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終末をもたらす大樹に唯一対抗出来るのは、私の力だけでした  作者: 月輪林檎


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愚か者にはそれなりの返礼

 ヘリコプターでの移動中、私は皆口さんと完全にくっついて過ごしている。撃墜された瞬間に降りるので、今はヘリコプターのドアを開けて、そこに腰を掛けている状態だ。私は皆口さんの膝に乗っている。


「重くてすみません!」

「全然!! 私達鍛えてるから!」


 皆口さんの方が十は歳が上だからか何故か可愛がられている。それは火之花ちゃんも同じだ。ローターの音が凄くて外の音は大分聞こえにくい。近くにいないと全然声を認識する事も出来ない。

 そんな中で下の方で光が瞬く。


「攻撃!!」


 私の声を聞いた瞬間に、日暮さん、錦さん、皆口さんが行動する。飛び降りるのと、ヘリコプターが謎の光線っぽいもので貫かれるのは同時だった。操縦士の人が心配だったけど、そっちも爆発寸前に飛び降りていた。

 飛び降りれたとはいえ、このままだと狙い撃ちにされる可能性がある。そう思っていたら、火之花ちゃんが指鉄砲を地上に向けていた。

 そして、指鉄砲から炎の弾のようなものを撃ちだした。そんな事が出来るのかという驚きの次に地上に命中した弾が大きな炎の球体になって、近くにあったビルなどを飲み込んでいった。

 すぐに皆口さんがパラシュートを開いて、その場所から離れるように操作していた。


「うわぁ……えげつない」


 皆口さんの感想には頷くしかない。多分能力検証で身に着けたものだと思うけど、最初に撃ち出されるものの小ささと着弾してからの炎の広がりが全然違い過ぎる。まるで小さな太陽を生み出したかのようだった。

 そのままパラシュートで移動していき、競馬場のような場所に着陸する。


「手荒い歓迎だな」


 私達の周りで周辺を警戒していた日暮さんが呆れ口調でそう言う。錦さんと皆口さんは、私達から装備を外してくれる。


「ヘリコプターを撃ち落とす意味ってあったんでしょうか?」

「面白半分だろう。空を飛ぶヘリコプターは良い的って事だ」


 私達の装備が外れたのを確認して、日暮さんも装備を外していく。


「ここから大樹まで一時間程度だ。もう少し近づけると思っていたが、結果的に大樹から攻撃されない場所から始められたっていうのは良いかもしれないな。俺達の任務は東堂を大樹まで護衛する事だ。栗田、先行しろ。皆口は最後尾。俺と錦で左右を固める」

『はい!』

「東堂は化物が接近した時に炭化してくれ。西園寺は東堂を守ってくれ」

「はい」

「うん」


 火之花ちゃんは私の手を取る。取り敢えず、離れないようにしてくれるらしい。火之花ちゃんの体温は大分高くなっている。でも、これが今の火之花ちゃんの平常時の体温だ。温かさが心地良い。


「行くぞ」


 操縦士の栗田さんを先頭にして、大樹へと向かって行く。プロの中に素人二人がいるから、かなり目立っているような気もする。


「さっき攻撃してきた人は倒せたのかな」

「逃げ足が化物じゃない限り倒せたと思うけど。走って逃げられそうな範囲は燃やしたから」

「あれってどうやったの?」

「普段放出してる炎を圧縮して撃ち出しただけだよ。だから、ちょっとの衝撃で圧縮した炎が広がる感じ。味方がいない場所じゃないと使えない技かな」

「なるほど……良いなぁ。私の能力もそんな感じなことが出来たら便利なのに」


 私は火之花ちゃんと繋いでいる手とは逆の手で懐刀を握っている。既に発光しており、白く染まりだしている。


「聖奈のそれも能力の集中で出来てるって感じじゃない?」

「そうなのかな」

「聖奈と私の能力は大きく違うわけだし、聖奈は聖奈の方法で何か出来そうだけど。まぁ能力が出て来て一日しか経ってないわけだし、能力の全貌が明らかになる訳もないから、気にしないで良いんじゃない」

「そうかな……そもそも火之花ちゃんと違って、私の能力は根本が分からないし」

「ああ、真っ白な空間だっけ?」


 火之花ちゃんが夢で見たのは太陽。だから、能力も火力の高い炎になっている。本質は核融合とかだったら色々とあれだけど、現状は炎だ。

 対して私。夢で見たのは、全てを白く染める空間。例え汚れても全てを白く染め上げる。そこから綺麗にして、白く染め上げるという能力に繋がる。


「う~ん……改めて考えてみると、聖奈の能力で炭化出来るって意味分からないか。綺麗にして白く染める……綺麗にするのも、漂白とかから派生して得られる力だとして、炭化……そういえば、汚れても白が侵食していくんだっけ」

「うん。黒くなっても白くなるよ」


 昨日の夢なのに、未だに強く頭の中に残っている。


「大樹とかあれが黒なんじゃない?」

「黒だから私の能力が天敵?」

「そうそう。綺麗にするから不浄を消すっていうよりも納得出来そうな理由にならない?」

「確かに。後は大樹が黒だったらって感じかな」

「あれは黒でしょ。キモい色してるし」

「現実にあったら毒持ってるよね」

「現実だよ、聖奈」

「あっ」

「お前達は良い意味で緊張感がないな」


 わいわいと話しながら歩いていたら、日暮さんがそんな事を言った。ずっとこんな風に歩いていたから、これが普通になっていたけど、日暮さん達は作戦としてきているから、私達との意識の差が凄いのかもしれない。良い意味でっていうのは、私達が緊張していないって事かな。

 少し狭いビルの間を通っているところで栗田さんが手を上げた。日暮さんが一歩前に出て、私達を制止する。


「どうした?」

「敵です。これまでの犬型ではありません。人型です」


 先程までの弛緩した空気から一転、緊張感が走る。人型の敵という点から、相手がこれまでとは違う動きをする事に加えて、人のような動きをする事が考えられる。警戒するに越した事はない。


「数は?」

「多いとしか」


 つまり目視で瞬時に数えられるくらいの数じゃないって事だ。


「戦闘はしないに越した事はない。それに俺達の目的は大樹に辿り着く事だ。大樹から伸びている根を探せばどうにかなる。ルート変更だ」


 生まれる化物の種類が増えた。あの時、すぐに行動をしていなかったら、私達はここまで来られなかった可能性もある。

 化物と化物みたいな頭の構造をした人間。その二つの脅威から逃れつつ、私達は大樹を目指す。

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