4.異世界にようこそ1
しゃべりを入れると話が進みません。困ったものです。
心地よい風が頬を撫でていく。暖かな日差しが身体に降り注ぐ。
そんな陽だまりの中、おいら|(主人公)は眼を覚ます。
寝ぼけて半覚醒の意識でぼぉーとしていると左腕につんつんと何かがぶつかっていた。
つんつんとぶつかっていた何かは、ある程度繰り返しぶつかると、
ぶつかるのを止め離れていった。
未だに寝ぼけたままいたら今度は胸の上に何かが落ちてきた。
胸の上にはさほど大きくはない暖かいものが乗っていることが分かる。
暖かなそれを右手で触ると毛が長くはない動物のようだ。
子犬か猫かは触っただけでは分からなかったが撫でてみることした。
撫で始めは少しモゾモゾと動いていたが途中から抵抗もなく撫でられている。
落ちて来た衝撃で目が覚めてきたから胸の物体は何なのか、
確認しようとまぶたを開こうとすると日差しが
以外のほか眩しく薄めに開くのがやっとだった。
まだ慣れない日差しに眼を擦る。ようやく日差しにも眼がなれてきたからしっかりと
まぶたを開けて胸の上を見てみるとそこにはうさぎさんが眼を閉じ乗っていた。
うさぎさんを撫でながら上体を起こすと、
うさぎさんはぴょんと胸から降り近くの草を食べ始めた。
そんなうさぎさんを見つめてのほほんとしていたが、
Σ(゜∀゜;)ハッと眠る前の事がフラッシュバックする。
夢で見た何かに現実で襲われて・・・
そこまで思い出してそこがベットの中でも病室でもないことに気づく。
そこはだだっ広い何処かの草原なのだ。とりあえず周りを見るために立とうとする。
そこで重大なことに気づく。
襲われた時は汗でぐっしょりだったがちゃんと着ていた服がなかった。
そう服を着ていないのである。まっぱである。まっぱ。全裸。裸族である。
だがしかしよく見ればまだ着ている物もあった。それはまず赤い靴下!
まっぱに靴下っておいらは全裸待機中の変態紳士かっての!!
と突っ込みを入れてる最中に首元で揺れる物が眼に入った。何故か赤いネクタイもしていた。
もうね、ほんとにね、なにこれ?なんなんのー?って感じだったよ!!
たしかにおいらは自分でよく変態紳士だって言ってたけどさ!なぜに知らない場所で
全裸待機中の正装した変態紳士なんだよ!!あふぉか!あふぉなのか!!
ここに連れて来たやつはあふぉなのかああああああああああ!!!!
――20分後――
ようやく落ち着きを取り戻し始めたおいらは今の状況を冷静に分析することにする。
身に着けているものは赤いネクタイと赤い靴下。あと冷静になって気が付けたが
ラブリーマイエンジェル看護士たんがくれた、お守りのペンダントも持っていた。
身に着けているものはそれらしかない。パンツやTシャツとかズボンはなかった。
周りに散乱してるかと見回すがやはり何も無い。
すぐ近くに倒木とその横でうさぎさんが寝ているだけ。
格好に関してはどうにも出来ないっぽいから後回しにしてこの後どうするか考える。
色々見たり考えたり見たり見たり考えたりして少し気になる事がいくつかあった。
とりあえず倒木の近くに座り寝ているうさぎさんを撫でる。触れた瞬間に眼を開けたが
気にするわけでもなくまた眼を閉じて鼻をヒクヒクさせている。
気になる事は全裸待機中の正装した変態紳士も気になるがそれは置いといて
一つ目は眼鏡が無いのに視力が良くなっていたのである。
今までまったく描写していなかったがおいらは普段眼鏡を掛けている。
裸眼で両目合わせても0.1に届かないほど悪い。
眼鏡と言うのは顔の一部と言えるほど眼が悪い人には大切な物なのである。
どこぞのメガネ男子やメガネ女子って言うふぁっしょんの為の伊達眼鏡とは訳が違う。
伊達とは違うのだよ。伊達とは!!
さて話を戻し今はおそらく裸眼で0.7ぐらいはあるのではないだろうか。
検査できないので正確にはわからないが。
次に気になる事は体が引き締まっている事だ。
襲われて気絶した時、おいらの取っては昨日だが
昨日と今日では掴めるお腹のお肉量が違うのだ。昨日までは余裕で掴めるほどあった。
30歳で自称フリータのおいらは求人中であり応募するバイトも受からない事が多く
ほとんど運動もなかったし動く事も少なかった。2日おきのハローワーク通いぐらい。
そんな訳で昨日の時点で身長190cmに体重90kg体脂肪率24%の軽肥満体だった。
それが今日になったら掴めるお肉量が少ない。というか辛うじて掴める程度になっている。
おそらく体重で言えば82kgぐらいになってるかもしれない。
筋肉も付いてるような気がしなくも無い。
以上が体に起こった気になることである。
不思議な事もあるんだなと思いながらを体をさわさわしていた。
体以外の気になる事はまず周りの景色。今居るのは少し盛り上がってる小山の頂上で、
小山の大将!変態紳士!現る!
おふざけはこれぐらいにしまして、この小山は周りより2mぐらい高く、
そこから見える景色が少し見えやすい。
まず後ろから左の方に掛けて森だ。
意外と背の高い木が沢山見える。森だから当たり前だけど。
森の先は木が邪魔で見えないのでしょうがない。
前方は草原が広がっていて地平線の辺りは少し
白っぽく見えるのであの辺りで草原が終わっているのかもしれない。
それから右前方にはキラッキラと結構広い範囲で光が反射してるっぽかった。
おそらく湖か海の水辺だと思われる。
ここまで考えて、今いるのは日本ではないと確信していた。おそらく外国であると。
理由はいたって簡単である。日本は島国故に土地が狭いので
日本国内で地平線が見える場所は存在しない。
これは豆な。
そしてここは恐らく見える範囲の森の木からして南国でもないので北半球だと思う。
アメリカかカナダかロシアかは分からないが知識がないので実際はもっと違う所かも知れない。
まあ、日本じゃないのは確かなので言葉が通じないのが不安である。
あと気になる事はさっきから撫でているこのうさぎさんの事だった。
何が気になるかと言えばこのうさぎさんはぱっと見で耳の垂れたロップイヤーだっけか?
種類はよく分からないが耳の垂れたうさぎさんなのに、
おでこのところになんか小さい角ような物があるのだ。
人で言えば髪の生え際、剃り込みのすぐ下辺りに左右1つずつで計2個。
堅い角っぽい物が生えている。
地球に角が生えたうさぎさんはいなかったと思ったけどいたのかな?とか思ってた。
以上が気になることでありました。サー(・ω・)ゞイエッサー
さて、ほんとにどうするか悩んでいたが現状ではどうしようもないと結論付けよう!
このうさぎさんが万が一、飼いうさぎさんでご主人様が
探していれば何とかなるかもしれないがこの格好では捕まるかもしれない。
いや、確実にブタ箱行きだろう。そして先に拘留されている
大柄なマッチョデブにアッーーー!とかされてしまうんだ!とか
そんな嫌な考えが頭をよぎった。
うさぎさんも居るので兎にも角にもこの格好をどうにかしようと思った。
・・・
・・・・
・・・・・
(;・з・)ヒューヒュー
気を取り直しましてー、隠すための何かを探すことにしたよ!
隠すものは葉っぱがいいだろうと森に入ることにする。
おそらくこのうさぎさんが飼いうさぎさんなら森のほうから来たはずだから。
この広い草原をうさぎさんが跳んできたとは考えにくいから。
飼い主さんと車で来たなら別だけど。。。
人に会った時のためにこの角うさぎさんも連れて行くことにした。
せっかく連れて行くので名前を付ける事にしよう。
どんな名前がいいか考えていたがとりあえず♂♀を見分けるためにうさぎさんの股下を見る。
うさぎさんは見分けが付きにくいとか聞いたことがあったけど恐らく♂っぽいアレがないので
暫定で♀という事にしました。そして考えた名前はあやせたん。
ほらおいらにとっていい思い出をくれた女の子だから、
それにあやかってうさぎさんがいい思い出になればいいなと思ってだよ?
あやせたんに会いたいとかじゃないからね?代替品とかでもないよ?ほんとなんだよ?
あやせたんは担当になった看護士さん。患者と看護士さん。ただそれだけ。
眼から心の汗が溢れそうになるがグっと堪える。
そうだ。帰れたらあやせたんに告白しよう。
おいら日本に帰れたらあやせたんに告白するんだ!
そんな脳内妄想をひろがりんぐしている内に森から少し入ったところまで来ていた。
森は外から見えていた木以外に少し入っただけで木が数種類も増えていた。
奥はもっと種類が多いかもしれないから大きな葉っぱが見つかるかもと期待が持てる。
回りの木は背が高く15mぐらいあるかもしれない。
緑も濃く少し入っただけだがかなり暗くなっている。
足元は木の根っこがうねっておりコケも生えていてかなり歩きづらい。
胸前にあやせたんを抱いていたので50mぐらいに15分ほど掛かっただろうか?
進むとそこには小さな水の流れがあった。
川幅は狭く水量は申し訳なさげ程度だったので上流に行ってみることにしたんだ。
なぜかと言うと川は海っぽいのがある方が上流だったから。
それに下流は森の奥深くに向かう流れだったし。。。
この場所でかなり細くなっていてある程度行ったら川がなくなるだろう。。。
そんなんで上流に向かうと、胸に抱えたあやせたんが急に暴れだした。
驚いてあやせたんを落としそうになったがゆっくりと地面に下ろして上げると
上流に向かって跳んでいってしまった。慌てて後を追うとあやせたんは少し言った所に
あった茂みになった木の実を食べていた。近づいてみるとそれはラズベリーのような
木の実だったので1つとって食べてみる。甘みはしないがとてもすっぱく食べ辛い。
「そいえば起きてから何も食べて無いや。」
何も食べてない事を思い出すと急にお腹がなり空腹感を感じた。人間の体って不思議!!
そんな実をおいらは酸っぱいのを我慢して口いっぱいに詰め込む。
あやせたんも一生懸命モグモグしていたからその姿を、のほほんと見ていた。
少ししてあやせたんの食べるペースが落ちたので立ち上がったら茂みの向こうに
結構大き目の葉っぱがなっている背の低い木が生っていたのを見つけた。
「ひゃっほーい」と奇声を上げながらその葉を取りにいく。大きさは自分の手よりも
大きく葉もしっかり丈夫で固めの葉っぱだった。「これで変態紳士から卒業できるぞ」と
葉っぱを毟り取って行く。ある程度毟ったらふと思った。
「あれ?これでどうやって隠すんだ?紐とかもないじゃんか。」
変態紳士らしく貝殻ビキニならぬ葉っぱビキニでもするのか?
隠せはするが変態度が上がる気がするので止めよう。
って思って回りを見まわすと少しはなれた所に蔓植物が生っているのが見える。
これはやはり葉っぱビキニしかなのかと思ったが
腰蓑という文化があったではないかと頭に浮かんだ少数部族の方に感謝する。
「これで裸族から蛮族ぐらいにはなれたかな?」
まだ蔓も沢山あったので蔓と葉っぱを使い予備の腰蓑と普通の蓑を予備も含めて作った。
作業に3時間ぐらい掛かったがなかなかいい出来栄えの物が出来上がっていた。
蔓植物は地下にお芋さんがなる事があるからと掘ってみたら
ゴルフボールぐらいのお芋さんが結構取れた事もよかった。
さらにベリーとお芋を持っていく為に蔓を編みこみ葉っぱを敷いて簡単なバックも作った。
不恰好ながらもいい出来だ。と自己満足。
満足しながらあやせたんが居た茂みに向かう。『さすがにもうどっかに行っちゃったかな?』
と思っていたがあやせたんは茂みに近い木の根元で眠っていた。
起こすのも悪いと思ったけど胸に抱えて上流方面に向かう。
もちろんお芋とラズベリーっぽいのもバックに入れている。
見える範囲に生ってたのを全部だ。
川幅も広がってきたがまだ小川程度だったけど20分も歩いたら行き止まりになっていた。
川の水は隆起して出来たような2mほどの段差の岩のような層の中ほどからあふれ出て
足元の岩に出来た窪みに溜まっていた。そこから溢れた水が川になっていたようだ。
窪みの水は深く溜まっておりとても澄んでいた。
朝起きてから結構な時間、飲まずに来たのでその窪みの水を結構な量を
渇いた喉に流し込んでしまった。
「ふぃー。冷たくてかなり美味しい水だな。生き返ったー。」
あやせたんを川のそばに下ろしてあげると川に顔を突っ込み水を飲んでいた。
おいらは川の横に腰を下ろしこの後のどうするかを考えることにする。
「ふーむ。このあやせたんは恐らく飼いうさぎさんではないよなー。
あんま期待はしてなかったけどさー。
それから腰蓑とはいえ服があるから人のいるところに行けば日本に帰れるよな。
人にあって大使館に連れてって貰えればなんとかなるだろう。」
独り言のように喋っていたら水を飲み終えて満足したのかあやせたんがおいらの
膝の上に乗ってきて居眠りを始めた。なんて可愛いんだ。こっちのあやせたんも癒されるw
「しかし草原では人の気配がなかったんだよな。人を見つけるか人に見つかるか、
しょーじきわからん。簡単に見つかればいいけど無理だろうしなー。
そうしたら食料が足りないぞ。まぁ、飲み水はここで問題はないだろう。
生水だとたくさん飲んだらおなか壊すかもだけど飲めないよりはいい。
問題は食べ物だよな。ラズベリーみたいのはそこそこあるけどお芋は生じゃ無理だ。
この量じゃ数日は持たないよな。人に会えば食べ物は何とかなるだろうけど
会えればの話だ。すぐには会えないだろう。さすがに森の中に人はいないだろうから
戻って人を探すしかないか。」
考えを口にしながらする事を決めていく。「よしっ」とさっそく決めた事をする為に
あやせたんを抱え水もたらふく飲んでいざ森の外へ向かい歩き出す。
途中で手ごろな石を拾い来た道を戻るのではなく、直接森の外のはずの方角を目指す。
向かう途中で拾った石を使い、木に目印を付けながら進む。
目印を付けながらだろうか行きよりも時間が
掛かってしまったが無事に森の外に出ることが出来た。
遠目にだが倒木のあった丘が確認できる。
さて、目的を果たすために見やすい場所を探して歩き出す。
勿論出てきた所の木にも目印を付けておいた。
少し草原の方に向かって歩いて行くと倒木の丘ほどではないがなだらかな丘があったので登る。
上り切った所であやせたんを地面に下ろし辺りを背伸びをしながら
見回すが動いている物は見当たらない。
人は諦め今度は家か街か人工物はないかと先ほどより眼を皿にしてゆっくりと時間を掛けて
視界に入れていく。森の方は木が邪魔で確認できないので草原の方もとい海っぽい水辺を
念入りに探していく。水際に街を作るのは昔からのお約束だからだ。
しかし最初に見た通りに人工物っぽいものはどこにもなかった。
まさに大自然!!と言わんばかりに天然物しか見当たらない。
人っ子1人どころか人工物さえ見つからない事実に人に会えるかより生きて帰れるのかと
不安が心に広がって行くのが分かった。このまま何もしなかったら死んでしまう。
「死にたくない。死にたくない。」と
呟いていたがいつも最後には何とかなっていた事を思い出した。
『そうだよ。普段はついてないけど最後は何だかんだいってなんとかなってる』
おいらはこの事を思い出した。思い出せた。
いつもは運が悪いが大怪我するかも知れないような時とか
失敗したらほんとに駄目になる時には運が付いていた事を。
おそらく人か街かを探して行動すれば最後には死なずに何とかなるに違いない。
そこに関しては神に愛されてる!愛されてるに違いない!!
おいらはそう思うことにして行動することにした。
「目指すは海か湖か分からんが光を反射してるあっち!広い森は野生動物が多いし
日本ならともかく外国の森は何がいるか見当も付かない。
グリズリーとかにあったら逃げられないからあっちを目指す。
水源の近くに人は住むからなんとか見つかる。そうに違いない!」
独り言を口にした後に最初、森に入った時に『グリズリーとかに会わなくてよかった。』と
心の底から思っていた。熊に襲われて怪我した人の写真なんかを見たことがあったが
自分もそうなってかも知れないと考えたら膝が少し笑っていた。
気合を込め足元にいたあやせたんを抱え上げ目的方面に歩きだす。
太陽の位置から恐らく昼過ぎぐらいだろうと予測しさらに方角も確認する。
日が暮れる前に着けたらいいなと北東方面に歩きながら考えていた。
言葉の最後が「だ」や「た」になる事が多い事に気づきました。
そのまま読むとしつこく感じる。なんでだろう?