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第2話 仕事が増え続ける

 「よし、今日こそはのんびりするぞ」


 朝、村の広場でのびをしながらそう決意する。


 異世界転生して数日。万能仕事人スキルのせいで、村人たちに仕事を頼まれまくっている。正直、もう休みたい。


 昨日も朝から晩まで働きづめだった。農業、木こりの手伝い、さらには村の子供たちへの勉強指導まで。スローライフとは一体……。


「おーい、ちょっといいか?」


 そんな俺の前に、たくましい腕の村人――鍛冶屋のゴルドが現れた。


「なんですか?」


「いやな、ちょっと仕事を手伝ってほしいんだが……」


「いや、今日は休みたくて……」


「頼む! 村の刃物がな、みんな切れ味が悪くなってきちまったんだ。お前がこの前、鍛冶屋仕事もできるってのを見てから、もうお前しか頼れねえって村中が言ってんだ」


「いや、俺、鍛冶屋の仕事したことないんですけど……」


「でも、お前、初めての農業で畑を救ったろ? なら、鍛冶仕事も余裕だろ?」


「いやいや……」


 ゴルドの圧に負け、仕方なく鍛冶屋へ向かう。



 鍛冶屋に入ると、熱気がすごい。


「まずはこれを試しに研いでみろ」


 ゴルドが一本の包丁を手渡してきた。


「ええっと、こうやって……」


 俺が刃に触れた瞬間、体が勝手に動き出した。砥石を使い、絶妙な角度で刃を滑らせる。まるで熟練の職人のような手つきだ。


「お、おお……!」


 ゴルドが感嘆の声を上げる。


「すげえ、完璧な研ぎだ。いや、むしろ俺より上手いんじゃねえか?」


「マジか……」


 俺は驚きつつも、気づけば次々と刃物を研いでいた。そして、一通り終わったころには、村中の刃物が新品同様になっていた。


「お前、本当にすげえな! こりゃ王都の鍛冶屋も驚くぜ」


「いや、俺はただのスローライフ希望者なんだけど……」


 その言葉もむなしく、ゴルドは満足げにうなずいている。


「よし、これで村の料理人たちも助かるな! ああ、そうだ、お前、鍛冶の才能があるなら武器の修理もやってくれねえか?」


「……はい?」


「実は村の自警団の剣がボロボロでな。どうにも修理できるやつがいなくて困ってたんだよ」


「いや、俺はもう……」


「頼む!」


 ゴルドの熱意に押され、結局、剣の修理までやることになった。



 鍛冶屋の仕事を終え、ようやく休めると思った矢先――。


「ちょっと手伝ってほしいんだけど」


 今度は村の大工がやってきた。


「家の修理を頼みたいんだが、いいか?」


「いや、俺、休みたいんですけど……」


「頼む! お前なら一発で直せるって、みんな期待してるんだ!」


「はぁ……」


 結局、俺はまた仕事をすることになった。


 修理する家の壁には大きな穴が空いていた。


「嵐の日に壊れちまってな。でも、どうしても修理する職人がいなくて……」


「わかりましたよ。やりますよ……」


 ため息をつきつつも、俺は作業に取り掛かる。


 手を壁に当てると、どうすれば直せるのかが自然とわかる。


「なるほど……この木材をこうして……」


 気づけば、大工のように手際よく修理を進めていた。


「す、すごい! 完璧だ!」


 大工が驚いた顔で俺を見ている。


「お前、本当にどんな仕事でもこなせるんだな……。実はもう一軒、修理が必要な家があるんだが……」


「……」


 結局、二軒目の修理までやることになった。



 夕方、ようやく仕事が終わった。


「……疲れた……」


 地面にへたりこむ。


 これでようやく休める。明日こそは絶対にのんびりする。


 そう思っていたのだが――。


「おーい! 旅の兄ちゃん!」


 今度は村長がやってきた。


「実は村の会計がぐちゃぐちゃになっててな……。お前、数字にも強いんじゃろ?」


「……」


 万能仕事人スキルのせいで、俺のスローライフは今日も遠のいていく……。

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