力は知る事で初めて力となる
あの後、少しの休憩を挟み、基地内にある植物を炭化させていった後、ぐっすりと眠りに就いた。
そんな翌日。寝袋で起きた私は自分が使っていた寝袋が真っ白に染まっている事に気付いた。仄かに光っているので、これを犬擬きに叩き付ければ炭化させる事が出来る。
「わぁ……」
「あら? 起きた? その寝袋買い取りね」
段ボールハウスを覗きこんできたのは、お母さんだ。周囲を見ると、既に火之花ちゃんも起きているらしい。
そもそも避難民を多く入れる場所が不足しているという事もあり、テントでの集団生活と段ボールで作ったスペースで生活する人達が大半となっていた。私達が大分遅れてきたからっていうのもあるだろうけど。
お母さんは保護者として、私達と同じところで寝泊まりしている。
「武器に出来るよ」
「最終手段よ。ほら、歯磨きしてきなさい」
「はぁい」
タオルと歯ブラシを貰った私は自衛隊が用意してくれた水で歯磨きと洗顔をする。この状況になり水道が止まったのは、本当に痛い。
身支度を終えた私は、お母さんからカロリーバーを受け取って咥える。
「ほのああんあ?」
「食べてから喋りなさい。火之花ちゃんなら、大分前に起きて、海の方で自分の力の検証を始めているわよ」
火之花ちゃんは、割とこういうところストイックにやるタイプだ。私よりも沢山動いていたのに元気なのも火之花ちゃんの良いところなのかな。
「私も検証しないと。取り敢えず、寝袋は白くなる!」
「なんで白くなるのかしらね」
「私の力の源は白なんだと思う。夢の中で、私は真っ白な世界にいたから」
「夢ね……今日の夢は?」
「え? う~ん……忘れた」
「じゃあ、常に見るわけじゃないのね。次に見るときは、次の覚醒が起こった時かしらね」
「だと思う。私も検証して、力を理解しないと。覚醒した時に怖いから」
そう言って地面に手を付ける。あの植物達を炭化させる事が出来るのは昨日の時点で確定している。覚醒直後だからという事も関係ない。
だから、次に調べるのは地球そのものを能力の対象にする事が出来るかどうか。私の能力が地球に使えるのなら、ここで全てが解決する。
地球に私の能力を付与出来れば、地球と接している植物と化物が炭化する事になるから。
でも、最初から地面に触れる事はない。この検証をする前に確認しないといけない事がある。
まず能力の付与までの時間と付与する物の大きさの関係。
これが分かると、そもそも地球に何時間触れれば能力の付与に至るのかが割り出せる。道場の時は私が気絶している間になっていたから、実際にどのくらいの時間で能力が付与されたのかは分からない。なので、ここは改めて確かめる必要がある。
次に対象となるものに条件があるかどうか。
現状物に対してしか使えていない。生物に関しては、全然発動しない。火之花ちゃんに触れていても、火之花ちゃんが発光する事はない。そして、あの巨大植物と犬擬きは炭化させてしまう。
生き物全体が炭化の対象ではないというのは分かるけど、そもそも対象にならない物があるかもしれないので、その確認だ。
この二つが分かれば、色々と推測が立てやすくなる。現状は、地球全体を安全な場所にする事が出来ないかを真っ先に調べたいので、近くの建物に触れる。道場が出来たのだから、この建物も対象にはなるはず。
ジッと触れていると建物の汚れが消えていく。本当に掃除に便利だ。多分、これは中も綺麗になっているのだと思う。全体綺麗になるまでは、大体十分くらい。そこから二十分程で建物が全体が発光し始める。そこから十分で白く染まっていく。
「段階で言えば、綺麗、発光、白って感じなんだ。発光が一番時間が掛かるって事ね。この建物で大体四十分か。地球にやるとなると、何日も掛かりそう……」
地球への付与が現実的じゃない可能性が出て来た瞬間、海の方で大きな爆発が起きた。
「わっ……びっくりした……火之花ちゃん?」
ここで爆発が起こる理由で、真っ先に思い付くのは火之花ちゃんだ。海の近くで能力の検証をしていたはずだから。急に砲撃を受けるとかよく分からないしね。
ちょっと心配なので、火之花ちゃんがいる方に向かって行く。すると、もう一度爆発が起きた戦艦が停泊している場所で、火之花ちゃんが両手を前に向けていた。正面の海は熱により水蒸気を上げている。
「ふぅ……」
「火之花ちゃん」
「ん? 聖奈。おはよう」
「おはよう。大丈夫? 爆発してたけど……」
「ああ、うん。火力の調整をしてたんだけど、ちょっとヤバいかも」
火之花ちゃんは両手を開いたり握ったりしながらそう言う。その表情は言葉と違い、特に焦りなどは覚えていなかった。
「ヤバいって?」
「火力の上限が見つからない。あれ以上の火力にすると、本気でヤバいかもしれない」
「火力の上限……太陽?」
「あの夢が能力の概要を表してるならね。太陽のどの部分の温度かにもよるけど、周囲への被害が出るね。幸い下限が昨日使ってたくらいの火力だから、そこに調整しておけば問題なさそう。そっちは?」
火之花ちゃんの能力の検証結果を教えてもらったので、今度は私の番となった。
「一応、あの建物綺麗にして力の付与をしたけど、四十分掛かった」
「え? うわ……明るいから気付かなかったけど、若干光ってるじゃん……あれ大丈夫なの?」
「さぁ? でも、コンクリもしっかりと出来たから、次は地面に触れてどうなるか調べるつもり。その前に爆発が起きたから様子を見に来たの」
「そうなの? それはごめん。心配掛けちゃったね」
「ううん。じゃあ、私も見学しながら地面に触ってよ」
地面にお尻を着けて、そのまま手を後ろについて身体を支える。超リラックス状態で、火之花ちゃんの能力の検証を見学する。
「常時発動はそういう感じで検証出来るから良いね」
「能力を切れないって欠点はあるよ。そういえば、火之花ちゃんって能力切れあるの? 私は常時発動だから能力切れがあるはずないんだけど」
「どうだろう。そっちの検証もするかな」
火之花ちゃんはそう言って海の方に向けて炎を出していった。手に纏わせるのではなく、放出するって感じで能力切れの検証をするみたい。魚が死なないか心配だ。
こうして、私達は二人並んで能力の検証を続けていく。




