第2話 仕事が増え続ける
「よし、今日こそはのんびりするぞ」
朝、村の広場でのびをしながらそう決意する。
異世界転生して数日。万能仕事人スキルのせいで、村人たちに仕事を頼まれまくっている。正直、もう休みたい。
昨日も朝から晩まで働きづめだった。農業、木こりの手伝い、さらには村の子供たちへの勉強指導まで。スローライフとは一体……。
「おーい、ちょっといいか?」
そんな俺の前に、たくましい腕の村人――鍛冶屋のゴルドが現れた。
「なんですか?」
「いやな、ちょっと仕事を手伝ってほしいんだが……」
「いや、今日は休みたくて……」
「頼む! 村の刃物がな、みんな切れ味が悪くなってきちまったんだ。お前がこの前、鍛冶屋仕事もできるってのを見てから、もうお前しか頼れねえって村中が言ってんだ」
「いや、俺、鍛冶屋の仕事したことないんですけど……」
「でも、お前、初めての農業で畑を救ったろ? なら、鍛冶仕事も余裕だろ?」
「いやいや……」
ゴルドの圧に負け、仕方なく鍛冶屋へ向かう。
◆
鍛冶屋に入ると、熱気がすごい。
「まずはこれを試しに研いでみろ」
ゴルドが一本の包丁を手渡してきた。
「ええっと、こうやって……」
俺が刃に触れた瞬間、体が勝手に動き出した。砥石を使い、絶妙な角度で刃を滑らせる。まるで熟練の職人のような手つきだ。
「お、おお……!」
ゴルドが感嘆の声を上げる。
「すげえ、完璧な研ぎだ。いや、むしろ俺より上手いんじゃねえか?」
「マジか……」
俺は驚きつつも、気づけば次々と刃物を研いでいた。そして、一通り終わったころには、村中の刃物が新品同様になっていた。
「お前、本当にすげえな! こりゃ王都の鍛冶屋も驚くぜ」
「いや、俺はただのスローライフ希望者なんだけど……」
その言葉もむなしく、ゴルドは満足げにうなずいている。
「よし、これで村の料理人たちも助かるな! ああ、そうだ、お前、鍛冶の才能があるなら武器の修理もやってくれねえか?」
「……はい?」
「実は村の自警団の剣がボロボロでな。どうにも修理できるやつがいなくて困ってたんだよ」
「いや、俺はもう……」
「頼む!」
ゴルドの熱意に押され、結局、剣の修理までやることになった。
◆
鍛冶屋の仕事を終え、ようやく休めると思った矢先――。
「ちょっと手伝ってほしいんだけど」
今度は村の大工がやってきた。
「家の修理を頼みたいんだが、いいか?」
「いや、俺、休みたいんですけど……」
「頼む! お前なら一発で直せるって、みんな期待してるんだ!」
「はぁ……」
結局、俺はまた仕事をすることになった。
修理する家の壁には大きな穴が空いていた。
「嵐の日に壊れちまってな。でも、どうしても修理する職人がいなくて……」
「わかりましたよ。やりますよ……」
ため息をつきつつも、俺は作業に取り掛かる。
手を壁に当てると、どうすれば直せるのかが自然とわかる。
「なるほど……この木材をこうして……」
気づけば、大工のように手際よく修理を進めていた。
「す、すごい! 完璧だ!」
大工が驚いた顔で俺を見ている。
「お前、本当にどんな仕事でもこなせるんだな……。実はもう一軒、修理が必要な家があるんだが……」
「……」
結局、二軒目の修理までやることになった。
◆
夕方、ようやく仕事が終わった。
「……疲れた……」
地面にへたりこむ。
これでようやく休める。明日こそは絶対にのんびりする。
そう思っていたのだが――。
「おーい! 旅の兄ちゃん!」
今度は村長がやってきた。
「実は村の会計がぐちゃぐちゃになっててな……。お前、数字にも強いんじゃろ?」
「……」
万能仕事人スキルのせいで、俺のスローライフは今日も遠のいていく……。
お読みいただき、ありがとうございます!!
「面白かった!」「続きが気になる!」と思った方は、
☆☆☆☆☆を面白かったら★5つ、つまらなかったら★1つにして頂けると、とても嬉しく思います!
また、『ブックマークに追加』からブックマークもして頂けると本当に嬉しいです。
皆様の評価とブックマークはモチベーションと今後の更新のはげみになりますので、なにとぞ、よろしくお願いいたします!