第2章 熊は海を泳ぐ
澪の下関に来た理由は第一に熊を九州へ上陸させない方法を探す為であった。下関市内を走っていると澪には見覚えのある看板に目をひかれた。お昼前だったが無性にラーメンが食べたくなった。長女のあかりが作ったラーメンチェーン店だった。小林も気付いたらしく、「あかりさんのラーメンチェーン店こんな所にもあるんですね。長官、食べて行きましょう!もうすぐお昼なので!市長もいかがですか?」小林は聞いた。「小林君、私の気持ち読めた?私も食べたいなあ?と思っていたのよ。お姉ちゃんのラーメンチェーン店は沖縄以外どこにもあるから食べたい時はいつでも食べられるからね。今回は久しぶりだな。市長もいかがでしょうか?ご一緒に遠慮なく。御馳走できませんが、利益寄与になってしまいますから。すいません。」澪は隣に座る市長の横顔を見た。「是非、喜んで!推しの人とラーメンなんて最高です。」市長は木に登る勢いで興奮していた。「それでは決まりです。小林君寄ってくれない。」澪は小林に言った、「はい。わかりました。」小林は車を駐車場へ入れて三人はお店に入った。「これよ!この匂い!ラーメンあかりの特徴。小林君、私は豚骨しょうゆチャーシュー大盛り買ってくれない。脂多めで!」澪はそう言って小林に食券を買って貰った。「長官は豚骨しょうゆ派ですか?僕は豚骨特製塩チャーシューにします。」小林は2枚の食券を買った、市長は豚骨味噌チャーシューにした。猟友会メンバーも店に入って来た。席は別々になったがまとまれてすわれた。おのおの好みのラーメンを頼んだ。「長官、このラーメンチェーンは長官のお姉さんが経営しているラーメンチェーン店ですよね。雑誌で見ました。美味しいですよね。私、良く寄らせていただいております。」市原隊員が澪の顔を見て微笑んだ。「今は、旦那さんが仕切っています。お姉ちゃん大陸に行ったきりですから?時々電話で話すくらいだけどね。ユーチューブなんかによく批判が出てるけど!あかり姉さん、こはる姉さんも私も悪魔だと言われてますが皆優しい女なのよ。仕事だから仕方なく割り切っていると思う。後正義感ね。誰かがやらないといけない事だから私がやるって根性決めているのよ。こんな事、普通の人には出来ないもの私達姉妹は昔からそう言うふうに訓練させられて来たのよ。だって、戦国時代から続くくノ一の家系ですから!まあ、人殺しやハニートラップとかね。小林君は知っていると思うけど?」澪は皆の顔を見て最後に小林の顔を見てニヤリ微笑んだ。「北川市長?まだ、関門海峡を熊は渡っていませんよね。こちらの調べでは北九州での目撃情報はありません。でも近いうちに渡る可能性は大きいと私は考えております。北海道の熊は利尻島まで20キロを泳いだという報告があります。関門海峡は28キロですよね。ないとは言えません。津軽海峡の21キロの横断も未だ確認されておりませんが、北極熊は627キロ泳いだのを確認されております。だから今回は九州へ渡らせない対策を練りたいと考えております。」澪が市長の顔を見て熱く語った。「お待ちどうさまです。」係員がラーメンを運んで来た。「豚骨醤油チャーシューはどちらですか?煮卵、店長からのサービスになります。豚骨特製塩チャーシューはどなたでしょうか?煮卵は店長からのサービスです。豚骨味噌チャーシューはどちらですか?煮卵は店長のサービスです。有り難う御座います。ごゆっくりお召し上がり下さい。」店員が下がろうとすると「店長さんに顔出すように伝えてくれない。」澪が店員にひそひそと言った。「はい。わかりました。そう伝えます。」店員が笑顔で澪を見て下がってしばらくすると猟友会メンバーのラーメンを持って来た。「豚骨醤油チャーシューはどちらになりますか?もう一つ同じ物になります。豚骨特製塩チャーシューはどちらになりますか?豚骨味噌チャーシューはどちらになりますか?豚骨カレーラーメンはどちらになりますか?煮卵は店長のサービスです。以上お揃いでしょうか?お待たせいたしました。有り難う御座います。ごゆっくりお召し上がり下さい。」店員が下がった。「頂きます。」一斉に合掌して麺を啜った。皆、無言でラーメンを啜った。澪は完食して、「ご馳走様でした。」合掌して箸を置いた。すると店長が奥から出て来た。「何か不都合でもございましたか?宮崎長官?会長、社長にはお世話になっております。社長の隆司さんは毎月こられます。味のチェックはかかさないですね。だから当店は本店と変わらない味ですよ。」小川店長は澪の顔を見て優しく微笑んだ。「煮卵有り難う御座います。ラーメン美味しく頂きました。」澪は小川店長の顔を見て笑顔で微笑んだ。「ご馳走様でした。」皆食べ終えて合掌し満足そうにお腹を撫でた。「よし、腹ごしらえも済んだ。行くとしますか?」澪が号令を出すと一斉に席を立った。店長が見送りに出て来た。「長官、本日は?何用でこちらまで?」小川店長が澪の目を見つめた。「熊の様子見ですよ。」店長の目を見てニヤリ笑った。「また、寄らせて頂きます。何回かこなくちゃいけないから!」澪は小川店長の目を見て優しく微笑んだ。「まずは、豊田町へ行きましょう。」北川市長が言うと小林はナビをセットした。車が走り出した。「長官、ラーメンあかりはどの店の味も変わりませんね。味の管理は徹底していますね。他のチェーン店は店によって味にバラツキがありますが?先週は東京葛西で食べたのですが?僕の家、西葛西なんですよ。」小林は思い出したかのように言った。「何?西葛西なんだ!お姉ちゃん達と一緒だよ。あかり姉さんとこはる姉さん。マンションだけど!偶然だね。ワハハハ!私は北千住のアパートに住んでいたの!独身の時。」澪はビックリして最後に笑った。しばらくすると豊田町に着いた。山間部であった、「先月も目撃情報はよせられております。大体が朝の7時から10時に集中しております。今の時間はほとんどありません。が必ずこの山に何頭かは潜んでおります。」猟友会の長島会長が説明した。「それでは、今日は出会えないですかね?」澪が長島の目を見つめた。「はい。可能性は低いかと思いますが宮崎長官見たさに出て来てくれるかもしれません。犬を放ちます。」長島は澪の目を見て犬を山に2頭放した。1時間くらいすると犬の鳴き声が大きくなった。全員で近くへ行くと約1メートルのオスの熊が罠にかかっていた。「宮崎長官。罠に引っかかっておりました。熊に遭遇出来ましたね。ラッキーです。」長島は澪の目を見た。「私が処分致します。」澪が長島の目を見て優しく微笑んで、アサルトライフルM16A2を出した。「それでは、宜しくお願い致します。長官、噂通り小径ライフルですね。」長島は澪の目を見てビックリした表情を見せた。「何か?可笑しいですか?ライフルね。私はこれが扱いやすくてね。私の恋人。ワハハハ!心臓に当たれば小径でも充分ですよ。」澪は長島の目を見て笑った。「我々、猟友会のメンバーでも百発百中の人間はおらゎで大径のマグナムを使って者が大いのですわ!長官見たいに金メダリストちゃいますから!」長島は澪の目を見て笑顔で微笑んだ。「私、非力ですからこれがちょうど良いのです。大径は撃った後の跳ね返りが嫌いなんです。どれ!処分しますね。」澪は罠にかかって逃げられない熊の心臓を狙ってライフルのトリガーを引いた。「パーン!」1発、音が山の中に響いた。ドサっと熊は倒れ、澪は胸からグロッグG19を取り出し熊の額に向けトリガーを引いた。「パーン!」山の中にまたまた響いた。澪は倒れた熊の前で手を合わせ「お前には恨みはないが私がやらないといけないから、すまん。天国へ行ってくれ!」澪はボソボソと話かけた。「お見事!ご苦労さまです。」長島は澪の目を見つめた。「長島さん、後、どれくらいの個体が山の中に居ますか?ここは豊田町ですよね。下関の町中まで相当ありますよね。今、我々が来た道を下らないと玄界灘を渡れませんよね。」澪は長島の目を見て優しく微笑んだ。「そうですね。山陽新幹線をくぐり、中国自動車道をくぐり、山陽本線を渡らないといけません。熊の市街地の目撃は未だありません。これからはわかりませんが?無理だとは言い切れませんが出来ないに等しいです。」長島は澪の目を見つめた。「それでは、長島さんは熊の南下は難しいと言い切るんですね。わかりました。私は可能性はゼロではないと思いますが?」澪は、長島の目を見た。「それでは、市街地の海岸線まで行って見ましょう。」北川市長が言った。「行きましょう!」澪は北川市長の目を見つめた。全員車に乗った。殺した熊を軽トラの荷台を乗せた。死体解体場へより遺体を降ろした。しばらく走ると山陽新幹線を越えて、中国自動車道を越えて山陽本線を越えて市街地に入った。わざと海岸線を走って貰って、澪は狙撃出来そうな場所を探してキョロキョロ外を見ていた。全員、彦島へ入った。「ここが下関最南端です。あちらが玄界灘です。ここまで約30キロですね。車で1時間です。」北川市長が澪の目を見た。「そうですか?有り難う!下関警察署の脇の高い塔は誰でも上がれますか?」澪は北川市長の目を見た。「あれですか?オーヴィジョン海峡ゆめタワーと言いまして153メートルの高さをほこる玄界灘を見下ろせる観光地です。何か?」北川市長は澪の顔を見て不思議そうな顔をして尋ねた。「見張り台としては最適です。狙撃も出来るし?わかりました。ここまでは熊でも来る事は難しいでしょう?だから猟友会の方々で豊田町から出さない方法をかんがえましょう?私はこちらには毎月伺い作戦会議を有識者をまじえてやりましょう?私の任期中には熊は九州には上陸させません。」澪は皆の顔を見てハッキリ言った、それから半年後、この下関で澪、全国の猟友会会長、山口県知事、有識者で(熊を九州に渡らせない会議)が行われた。まずは豊田町から熊を出さない事を検討した。が既に隣の菊川、豊浦、内日には目撃情報多数でありそれは無理そうであった。そこで有識者は、それより南の旧下関に入れない事を念頭において作戦を練った。菊川、豊浦、内日と旧下関の境界に罠を仕掛けて何箇所か見張り小屋を建てて交代で張り込む事に決定した。電流柵の設置も容認される。「万が一突破されたら、私が下関に常駐して熊を追いかけ狙撃します。それくらいの覚悟でいますから!」澪は全員の前でそう宣言した。「長官にそこまでさせられません。撤回してください。」北川市長が澪の目を見つめたが「嫌!撤回はしない!私の仕事です。一般市民を危険から守る仕事ですから。」澪は北川市長の目を見て微笑んだ。「せっかく、有識者の方々が集まってくださっていますので全国の熊をどうしたらよいか?お聞きしたい?」澪は有識者に意見を求めた。「長官もご存じの通り、乱開発で熊の居場所が人里と近くなっております。最近は毎年、気候が異常というか通常になっておりす。私どもが考えるには山にまき餌をしてはいかがでしょうか?人里に出て来ないように。空からまけとかいかがでしょうか?後は猟友会で山の中へ餌をまいてはと?藤原真希総理になってから猟友会の方々には高い報奨金が出ていると聞きました。それくらいの事は出来るでしょう?」動物学者安住先生が猟友会の会長達の目を見た。「そうだな?出来ない事はない!やらせといただきます。」秋田県の猟友会会長の佐竹が一つ返事で即答した。「佐竹さん。皆と話し合いしなくて大丈夫?揉めたりしない?まき餌の予算は私が藤原首相に頼んでみます。」澪は全員の顔を見てニヤリ笑った。




