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君の世界を巡る旅  作者: 天崎 剣
【3】竜樹の行方

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1. エナの町

 町が近付くに連れ、真っ白な景色の中に街道が姿を現してくる。雪がしっかり踏み固められて出来た道は、一本の太い道路のように町へと続いていく。

 スキアは徐々に速度を弱めた。佑はゆっくりと身体を起こし、町の全景を眺めた。

 大きな町だとリディアは言っていたが、そうでもないと佑は思った。向こうで言うところの村か、それよりももっと小さい。集落が幾つか集まったくらいの、小さな町に見えた。

 町の入り口の手前で、スキアの背から下りる。荷物と鞍を外すと、スキアは逆再生するように人間の姿になった。

 長い距離、人間二人を背中に乗せて駆け抜けたというのに、スキアはまだまだ元気だった。


「ほっしにっく、ほっしにっく、ほっしにっく」


 よだれを垂らしながら、荷物の一部を背負って大はしゃぎで雪の上を駆け回っている。


「リディア、早く早く! 一番最初に肉買ってね」

「分かった分かった」


 ちょっと前まで深刻な話をしてトーンダウンしていたリディアだったが、そんな気配は微塵も感じない。少年姿のスキアの前では、保護者のように朗らかな顔を見せている。

 佑も泣きすぎて顔は赤かったが、冷たい風に当たって赤いのだと勘違いされる程度には赤みが引いていた。

 白壁に木の柱と貫が格子状に走る家が軒を連ねる街並みは、佑には刺激的だった。映画やゲームの中でしか見ないような、幻想的な光景に思えた。

 町に入ると、少しずつ地面に石畳が見えてくる。どうやらこの界隈は石畳で舗装してあるらしい。日中で日が差しているから表面の凸凹がハッキリ見えている。それに、店の前はどこもかしこもしっかりと雪が掻かれていた。そうした街並みですら、普段見慣れた景色とは違って、妙にワクワクしてしまう。

 周囲を見渡す限り、電気は通っていない。やはり文明レベルは中世くらい。かなりハードな環境だ。

 異世界の言葉で書かれた看板をチラチラと見ながら、佑はリディアとスキアに遅れないよう、後ろに付いて歩いた。






 *






「値段がまた上がったな」


 相当な量の干し肉や燻製肉を買い込んだあと、リディアは肉屋の店主にボソッと言った。

 肉屋は「すまんね」と肩をすくめて、種類ごとに木の薄皮で包んだ肉をリディアに渡した。

 品物とは別に、削ぎ取った肉の端っこを肉屋がスキアに差し出している。スキアはしっぽを大きく振って、「やったぁ!」と、肉を貰い、パクリと口に頬張って満足そうな顔をしていた。


「前は同じ銀貨十枚でも、もう少し多く渡せたんだけどねぇ。リディアは常連だし、まけたいところではあるが、なかなか難しい。こっちも商売なんでね」

「いや、無理は言わんよ。色は付けて貰っているようだし。それより、最近はどうだ。変わったことはなかったか」


 店内には佑達三人と肉屋の店主のみ。

 肉屋はそれでも辺りをチラチラ見るようにしてから、ぐっと身体を屈めて、リディアの耳元でコソコソ話し始めた。


「そいつ、誰だ」

「そいつ?」

「その、連れの男だよ。スキアは知ってる。使い魔だ。そうじゃなくて、後ろの黒髪の」

「ああ、タスクか。昨晩、スキアが拾ったんだ。かの地からの迷い人さ」

「かの地?」


 肉屋はギョッとして佑を見た。


「どおりで妙な格好をしてると思った」

「見ての通り、悪いヤツじゃない。息子を追って、ルミールにうっかり迷い込んだらしい」

「息子?」

「こいつと似た妙な格好をした少年だ。もし知っていたら教えておくれ」


 肉屋はリディアのそばからわざわざ佑の隣までやってきて、ジロジロと顔を覗き込んでくる。

 佑はギョッとして少し仰け反った。


「ふぅん」


 眉を上下させてわざとらしく品定めする肉屋に、佑は冷や汗をかいた。


「まぁ、見つけたら教えるよ」

「頼む。とりあえず、買い出しして、ギルドに顔を出してみる」

「そういや、王国の話だが」


 肉屋は再びリディアのそばに動いて、こっそりと耳打ちするように囁いた。


「近頃、あちこちに兵を派遣してるって話だ。まだここまでは来ていないが、何かを探してるふうだったって噂を聞いた。リディアも気を付けろよ」

「……なるほど。忠告ありがとう。情報料代わりに、受け取ってくれ」


 リディアはちらりと肉屋を見て、柔らかく鞣した皮に包まれた何かをそっと渡した。「すまんね」と肉屋はそれを懐に入れる。

 いつもの事なのだろうか。佑はなるべく気にしない素振りをして、静かに息を飲んだ。






 *






 肉屋を出て、町の中を進む。

 保存の効く乾パンや芋、根菜中心に食料を買い込む。簡単な調理道具は荷物の中に入っているらしい。追加で少し大きな手鍋を買い足す。


「その格好もどうにかせねばな」


 ダウンジャケットだけでは心許ないと、リディアは佑を防具屋に引っ張った。


「スキアはどうする」


 リディアが訊くと、スキアは首を横に振った。


「行かない。俺、外で肉食べてる」


 リディアに貰った肉の包みから一枚一枚大事そうに肉を剥がして口に入れ、存分に味わっている。

 外で待つようにとスキアに声を掛けたあと、リディアと佑は防具屋の中に入っていった。

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