終末への抵抗は迅速に
お母さんと一緒に火之花ちゃん達の元に戻る。火之花ちゃんは相変わらず炎を出しっぱなしにしている。能力の継続時間の検証はまだ続いていたみたい。
「日暮さん。許可貰いました」
「はぁ!? い、良いんですか? はっきり言うのもなんですが、死亡する可能性がかなり高い作戦になります。正直に言って娘さんを送るのはおすすめできませんが」
「それも理解しています。この子も覚悟の上ですので」
「そうですか……分かりました。こちらも準備を進めさせて頂きます。追って連絡する」
「はい。分かりました」
日暮さんはすぐに走り去っていった。自衛隊の方で作戦を考えてくれるみたい。私達がなるべく安全に大樹の元に向かえるようにしてくれるのだと思う。
「火之花ちゃんも一緒に行くのよね?」
「勿論です。聖奈を一人で行かせるのは心配ですので。それに最悪私の能力で大樹を焼くとかもありますから。私の能力は、他の人を遙かに凌ぐ火の能力みたいですから」
「そう……聖奈の事よろしくね。でも、火之花ちゃんが犠牲になって良いわけじゃない。それはしっかりと頭に入れておいてね」
「はい。分かりました」
私を守るために付いてきてくれる火之花ちゃんにも、しっかりとお母さんは自分の身もちゃんと守るように言い含めていた。
「東堂! 西園寺! ルートの説明をする! こっちに来てくれ!」
日暮さんが大きな声で私と火之花ちゃんに呼び掛ける。日暮さんが作戦を立てに行って五分もしていないけど、もう固まったみたい。私達が来る来ない関係無しに何かしらの作戦を考えていた感じかな。
「は~い! じゃあ、お母さん、行ってくるね」
「ええ」
私は火之花ちゃんと一緒に日暮さんがいる方に走っていく。日暮さんと合流すると、大きな天幕の中に通される。私が植物を消した事で、それ以上の崩壊から解放された建物は多いけど、そこを利用出来るかと言われると微妙な状態だった。植物なしでもいずれ崩壊するだろうと思わされるくらいには壊れている。
だから、自衛隊の人達も天幕を張って色々とやっている。私にはよく分からないけど。
天幕の中には他の自衛隊員の方々もいる。どこかと通信を試みている人だったり、地図を見ながら何か話し合っている人だったり、色々といる。私達が入って大丈夫なのかと思ったけど、日暮さんが招き入れているから良いのかな。こういうとき、堂々としている火之花ちゃんが羨ましい。
「まず陸路は東京に入るまで使わない。ここから海路で東京に入る」
「海は安全なんですか?」
「ああ。昨日からそれを調べさせていた。結論から言えば、海に化物の存在は確認されず、植物も現れていない。ただこれがいつまで続くかは分からない。行動するなら早い方が良い」
今日何も無かったからって、明日も同じとは限らない。私達はその事を昨日今日で強く思い知っている。行動が早い方が良いというのはその通りだ。
「じゃあ、今日にでも向かうって事ですか?」
「そのつもりだ。後は戦車に東京へと向かって貰っている。攻撃が通用しないって話だが、それがどこまでかは分からないからな。今回の作戦と同時並行で砲撃を開始して貰う予定だ」
「そういえば米軍の方は……」
近くという程近くはないけど、米軍の基地があったはず。そっちからも援軍を頼めないのかと思ったけど、日暮さんは首を横に振った。
「こっちよりも被害が甚大でな。基地とその周辺が植物と化物にやられている。救助出来た者もいるが、援軍として来てもらうというのは厳しいだろう」
既に調べた後だったみたい。色々とやれる事を考えて情報収集をしていたって感じかな。民間人の救助もしながら、その辺りも余念がないのはさすがと言わざるを得ない。
「こっちも出せる人員は限られてる。成功失敗関係無しにこの作戦が最初で最後になるだろうな」
「これが失敗したら」
「それこそ終末だな。緩やかか急速か分からないが、人類は滅びる。既にその五歩くらいを進んでいるんだ。悠長にはしていられないな」
化物問題を乗り切っても食料問題やエネルギー問題など解決しなくちゃいけない事は多い。そこに化物が蔓延る事を加えたら、人類が生き残れる場所はかなり限られてくる。
「それと海路にした理由はもう一つある。能力者対策だ」
「あっ」
そう言われてすぐにここに来た時を思い出した。能力を持った人の暴走。あれは、本当にただの馬鹿達だったらしいけど、ああいった人に迷惑を掛ける事に喜びを覚える手合いが、まだそこら中にいる可能性は十分ある。
その能力者が来ない場所となると、海という答えにたどり着く。海を渡る能力者がいたとしても、地上よりも数は少ない。だから襲われる確率は地上よりも低くなる。
「日暮二尉。準備が整いました」
「よし。宇留井三尉。以後任せる」
「はい!」
日暮さんが私達を手招きするので、私達は日暮さんに付いていって天幕を出る。
「日暮さんも行くんですか?」
「当たり前だ。東堂と西園寺を向かわせるのに、焚き付けに関わった俺がここでのんびりしてる訳にはいかないだろう。それに現地にいかなけりゃ分からない事もある。立ち止まっている暇はない」
日暮さんの先導で向かった場所には軍艦が停泊していた。
「こいつで行く。すぐに出発だ。最後の挨拶は済ませておいてくれ」
日暮さんに言われて、私と火之花ちゃんは顔を見合わせてからお母さんの元に行こうとする。でも、その必要はなかった。お母さんは私達の後ろにいたから。
お母さんは私達の側まで来ると、二人まとめて抱きしめた。
「二人とも無茶しない。死にに行かない。最後まで生きる事を諦めない。それを守りなさい。二人が帰る場所は私が守っておくから。それを覚えておきなさい」
「うん!」
「はい」
最後に一人一人お母さんと抱きしめ合ってから、私達は軍艦に乗り込む。
世界に大樹が発生してから一日後。私達は大樹をどうにかするため、大樹へと向かって出発した。この時、この行動が、後々の世界に大きな影響を及ぼす事になる。




