の隙間を抜けたのか、ひゅう、と冷たい音を残す。
気づけば牡丹雪が窓の外を彩り、降っては地面でその身をとかしていく。
そんな景色を、和室の真ん中でぼんやりと眺めていた。
学校も冬休みに入り、僕と彼女はいつものようにこたつに入ってみかんを食べていた。
「ねぇ、みかんもうひとつ取って」
「あんまり食べるとお腹壊すぞ?」
「あとひとつだけにしとく……」
「うん、ほら」
これと言って会話もせず、黙々とみかんを食べる。
「よし。お礼にコーヒー入れてきてあげる」
「うん、ありがとう」
キッチンに向かう彼女を見送りつつ、こっちにみかんが無い事に気がついた。
僕も彼女のあとを追うようにキッチンに向かった。
「あれ、結局来てるじゃん」
「うん」
「まあ、いいけどね」
彼女はマグカップ、僕はみかんを両手に持ちながら。
ふたり揃ってこたつに戻る。
そしてまた、黙ってみかんを食べ、コーヒーを飲む。
「うん、甘い」
「砂糖とミルク多めに入れといたよ」
「うん、いい感じだ」
「もうコーヒー入れるのは私の役目だね」
「そうだね」
付き合いはじめて三年。
こうやって少しずつ、互いの事は知ってきたつもりだ。
そして、こんな風にふたりでいる時間がくすぐったくて心地いい。
でも、いつも最後のところは口にできない。
僕と彼女はいつも素直になれない。
あからさまに手を繋いだりなんかもできない。
でも、ここだけは別。
僕と彼女がようやく素直になれる、ふたりの空間。
そうしてまた、僕たちはこたつの中で足を重ね合わせる。
実は原作データを紛失してしまい、本作は少し前に記憶を辿って復元させたものです。なので会話などは若干変わってしまっています。多分原作を知ってる方はいないと思いますけども(汗)
みかんとコーヒーの組み合わせはご愛敬です!




