懸賞金一千万――百人同時支配、そして沈黙の粛清
これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
南ファンタの港湾都市リュセリア。
潮風の匂いが漂う石畳の街は、束の間の平穏に包まれていた。
ケン、勇者ライトノベル、そしてパーティの面々は、地方視察の名目でその街を訪れていた。
だが――
その平穏は、轟音と共に崩れ去る。
城門が爆ぜ、黒煙が空へ昇る。
「目標はケンだ! 首を取れば一千万金貨だぞ!!」
怒号と共に押し寄せるのは、各地から集まった傭兵団、没落貴族の私兵、腐敗した領主の刺客たち。
その数、およそ百。
屋根の上、路地裏、広場――四方八方から襲いかかる。
市民の悲鳴が響く。
パーティが即座に迎撃体勢を取るが、数が多すぎた。
ケンは静かに前へ出る。
「……仕方ないな」
深く息を吸う。
そして、右手を掲げた。
「――《支配領域・全域展開》」
淡い蒼光が波紋のように広がる。
次の瞬間。
百名の侵入者たちの動きが止まる。
剣を振り上げたまま。
矢を放とうとした姿勢のまま。
詠唱途中の魔術師も、そのまま凍りついた。
ケンのスキルが、初めて最大出力で発動された。
百人同時制御。
額から血が流れる。
視界が歪む。
膝が震える。
ライトノベルとパーティの仲間たちは、ただ黙ってその光景を見つめていた。
ケンの背中から放たれる圧倒的な存在感。
それは――勇者を超える何か。
「……今だ」
かすれた声。
その合図で、ライトノベルたちが動く。
動けない侵入者たちを、一人残らず斬り伏せていく。
血飛沫が舞う。
悲鳴は上がらない。
抵抗もない。
数分後、広場には百の死体が転がっていた。
そして。
スキルを解除した瞬間、ケンは崩れ落ちる。
「ケン!」
駆け寄る仲間。
だが命に別状はない。ただ、魔力の枯渇。
周囲から、市民たちが恐る恐る近づいてくる。
特に若い女性たちは、目を輝かせていた。
「あなたが……噂の……」
「さすが、予言された“史上最強の勇者”様……!」
「街を救ってくださって、ありがとうございます……!」
ケンは苦笑するしかない。
その様子を、ライトノベルは無言で見つめていた。
そして、不意に口を開く。
「報告が必要だ。来い、ケン」
市民の歓声を遮るように。
ケンの肩を掴み、そのまま勇者ギルド支部へと連れて行く。
◇
報告は簡潔に済まされた。
「侵入者百名、全滅。市民被害軽微」
記録官が震える手で書き留める。
その後、二人は勇者専用酒場へ向かった。
夜。
酒場は熱狂に包まれていた。
「百人同時制圧だって!?」
「とんでもない新人だ!」
「いや、もう新人じゃないだろ!」
杯が掲げられる。
「ケンに乾杯!!」
歓声と拍手。
ケンは困惑しながらも、勧められる酒を受け取る。
その喧騒の中。
ライトノベルは静かに席を立った。
誰も気づかない。
店の外。
路地裏。
そこに、二人の老人が立っていた。
酒場から出てきたばかりの様子だ。
「見たか……あの力……」
「もうライトノベル様を超えておるな……」
「時代が変わるかもしれん……」
その言葉。
次の瞬間。
閃光。
老人たちは声もなく崩れ落ちる。
ライトノベルは無表情のまま、剣を振るった血を払う。
死体を闇へ引きずり込む。
物陰へ。
そして魔術で痕跡を消す。
静寂。
誰にも知られない。
翌日、二人の老人の行方を気にする者は、いなかった。
酒場では、まだケンの武勇伝が語られていた。
南ファンタを救った若き勇者。
予言された、史上最強の存在。
その影で。
闇は、さらに深く広がっていく。
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