第6話 試練開始!
「……やるしかない、か」
試練の内容はシンプルだった。村の全ての仕事を朝までに終わらせること。ただし、手抜きは許されず、完璧な仕上がりが求められる。
俺は深いため息をつきながら、まずは仕事のリストを確認する。
「鍛冶屋の仕事、大工仕事、農作業、漁の準備……いや、多すぎるだろ!」
自分で言っておいてなんだが、どう考えても一晩で終わる量ではない。
「どうしたんですの? 早速諦めます?」
優雅に紅茶を飲みながら、アリシアが俺を見つめてくる。
「そんなわけないだろ! やるよ! ただ……」
どう考えても一人でやるのは無理だ。だが、俺にはこの村で培った人脈がある。
「おーい、みんな!」
俺は村の広場に向かい、大声を張り上げた。
「ちょっと手伝ってくれないか!」
すると、村人たちが興味深そうに集まってくる。
「なんだなんだ?」
「ついに観念して執事になるのか?」
「違う! 俺はこの試練をクリアする!」
俺はリストを見せながら説明した。
「でも、一人じゃ無理だから、みんなに手伝ってほしい!」
すると、村人たちは顔を見合わせた。
「ほう……つまり俺たちも一緒にやるってことか」
「うん!」
「おもしれぇ! 乗った!」
「俺も手伝うぜ!」
「私も!」
「いやいや、お前ら気軽に手伝うとか言ってるけどよ、試練ってのは本人がやるもんじゃねぇのか?」
「いいんだよ! 俺がまとめてやるより、みんなでやったほうが早いし、正確に終わる!」
「なるほどな……まあ、お前がそう言うなら、手伝ってやるか!」
「助かる!」
こうして俺たちは、それぞれの仕事に取りかかった。
◆
「よし、これで鍛冶屋の仕事は終わり!」
俺とゴルドが仕上げた刃物や農具が、ずらりと並ぶ。次は大工仕事だ。
「この梁をしっかり固定して……よし、次!」
「おお、すげえ! 仕事が早え!」
「当たり前だろ! ここで手を抜いたら明日の仕事が増えるだけだからな!」
「まったくだな!」
皆で協力しながら作業を進めることで、圧倒的なスピードで仕事が片付いていく。
「おい、農作業の方はどうなってる?」
「バッチリだ! ほら、見ろよ!」
「土もちゃんと耕したし、作物の間引きも終わったぞ!」
畑の手入れが終わり、作物が生き生きとしている。さすが村人たちだ。
「漁の準備も完了しました!」
「すごい……これなら明日の漁は問題なさそうだな!」
「ふふっ、あなた、意外と指揮をとるのが上手いんですのね」
アリシアが楽しそうに微笑む。
「……こんな大仕事は二度とやりたくないけどな」
「でも、あなたがまとめてくれたおかげで、皆も楽しく働けたようですわよ?」
「……まあ、そうならよかったけど」
「こういう働き方をすれば、あなたも無理なく過ごせるのでは?」
「……いや、俺はもっとのんびりしたいんだって!」
「ふふっ、本当におもしろい方ですわね」
◆
「ふう……」
気がつけば、空が明るくなり始めていた。全ての仕事を終え、俺は村の広場に倒れ込んだ。
「終わった……終わったぞ……!」
「本当にやり切ったのですね」
アリシアがゆっくりと近づいてきた。
「さすがに、あなた一人では無理だったでしょうが……なるほど。こういう方法で乗り切るとは」
彼女は微笑んだ。
「約束ですわね。あなたを勧誘するのは、これで終わりにします」
「マジで!? もう来ないの?」
「そうですわね……あなたを雇うのは諦めます。でも、また遊びに来るかもしれませんわ」
「いや、来ないでいいから!」
「ふふ、どうかしら?」
その言葉を聞き、俺は安心して眠りに落ちた。
◆
こうして俺は試練を乗り越えた。しかし、この出来事がさらなる騒動を巻き起こすことになるのだった……。
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