第5章 関東のツキノワグマ
その日の夕方、秩父市市役所の猟友会支部に入った。澪は助川会長らの出迎えを受けた。埼玉県内の熊の出没状況を詳しく聞くと秩父市から北部、西部の山岳部に結構な数のツキノワグマが生息していた。300頭は下らなかった。駆除しても住民に目撃されていた。全国的に個体数は増えていた。澪は個体数を把握していた。現在の駆除のやり方では生温いとは感じていた。改革が必要だと!熊だけではない。イノシシも鹿もキョンも増えていたから頭は痛かった。助川会長も目撃したら猟友会が出るのではなく随時、山の中に入って行く方法を提案していた。それを澪や政府は危険と判断していた。やらせなかった。何時、ハンターが襲われるかわからないからだった。澪や人間の生命を守りたかった。「埼玉県も人里に行かないよう防御壁をつくりましょう。電流付きのやつ!政府に予算つけさせます。会長、約束いたします。それでは山の視察に行きましょう?案内お願い致します。」澪は助川会長らの顔を見た。「わかりました。ご案内いたします。」助川会長が澪の顔を見た。「みなさん。防御服を必ず着て下さい。東京では襲われて怪我人が出ております。重たいですが、良い筋肉がつきますよ。私は随時着ております。」澪はメンバーの一人一人の顔を見てニヤリ笑った。メンバーは自分のロッカーに向かって防御服を着て部屋に出て来た。メンバー30人が本日出勤していた。全メンバーは埼玉県は多い支部なので60人居た。一番多い支部は北海道札幌支部で120人、次に秋田支部100人で青森支部60人、山形支部60人.岩手支部60人、宮城支部60人、新潟支部60人、福島支部60人であった。大体の支部が60人前後だった。全員部屋を出て何台かの車に分乗して山に向かった。山へ入ると猟友会メンバーが犬を6頭放した。犬は山へ消えて行った。メンバーは犬を追って散り散りに山へ入って行った。澪もその後を追った。1時間すると犬が激しく鳴き始めた。熊と遭遇したのであった。澪が行くと猟友会メンバー10人と犬3頭がツキノワグマ1メートルを囲んで対峙していた。「長官!1頭見つけました。自分らが撃ちますか?長官が撃ちますか?」隊員が澪の顔を見た。「あんたらで処分して下さい。私は遠慮します。」澪は珍しく猟友会メンバーに譲った。年配のメンバーがマグナムのトリガーを引くと「バーン!」大きな音とともに熊が倒れた。念の為、澪は熊の眉間にグロッグG19で打ち抜いて留めをさした。澪達、姉妹の掟である。留めをさした。その時奥から犬の鳴き声が激しくなった。メンバーは身をかがめて静かにその場所に着くと1メートルのツキノワグマが犬に威嚇されて身動きの取れない状態に居た。「今度は私が仕留める!」澪はカートリッジをはめるとスコープを覗き照準を心臓に合わせた。トリガーを引くと「パーン!」音とともに熊が後へ倒れた。澪はそれを確認し、近くへ行くと胸からグロッグG19を取り出して眉間を打ち抜いた。「長官!お見事!ご苦労さまです!」隊員が澪に声をかけた。全員で熊の遺体を軽トラに乗せた。「皆さん、今日はこれくらいにしませんか?」澪がメンバーに声をかけると「はい!そうしましょう!」隊員が澪の顔を見てニヤリ笑った。「会長。防御壁はお約束いたします。近いうちかならず!市街地へ行かないように手をうちましょう!それでは、これから、群馬へ行きます。お疲れ様でした。」澪は会長の顔を優しく見て微笑んだ。「長官、一杯いかがですか?」会長は澪の顔を見るとニヤリ笑った。「私はこれで失礼致します。お誘い有り難う御座います。」澪は会長の目を見て優しく微笑んだ。猟友会メンバーが直立不動の敬礼で澪と小林を見送ってくれた。澪と小林も敬礼を返して車に乗り込んだ。と同時にスマホが鳴った。画面を見ると【あかり】と出ていた。アメリカCIA長官の姉からだった。電話を取ると「お姉ちゃん珍しいなあ!電話なんて、元気ですか?」澪は先に声をかけた。「澪、久しぶり!あんたも元気そうだね。電話大丈夫?この電話盗聴されている可能性大だから用件だけ言うね。あんた!今の仕事辞められない?藤原首相には言ってあるからさあ!私の側で活躍してくれない?信用出来る人が必要なの!あなたなら大丈夫だよね。大事な仕事なの?今の部下達は信用できなくてさあ!小春にも仕事頼んでいるのよ。詳しくはあとでね!それではバイバイ!」あかりは一方的に話して電話を切った。




