喪失
この世界のどこかに、その男はいた。彼は天才と呼ばれていた。ある日突然自分のいる星の形を考え、その研究に生涯を費やすことを決意した。天才が何を言うかと、周りからは馬鹿にされ、友人にも見放された。それでも、彼は決意を曲げることはなかった。一人で部屋に籠り、研究を続けた。世界を調べた。
数十年後、彼は一つの結論にたどり着く。この星の形は平面だと理解した。真実を確かめなければならない。ここで終わるわけにはいかないと、彼独自でロケットの開発を始めた。
さらに数十年が経ち、世間一般では高齢者に分類されるようになった頃、彼はロケットの開発に成功した。真実をその目に焼き付けるため、彼は飛び立った。彼はすぐに戻ってきて、ロケットから降り、ただ茫然と、枯れ木のように立ち尽くしていた。
その男は、いつまでも、自分が見た青い球体を思い浮かべながら、時速1700kmで立ち止まっていた。




