生意気な甥っ子を量子力学の知識でマウント取ろうとしたら逆に論破されそうになったのでぶん殴ってやった
俺はニート。
ここ十年近く働いていない。
毎年、年末年始の時期になるとクソ兄貴が自分の家族を連れて帰省してくる。
クソ兄貴の息子がこれまたクソ生意気で、ことあるごとに俺を馬鹿にしてくるのだ。
さすがにムカつくのでネットで手に入れた知識で論破してやることにした。
「おい、量子力学って知ってるか?
知らないだろーー-!」
「え? 知ってるけど?」
クソ生意気なクソ甥はまだ小学生。
量子力学なんて知ってるはずないだろ。
「ほーん、じゃぁ話してみろよ。
量子力学ってなに?」
「一言では説明できないよねぇ。
とりあえず、二重スリットの実験って知ってる?」
「え? 二重スリット?」
俺の反応を見て、クソ甥はわざとらしくため息をついて、肩をすくめながらやれやれと頭をふる。
「あのさぁ……基本中の基本だよ?
もしかしてだけど。
漫画とかでシュレーディンガーの猫の話を知って、
それでマウント取ろうとしてる?」
「え? え?」
「シュレーディンガーは波動関数の方が有名だよ?
猫の思考実験なんておまけみたいなものだよ。
そんなことも知ららないの?」
「うっ……うるせえええええええええええ!」
思わずひっぱたいてしまった。
「いたっい……うわああああああああああん!
ままあああああああああああああ!」
クソ甥はギャン泣きしてクソ兄貴のクソ嫁に泣きつく。
あぶねぇ。
危うく論破されるところだったぜ。
ふぅ……これで一件落着だ!
オジサンは僕を殴ったことによって、親戚一同から総スカンをくらい、本格的に引きこもり生活をスタートさせた。
あれ以来、自分の部屋に引きこもって出て来なくなったと言う。
オジサンの部屋は固く閉ざされており、中の様子をうかがい知ることはできない。
観測しない限り、オジサンがどうなっているのか誰も分からない。
死んでいるのかどうかも不明。
もし、扉を開けてオジサンが死んでいるのを発見したら、それはそれで大問題。
扉を開けなければオジサンの死は観測されない。
オジサンはシュレーディンガーの猫ならぬ、シュレーディンガーのヒキニートとなってしまったのだ。
誰かがオジサンの死を観測しない限り、その死は確定しない。
オジサンが生きている世界線と死んでしまった世界線が、閉ざされた扉の向こうで混在し続けるのだ。
僕たちが観測しない限り永遠に。
お読みいただきありがとうございました!
感想を頂けますと、大変うれしいです!