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第1話 社畜、異世界転生する

 社畜だった俺は、仕事中にぶっ倒れて死んだ。


 気がついたときには、真っ白な空間にいた。目の前には長いひげを生やした老人が浮かんでいる。


「おお、目覚めましたか」


 老人はにこやかに微笑んでいる。


「あなたは過労死しました。かわいそうなので、異世界で第二の人生をプレゼントします」


「……は?」


 俺は自分の体を見た。確かに、今までのスーツ姿ではない。手を握ったり開いたりしてみるが、疲れも感じない。


「つまり、俺は死んだ……?」


「その通りです。あなたは過労の末に倒れ、そのまま息を引き取りました」


「マジか……」


 働き詰めの人生だった。ブラック企業で毎日深夜まで働き、休みもろくに取れない。寝ても仕事のことが頭を離れず、気づけば机の上で意識を失い、そのまま……。


「はあ……やっと解放されたってことか」


「ええ、ですので新しい人生を楽しんでください。異世界に転生するにあたり、あなたにスキルを授けましょう」


「お、スキルか。なら、俺はスローライフを送りたい。仕事とは無縁の生活を……」


「では、適したスキルを与えましょう。『万能仕事人』というスキルです」


「……ん?」


 聞き間違いか?


「すみません、今なんて?」


「『万能仕事人』です。あらゆる職業の才能を極限まで高めるスキルですよ」


「ちょっと待て。それ、俺の希望と真逆じゃね?」


「仕事を極めることで、どんな状況でも生きていけます。異世界で楽に暮らせる最高のスキルですよ」


「いやいや、楽に暮らすどころか、むしろ働くしかない未来しか見えないんだが?」


「細かいことは気にしないでください。それでは、異世界での新しい生活を楽しんでくださいね」


「おい、待っ……!」


 俺の抗議もむなしく、光に包まれ、意識を失った。



 目を覚ますと、森の中だった。


「……異世界か」


 服装はシンプルなシャツとズボン。手には何も持っていない。でも、なぜか「万能仕事人」というスキルについての知識が頭に流れ込んできた。


『万能仕事人:あらゆる職業の才能を極限まで高めるスキル』


「……いや、やっぱりスローライフに向いてないよな、これ」


 文句を言っても仕方がない。とりあえず生きていくために近くの村を目指すことにした。



 村に着くと、ひどく困った顔をした老人がいた。


「おや、旅のお方かね?」


 俺は軽く会釈しつつ、老人に話しかける。


「すみません、ここはなんという村ですか?」


「ここはラト村じゃよ。だが、今はちょっと困ったことになっておってな……」


「何かあったんですか?」


 すると、老人はため息をついて語り始めた。


「今年の畑が不作でのう。作物が実らず、村の食糧が足りなくなりそうなんじゃ」


「それは大変ですね……」


 俺は試しにスキルを使ってみた。すると、作物の状態が手に取るようにわかった。


「土の栄養が足りないな。適した肥料を作ればいいか」


 気がつくと、俺は畑仕事を始めていた。


「おぬし、農業の心得があるのか?」


「いや、初めてです。でも、なんかできそうな気がするんで」


 俺は近くの森に入り、適した素材を集め、肥料を作った。そして畑に施し、水のやり方を工夫すると……。


 数日後、畑は豊作になった。


「す、すごい! これほどの実りがあるとは……!」


「本当に農業の神様じゃ!」


 村人たちは歓喜し、俺を「農業の神」と呼び始めた。


「いや、俺はただのスローライフ希望者なんだけど……」


 しかし、それを皮切りに次々と仕事が舞い込んできた。


「鍛冶屋の仕事を手伝ってくれ」

「家の修理も頼む」

「子供たちに勉強を教えてほしい」


 なぜか、どんな仕事でも完璧にこなせてしまう。


「万能仕事人……万能すぎる……」


 こうして俺のスローライフ計画は、最初の村に着いた瞬間に崩れ去ったのだった。

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