第8話 侯爵家の領地へ
「では、案内いたしますわ!」
ローゼリアは嬉しそうに馬車を用意し、俺を乗せると、そのまま侯爵家の領地へと向かった。村から馬車で半日ほどの距離にあるらしく、道中で軽く説明を受ける。
「魔獣はどんなやつなんです?」
「はい、最近現れたのは“大牙狼”という魔獣です。普通の狼よりもひと回り大きく、牙が鋭くて……兵士たちも苦戦しておりますの」
「ふむ……数は?」
「最初は一匹でしたが、今では群れを作るようになりましたわ」
「厄介ですね」
魔獣が群れを作ると、それだけ被害が大きくなる。狩りの効率が上がり、人間側の被害も増えるだろう。下手をすれば村にも被害が及ぶかもしれない。
「兵士たちはどんな対策を?」
「囲い込みを試みましたが、突破されてしまいましたわ……」
「……なるほど」
罠を仕掛けるか、何か別の手を考えたほうが良さそうだ。
馬車は侯爵家の城に到着した。門が開かれ、中に入ると、豪華な庭園と立派な建物が見えた。
「お待ちしておりました、ローゼリアお嬢様!」
執事らしき人物が出迎え、ローゼリアは優雅に挨拶を返す。
「こちらが例の“万能仕事人”ですの」
俺は軽く頭を下げると、執事は驚いた顔をした。
「お若い方なのですね」
「よく言われます」
「では、さっそく魔獣の出る森へご案内いたします」
俺は腰に簡単な装備をつけ、執事の案内で森へ向かった。
◆
森に入ると、異様な静けさが広がっていた。
「……気配がない」
「はい、最近は魔獣が暴れた影響で、人も動物も近づかなくなりましたの」
「足跡は……こっちか」
地面には大きな狼の足跡が残っている。新しいものもあり、最近までここにいたのは間違いない。
「この近くに巣があるかもしれませんね」
「お、おそらく……。兵士たちが奥へ進んだ時も、何匹か遭遇したと聞いておりますわ」
「ふむ……では、巣を見つけて対策を考えましょう」
森の奥へ進むと、やがて大きな岩の影に洞窟が見えた。そこから低いうなり声が聞こえてくる。
「……いたな」
俺は慎重に近づき、中を覗き込んだ。そこには、5匹ほどの大牙狼がうずくまっている。
「これが……」
「見つけたのはいいですが、どうしましょう?」
「簡単には倒せませんから、罠を仕掛けるのがいいでしょう」
「罠、ですか?」
「ええ。こいつらが森を出てこられないようにするんです」
ローゼリアは不安そうな顔をしたが、俺は道具を取り出し、準備を始めた。
「さて、まずは入り口をふさぐための柵を作りましょう」
「柵を?」
「そうです。囲ってしまえば、向こうも出られません」
「なるほど……」
俺は手早く木の枝やロープを使い、簡単な柵を作った。さらに地面に穴を掘り、落とし穴を仕掛ける。
「これで、しばらくは安全でしょう」
「すごいですわ!こんなに手際よく……」
「まあ、慣れてますから」
俺は汗をぬぐいながら、最後の仕上げを終えた。しばらく様子を見て、効果があるか確認しなければならない。
「では、ひとまず戻りましょう」
「はい!」
こうして、俺は侯爵家の依頼を受け、魔獣退治の第一歩を踏み出した。
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