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君の世界を巡る旅  作者: 天崎 剣
【13】結託

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2. 教育と人材育成

 民間人登用についての話はしばらく続いた。

 具体例を挙げながら、如何に素晴らしい人材を見落としてきたかについて、エドウィンは延々と語ってくれた。それは正に重要な課題であり、直ぐにでも対処すべき事案だということ、育てる場を作らない限り育たない、それこそが国の役割なのだという話に、エクシア王もライオネルも頷きながらグラスを傾けていた。


「ガリム公国とエクシア、セイス辺境伯領との国境にミゼという町があるのですが、あの界隈に教育施設を作って、広く国内外から、例えば大陸全体から優秀な人材を集めて教育していく、というのはどうでしょう」


 話のついでと、ライオネルが提案を持ちかけると、エクシア側の人間達は挙って前のめりになった。


「あの町ならば特に山脈から東側のどの国からも行き来することが出来ます。どうしてもアラガルド王国や北のセプタスからは遠くなりますが、位置的には東側の真ん中に当たりますし、街道を整備するなりすればどうにかなるのではないかと思うのです」

「悪くはないと思うが、山脈から西側の国々にとっては不利ではないか」


 と、エクシア王。


「当然そうなります。が、山脈は勝手に削れるわけでもありませんし、同じような施設を西側でも作って頂ければ良いのではと。あくまで私の提唱する施設はその一例であって、同じような施設がそこかしこにあって然るべきではないかと思います。王族貴族などの上流階級に限らず、広く一般市民からも優秀な人材を集めて教育し、ゆくゆくは自国へ戻ってその教えを広めて貰う、というのもアリかも知れません。あちこちの国から人材が集まれば、様々な考え様々な認識があるのだと言うことを身をもって体験出来ますから、若者には有用でしょう。そして、そこで得た知識は財産となる。――ただ、この考えに賛同しかねる国もあるでしょう。位置的に妥当なのではと、我が国の領内を示しているだけに、拒絶されることも考えられます。あくまでこれは案であって、例えばエクシアやセイス辺境伯領側で施設を建設しても良い、というのであれば、それでも構わないと思っています」


「なるほど。それはかなり先進的な考え方だ。そもそも、他国に自国の優秀な人材を人質に出すなどと、とても看過出来るものではないと思われるかも知れない。その点に関して、大公殿下はどうお考えか」

「当然、そういう考えもあろうかと思います。が、人材育成は急務です。優秀な人材を育てるための師となる人間も、実際のところ人数が足りないでしょう。それぞれの国であらゆる分野の専門家を用意するのも難しい。ここは協力し合って、どの国からも分け隔てなく協力して貰えるよう、国際社会で呼びかけていくのが良いのではないかと。そしてこの精霊祭は、その足がかりとして十分な役割を果たすのではないかと考えています」


 いわゆる大学のような機関を作ったらどうかとライオネルに進言したのは佑だった。

 主に王族や貴族などの上流階級では、家庭教師をそれぞれに雇うのがルミールでの常識だった。優秀な家庭教師は高値で雇われ、役目を終えるとまた別の雇われ先を探す。

 勉学であったり、マナー、剣術、馬術、ダンスなど、分野ごとに家庭教師を雇うことが多く、家の財力で雇うことの出来る教師のランクも変わってくると聞く。

 当然平民にはそうした習慣がない。幼い頃から家事手伝いや農作業に励み、読み書き計算の出来ない人間が多いらしい。本は入手が難しく、知識を持っている人間は偏っている。レニのように平民上がりで薬師になるような人間は珍しく、間違った知識で命を落とす者も多いのだそうだ。


「……なるほど。面白い。公国側がこのような議題を持ってくるとは、考えも及ばなかった。我が国は協力しても良いと思う。他の国々にも意見を求めると良いだろう」


 エクシア王は感心したように何度も頷いた。






 *






 食事が最後まで運ばれると、それぞれが席を立ち、交流が始まる。

 佑も例に漏れず立ち上がったところで、竜樹に呼び止められた。


「父さん、思ったよりちゃんと王様達と話してるじゃん」

「ま、どうにか。……竜樹、お前もアラガルド王家の皆様方にご挨拶に行かないと」

「あ、そうする」


 二人で席を立つと、それを見てリディアもいそいそと立ち上がった。


「待て。私も行く」


 視線の先にメインテーブルがあるのに気付かれたらしい。

 リディアはススッと佑のそばまで寄ってきて、ぼそりと耳打ちするように話しかけてきた。


「まさか人材育成から話を斬り込んでくるとは思わなかった。タスクが入れ知恵したのだろう?」

「ライオネルも関心が高かったですし。そういうところで一体感を持ってから、ところでと話を切り出すのが良いかと思ったんです。俺が何者かはさておき、信頼して貰わないと居づらいですから」

「それはそうと、さっきの鉱山の話は何だ」

「ああ、アレですか。もしかしたらエクシア側は、ルイーズ妃やジョセフのことで何か引っかかりを持っているんじゃないかと思って、わざと探りを入れたんです。健康な人が突然具合が悪くなったり死んだりするのは、もうそれしかありませんし……。同じ考えなら、反応するかなと」

「なるほど? で、どうだった」

「エクシア王と王妃の眉尻が少し動いていました。あれは、恐らく何が起きたのか知っているふうでしたよ。エドウィンも、ルイーズ妃の死後王家とは疎遠、と言っていましたし。禍根は残っているとみて間違いありません。協力は……して貰えるかも知れないと思っています」

「ほぉ。なかなかの策士だな」


 王族の座るメインテーブルには人集りが出来ていて、挨拶は順番待ちだった。

 雑談をしつつ、その時を待つ。

 中央にリアム、右にジョセフとフィアメッタ、左側にはシーラとイアンが座っている。

 一人一人に丁寧に対応しているようで、なかなか順番は回ってこない。

 果たして王族方がどんな反応を示すのか――、佑の胃はまたキリキリと音を出して痛み始めた。

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