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記憶を奪う勇者は危険だと追放されたが、魔法そのものを忘れさせて救ってしまった

これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。

ここ数年――


名を馳せた大魔導士や歴戦の勇者たちが、

六十代という比較的早い年齢で“若年性の痴呆”に陥る事件が続発していた。


昨日まで詠唱していた禁呪を忘れ、

長年の戦歴を語れず、

自分の弟子の名すら思い出せなくなる。


「忘却は、最強をも無力にする」


その事実は、静かに世界へ恐怖を広げていた。



南ファンタの境界に位置する三つの隣接する村。


そこを治める一人の貴族。

村の魔術顧問を務める老練な魔導士。

そして信仰を司る神殿の司祭。


三人は、その“忘却の連鎖”に強い危機感を抱いていた。


そんな折――


「記憶を操作する異能を持つ勇者が来るらしい」


ケンの噂が届く。


百人同時制圧。

支配系の異質なスキル。


三人は即座に結論を出した。


「あれは危険だ」


「記憶を弄ぶ力など、世界を壊しかねん」


「村に入れてはならぬ」


その日から、三村では密かに噂が流された。


“ケンの力は、英雄たちを痴呆に追い込んだ元凶かもしれない”


恐怖は、瞬く間に広がった。



ケンとライトノベル一行が村の外縁へ到着した時。


門前には、女たちが集まっていた。


「来ないで!」


「記憶泥棒!」


「私たちの村を壊さないで!」


次の瞬間。


トマトが飛ぶ。


赤い果汁がケンの頬を伝う。


パーティが殺気立つが、ケンは手で制する。


「……なるほど」


彼は怒らない。


ただ、三人の背後にある“恐怖”を察していた。



その夜。


突如、北の森から魔力の奔流が迫る。


蛮族の魔術師団。


略奪と破壊を目的とする集団が、三村を包囲した。


火球。

風刃。

毒霧。


村は一瞬で混乱に陥る。


貴族は震え、

司祭は祈り、

魔導士は詠唱するが――数が多すぎる。


誰かが叫ぶ。


「ケンに頼れ!」


だが三人は拒絶する。


「断じてならん!」


「記憶を操る者に未来を委ねるな!」



その時。


城壁の影を、一人の影がすり抜ける。


ケン。


「……助けを求められてないけどな」


静かに手を掲げる。


「《忘却付与・限定干渉》」


透明な波が広がる。


次の瞬間――


蛮族の魔術師たちが、詠唱を止めた。


「……あれ?」


「次の句は……?」


「魔法陣の構築式が……思い出せない……?」


彼らは、自分の呪文の構成を忘れていた。


完全な記憶消去ではない。


“術式の核心だけ”を奪う精密干渉。



「今だ」


ライトノベルが剣を抜く。


彼とパーティは、魔法を失った蛮族たちを容易く制圧していく。


戦いは、あまりにも一方的だった。


やがて。


静寂が戻る。



夜明け。


村人たちは事実を知る。


蛮族の魔法を奪ったのは、ケン。


昨日トマトを投げた女たちが、顔を赤らめて集まる。


「……ごめんなさい」


「あなたがいなければ、私たちは……」


「さすが……予言された史上最強の勇者様……」


中には涙ぐみながら言う者もいた。


「もし許してくれるなら……私、あなたのお嫁さんになります……!」


一人が言えば、二人、三人。


場が騒然とする。


ケンは困惑しつつも、苦笑する。



その前に、三人が立つ。


貴族。

司祭。

魔導士。


顔をしかめ、腕を組む。


「……偶然だ」


「危険な力である事実は変わらん」


「感謝するつもりはない」


沈黙。


次の瞬間。


一発のトマトが、貴族の顔に直撃する。


続けて、司祭へ。


魔導士へ。


「恥を知りなさい!」


「命を救ってもらっておいて!」


「謝るべきはあなたたちでしょう!」


赤い果汁が三人を染める。


三人は言葉を失う。


その背後で、ライトノベルは無言でケンを見つめていた。


歓声の中心に立つケン。


恐れられ、拒絶され、それでも救う存在。


そして――


その“忘却を操る力”が、どこまで世界を変えるのか。


まだ誰も、理解していなかった。

このエピソードを楽しんでいただければ幸いです。次のエピソードはすぐにアップロードします。

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