第7話 新たな来訪者とさらなる試練
試練を終え、ようやく平穏な日々が戻る……かと思いきや、そんな甘い話はなかった。
俺が朝食を食べていると、村の入り口が騒がしくなった。
「おい、また何かあったのか?」
嫌な予感がして外へ出ると、村人たちがざわめいていた。その視線の先にいたのは、一人の少女だった。
「失礼ですが、ここに"万能仕事人"と呼ばれる方がいると聞きましたわ」
金色の巻き髪に、上品なドレスを纏った少女。明らかに普通の村人とは違う。
「……で、俺に何の用でしょうか?」
「実は、我が家の領地でとある問題が発生しまして。それを解決できる者を探しておりましたところ、あなたの評判を耳にしたのです」
また仕事かよ!
「いや、俺はスローライフを送りたくて……」
「まあ!あなたの手腕は既に多くの方に評価されているというのに、そんなもったいないことを?」
キラキラした目で見つめられると、断るのが難しい。
「……どんな問題なんです?」
「最近、領地内の森で魔獣が出るようになりまして。兵士たちが対応しているのですが、なかなかうまくいかず……。あなたなら、何か良い方法を思いつかれるのではないかと」
「いやいや、俺はただの便利屋みたいなもんで、魔獣退治は専門外ですって」
「でも、あなたは鍛冶もできるし、戦闘の心得もお持ちでは?」
「そ、それは……」
確かに、戦えないことはない。だが、魔獣討伐なんてとんでもない。
「どうかしら?もちろん、お礼はいたしますわよ」
「……ちょっと考えさせてください」
このまま断っても、結局また誰かに頼られる気がする。
村の酒場でため息をついていると、村長が隣に座ってきた。
「聞いたぞ。侯爵家の令嬢からの依頼だそうだな」
「ええ……また厄介ごとに巻き込まれました」
「お前さんの腕を見込んでのことだろう。それだけ信用されている証拠じゃないか」
「俺はただのんびり暮らしたいだけなんですよ……」
「とはいえ、魔獣が出るのは由々しき事態だ。領地の問題だとしても、いずれこの村にも影響が出るかもしれんぞ」
「……それは確かに」
俺は悩んだ。放っておけば、魔獣の被害が拡大し、最悪この村にも影響が及ぶ。
俺が手を貸せば解決する可能性もあるが、それはすなわちまた仕事を抱えることになる。
どうすればいいんだ……。
「ねえ、お兄さん!」
突然、別の声が割り込んできた。振り向くと、先ほどの令嬢ローゼリアが、興奮した様子で俺の手を握っていた。
「な、なんですか?」
「さっき、村人から聞いたのですが、あなたは以前、村の害獣駆除を手伝ったことがあるそうですね?」
「まあ……そうですね」
「それなら、やはり魔獣対策にも詳しいのでは?」
そう言われると、否定しづらい。実際、俺は村の厄介ごとを色々解決してきた。
「でも、害獣と魔獣は違いますよ?」
「ですが、あなたの知識と経験があれば、きっと何か対策が見つかるはずですわ!」
その時、村長も頷きながら口を開いた。
「確かに、お前さんなら魔獣退治の方法を考えられるかもしれんな。実際に戦わずとも、罠を仕掛けたり、村を守る術を教えるだけでも十分役立つだろう」
「罠……確かに、直接戦わなくても対処できるかも」
俺は考え込んだ。罠なら俺にも設計できるし、村人たちに使い方を教えれば負担も減る。
「……とりあえず、どんな魔獣か確認するために、一度領地へ行ってみます」
「まあ!本当に引き受けてくださるのですね!」
「勘違いしないでください。ただ、状況を確認するだけです」
「ええ、それでも大助かりですわ!」
こうして、俺は侯爵家の領地へ向かうことになった。
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