俺の首に百万金貨の懸賞金がかけられていた件
これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
ここ数週間、異常なことが続いていた。
行く先々で、盗賊や傭兵、さらには貴族の私兵までもがケンを狙って襲撃してくるのだ。
森の中、街道、宿屋の裏路地――場所は違えど、展開はいつも同じだった。
「今だ! 殺せ!」
魔法陣が展開される。詠唱が始まる。
その瞬間――
「……忘れろ」
ケンが静かにスキルを発動する。
次の瞬間、襲撃者たちは顔を歪める。
「な、なぜだ……!? 呪文が……思い出せない……!」
魔法の詠唱方法、術式の構成、発動手順。すべてが霧のように消え去る。
その様子を、勇者ライトノベルとパーティが無言で見つめる。
ケンの役目は、そこで終わりだ。
次の瞬間、剣が閃く。
ライトノベルの一太刀。仲間たちの追撃。
襲撃者は一人残らず斬り伏せられた。
それが、何度も、何度も、繰り返された。
ある日、襲ってきた男の一人が、斬られる直前に叫んだ。
「その首は俺のものだ! 報酬は――」
言葉は最後まで続かなかった。
ライトノベルの剣が、容赦なく男の喉を断ったからだ。
ケンは、その言葉が妙に引っかかった。
(報酬……?)
偶然とは思えない襲撃の多さ。
だが証拠はない。
そして毎回、ライトノベルたちは淡々と始末するだけだった。
◇
一方その頃。
ファンタ西部――犯罪と闇取引で名高い、陰鬱な都市。
石畳はひび割れ、路地には薄暗い霧が漂い、どこか湿った血の匂いが残っている。
その街の一角、古びた宿屋の二階。
一人の貴族が、窓辺に座っていた。
アクセル。
整えられた髪、冷たい瞳、指には高価な指輪。
彼は窓の外を眺める。
街のあちこちの掲示板に貼られた紙。
そこには、ひとつの顔が描かれている。
――ケン。
そして大きく書かれた文字。
『手配書 生死不問
報酬:金貨百万円
首を持参せよ 宛先:アクセル』
通りを歩く傭兵たちが、その張り紙を睨みつける。
犯罪者たちが、金貨の山を想像し、舌なめずりをする。
アクセルは小さく笑った。
「存在してはならない」
低く、冷たい声。
「私より大きな勇者など、この世にあってはならない」
その瞳には、焦りと歪んだ誇りが混じっていた。
窓の外には、賞金目当ての影が蠢いている。
遠く離れた場所で、ケンはまだ知らない。
自分の首に、百万金貨の価値がつけられていることを。
そして、それがただの嫉妬ではなく、もっと大きな闇の一部であることを。
冬の風が、静かに吹き抜けた。
次の襲撃は、すぐそこまで迫っている。
このエピソードを楽しんでいただければ幸いです。次のエピソードはすぐにアップロードします。




