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第55話 嘘

 天使がモジモジと腕を抱えながら問いかけてくる。


「一つ大事なことなのですが、エッチの時も無表情の方が良いでしょうか……? 私も初めてなので、どちらかと言えば感情を露わにしたいのですが。その方が結人さんも興奮できると思いますし……」

「知らねぇよ!!」

「では、結人さんの反応を見て決めます」

「もう帰ってくれって反応だ!!」

「安心してください。エッチなことくらい、朝飯前ですから」


 そう言った天使が、徐にブラウスを脱ぎ捨てた。


 さっき見たショーツとお揃いの、純白のブラジャーが露わになる。それに見蕩れている内にスカートのファスナーも下ろされ――天使は目の前で下着姿になった。優美な肌と真っ白な下着、そして艶のある黒髪が織りなすコントラストがとても綺麗だ。


 思わず呆気に取られてまじまじと見つめてしまったが、このままでは本当にまずい。


 なんとか抵抗すべく力を振り絞って右腕を上げるも、天使の左腕に易々と手首を掴まれた。そのまま自身の方へ引き寄せられ、掌を胸に押しつけられる。


「なっ……!!」


 ブラを上にずらしながら手を滑り込ませられ、乳房と小さい突起物の感触が……。


「神羅様よりは小さいですが……。どうですか? 気持ちいいですか?」

「だめだ……やめろって……」


 反応しないように堪えていると、そのまま前のめりになった天使が右手で俺のシャツを首元まで一気に捲ってきた。右掌が下腹部を優しく撫で、みぞおちにキスをしてくる。ソフトな口づけだったが、直ぐに横に逸れて左胸を舐められた。


 快楽と羞恥に顔を歪めていると、天使が微笑みを見せた。


 重なるように身体を密着させ、首筋を舐めながら顔を近づけてくる。気がつけばスウェットのズボンの中に天使の小さな手が侵入していた。股間を上下に摩ってくる。


 甘い匂いに包まれ、快楽が全身を駆け巡っていく。

 我慢の限界に達しそうだ。


 吐息が顔にかかる距離で見つめ合い、天使が言った。


「我慢しないでください。楽しみましょう」


 天使が瞼を閉じ、ゆっくりと色艶のある唇を近づけてくる。

 きっとキスまでしたら全部吹っ切れて、本当に歯止めがきかなくなる。


「それが、神羅様のためですから」


 唇が触れ合う直前、俺は言った。


「嘘だ」


 天使の動きが止まった。


「お前がこんなことをして、本当に神羅が喜ぶわけないだろうが」

「…………」


 ゆっくりと、天使が瞼を開いた。

 アメジストのような眼に零距離で見つめられる。


「これが神羅様のためです。私を抱けば結人さんは自責の念から彼女を愛してくれます」

「お前も、神羅に操られているのか? 自分の意思はないのか?」

「……そんなことありません。私は自分の考えで動いています」

「考えられるなら、これが間違った手段だって――」

「正論なんて要りません。私には、こんなことしかできないから……。私は……結人さんに神羅ちゃんを愛してもらうためなら、何だってします……!!」


 これまでに無い程の強い口調で、言葉を遮られた。

 常にクールで完璧メイドをこなしている天使らしくない。


 そこで、もう一つの違和感の正体に気がついた。


「神羅ちゃん?」

「い、今のは……その……」


 天使が焦りを露わに、震えた小声を出した。

 光沢を持つパープル色の目をぱちつかせ、視線を迷子にさせている。


 今しかない。

 そう思った俺は、薬で不自由にされた全身に力を込めた。


 天使の華奢な両肩を押し戻すように、気合いで上半身を起き上がらせる。ベッドの上で対面座位の形になり、見上げてくる天使の目を正面から見据えて告げた。


「全部、話してくれ。頼む」


 なんとか体勢は変えることができたが、虚脱状態なのには変わりない。もし天使がその気になれば、俺は抵抗できずに押し倒されてしまうだろう。


 しかし天使はそうはせず、柔順に小さく頷いた。

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