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君の世界を巡る旅  作者: 天崎 剣
【15】精霊石に誓う

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1. 礼拝堂

 最悪の事態を予想しての協議はギリギリまで続いた。一度離宮から離れてしまっては時間が勿体ないと、会合の参加者は離宮から直接儀式に向かう旨、各国の泊まる宿へと伝令を走らせてもらう。

 昼食も急遽離宮で用意され、会合メンバーの中だけで秘密を保持することを徹底しようという運びになった。

 リアムは儀式の準備のために早々に離席したが、会合に臨む前とは全く顔つきが変わっていた。


「確かに、疑わないことは正しいですが、言いなりになってばかりではいけなかった。私は今日こそ正式に精霊王に認められ、真の王としてこの国を治めたいと思います」


 爽やかな笑顔は、各国の要人達の心にも涼やかな風を通してくれた。






 *






 協議の最中、アーネストについて更なる情報を得る。


「ボルドリー子爵家は今や、アラガルド王国の多くの貴族と親戚関係にあります」


 ジョセフが神妙な面持ちでそう語ってくれた。


「アーネストには十人の息子と八人の娘がいます。正妻と二人の妾に、次々に産ませたようです。子沢山で子煩悩でも有名なのですよ、彼は」

「……まるでハプスブルク家ですね」


 佑が呟くと、竜樹がハハハと乾いた笑いを零した。


「何だそのハプ……?」


 セイス辺境伯が首を傾げるので、竜樹が「それはですね」と解説した。


「かの地のある地域を何百年にもわたって支配していた一族なんですよ。皇帝や王の座に長らく君臨していたんです。確か子どもが多くて、有力な貴族や王家と繋がって……みたいな感じで。今のボルドリー子爵家と似てる」

「ハプスブルク家の支配は六百五十年も続いたそうです。ある程度学のある者ならばこのことは知っていて当然ですから、真似たのでは……と、そんな気がしますね」

「――かの地に未練などなさそうだな。寧ろ、タスクの言うように、ボルドリー帝国でも作ろうとしているのではと疑ってしまう」


 エドウィンは頭を抱え、ため息をついた。


「アーネストは自分の子ども達まで使って……。執着心の凄まじさに驚かされるな……」

「ええ、全くですよ……」


 佑は乱れた髪を撫で付けて、小さく息を吐いた。






 *






 精霊石の安置された王宮礼拝堂に佑達がやってきたのは、本番まで数える程になってからだった。

 ガリム公国の席には既にライオネルとロザリー、リディアが座っていた。


「遅い。何があった」


 リディアはじっとりとした目を佑と竜樹に向けたのだが、佑は「まぁ、色々です」とはぐらかすに留めた。

 同じように他の国の者達も、遅いと文句を言われているのが聞こえてきて、佑は思わず苦笑いしてしまった。

 礼拝堂内部はかなり広く、天井も高かった。祭壇の後ろには美しいステンドグラスがあり、五つの属性を表す神獣達を模した彫刻が柱に刻まれていた。ステンドグラスの色とりどりのガラスを通して降り注ぐ日の光が、祭壇中央の一抱えもある大きな石――精霊石を照らしている。

 石の表面は虹色に輝いていた。水晶か何かの結晶のようにも見えるが、またそれとも違う。虹色に銀が混じり、角度によって様々に煌めいて見えるのだ。透き通っているようでもあり、そうでもないようにも見える。


「リリーさんに聞いていたとおり、凄く綺麗な石ですね。神秘的というか……、捉えどころのない美しさを持っているというか……」

「そうであろう。美しさはもとより、そこに秘められた魔力は膨大で、直接触れてはならないとされている。だから台座ごと、普段は宝物庫の奥に何重にも鍵を掛けて厳重に保管してあるのだ」


 整然と並べられた椅子は、ザッと見ても百五十席以上ある。王家は最前列で、直ぐ後ろにはアラガルド王国の大臣や騎士団の役職者が並ぶ。佑達はその後ろだ。

 事前情報通り、台座には四人の兵士が守りに就いている。

 扉という扉の、内側と外側には二人ずつ兵士が立っていて、警備も抜かりなく見えた。

 参列者には儀礼用の帯剣が許され、佑達も例に漏れず細身の装飾の細かな剣を腰に差していた。女性は落ち着いたデザインのドレスに宝石やアクセサリーで着飾っている。

 どこを見ても美しく洗練されていて、見る者を楽しませる。

 この場に紗良がいないことが、本当に悔やまれるなと、また佑は心の中で呟いた。


「スキアは? お留守番ですか?」


 佑が尋ねると、リディアは「いや」と答えた。


「何があるか分からん。公国の騎兵と共に待機するよう伝えてある。何もなければそれでいい」


 リディアの横顔はいつもより険しかった。

 佑はギュッと唇を噛んで、今度は反対側に座る竜樹の方に目を向けた。


「緊張してるか」


 佑が言うと、竜樹は「まあね」と表情を崩さずに小さく言った。


「あとはなるようになれ、だよ」

「だな」


 晩餐会でも音楽を披露した王宮音楽団が礼拝堂の片隅で美しい調べを奏で始めた。まるで音楽ホールみたいに美しい音色が増幅して聞こえてくるのを、佑は心地よく聞いていた。

 それからしばらくして、司祭と思しき白い法衣の男性が祭壇の手前に現れる。

 儀式が始まるようだ。

 それまでのざわめきが消え、礼拝堂は静かさに支配されていった。

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