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第30話 良いこと

 流石にそれは……心の準備が……。

 だが今更逃げるのは男として失格だし……。


「ほ、本当にヤるの? お、俺は良いけど……それで愛されてるって満足できるのか? てか、天使に見られながらヤるの? ダメ出しされる感じ……?」


 そういうプレイもなしではない気もするが、初回からは流石に荷が重い。


「いいえ、天使も一緒にやるのよ」

「一緒に!?」


 衝撃を受けた。

 まさかの返答だったが、嬉しい誤算だ。嬉しすぎる誤算だ。


「当然でしょ。二人より三人でやった方が楽しいに決まってるし」

「え……? 神羅も未経験って言ってなかったか?」

「三人ではやったことないけど、今日に備えて二人では何度もやったわ」


 いつの間にか、神羅は大人の階段を上っていたらしい。


 …………クソ。それを想像すると悔しいし悲しいし、無性に腹が立つ。

 この感情はなんだ。

 別に神羅とは恋人でもなんでもないのに、許せなくて気が狂いそうだ。


 その話を聞いて、ベッドに腰掛ける神羅が余計に色っぽく見えてきた。あの顔を、胸を、体を好きにした人間がこの世に存在するだなんて信じられない。


 俺は拳を強く握りしめ、奥歯を噛みしめた。


「他人が嫌いって言ってたくせに、誰とヤったんだよ」


 僅かな怒りを込めて尋ねると、神羅は髪を耳にかけながら恥ずかしそうに目を逸らした。


「て、天使よ……。悪い?」

「天使!? 天使とヤったのか!?」

「べ、別に、変なことじゃないでしょ!!」

「まぁ……変ではないな……。友達同士、そういうフレンドってのもあるらしいし……」

「…………天使はメイドで、友達じゃないわ」

「そ、そうだったな」


 昨今の性事情なら、神羅と天使の幼馴染み関係も考慮すれば、普通……なのか?


 フレンドでないとすれば主従関係ゆえのご奉仕か? 神羅様を女として悦ばせるなんて朝飯前です的な、そんな感じ?

 それなら悔しくもないし、むしろかなり興奮するけれど。


 もう分からねぇよ、俺には。


「本当は家族でやったりするらしいけど、私はそういう経験がなかったから」

「家族で!? それは流石にヤらないだろ普通は!!」

「でも小学生の時、同級生の女子がパパとママと一緒に毎週やってるって言ってたわよ?」

「どこの家庭だ!! 通報して社会的に抹殺してやる!!」


 小学生の時って……。そんな変態親父を見逃しておくことはできない。


 正義に燃える俺を見て、神羅が首を傾げた。


「抹殺? なんで? 何の話してるの?」

「え……? それは……だから……エッチしようって話じゃないの?」


 頬を掻いて訊くと、神羅が瞬く間に顔を真っ赤に染め上げ、口をわなわなと震わせた。


「ち、違うわよ!! なんでそうなんのよ!!」

「だって、良いことするって言ってたじゃん。男女で良いことって言ったら……なぁ?」

「結人のアホ!! スケベ!! 変態!! なんでそういう方向にしか考えられないわけっ!!」


 顔面を沸騰させて叫んだ神羅が、児童小説から生まれた有名キャラクターである黄色いクマ君の大きな縫い包みを投げた。

 飛んできて俺の顔面にボフンと直撃。

 床へ落ちる前にキャッチ。


 投げ返そうかと思ったが、首元にリボンをつけたクマ君が可哀想なのでやめておく。


「意味深なこと言って部屋に連れてくるからだろ。可愛い女子に部屋に招かれてそういう想像をしない男子なんていないんだよ。勘違いさせた神羅が悪い」


 言うと、神羅は「か、可愛いって……でも……」と何やらブツブツ呟き、悩ましそうに俺をチラチラ見てきた。

 指を絡ませて弄りながら上目遣いを向けられる。


「なら……エ、エッチしてあげれば……愛してくれる……?」

「………………」


 この少女は、一体どこまで愛に飢えているんだ。


「いや、冗談だって。変なこと言って悪かった」


 俺はクマ君の頭を撫でながら苦笑して答えた。

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