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前提:愛とは

 愛とは何なのだろうか?

 全てを憎み、愛の無い世界に絶望していた時期、考えた事がある。


 心身ともに個々の境界を越えて共有しあう価値観?

 特別な力を持ち、時間も空間も生死も越える感情?

 機械では観測できなくとも、それは確かに存在しているのか?


 答えの出せない曖昧な概念をそれでも定義すべく、古代ギリシアでは愛を恋愛、友愛、家族愛、無償の愛の四つに大別していたらしい。

 数千年前から哲学的思想を考え抜いて結論を出した事実には脱帽だが、やはり綺麗事で塗り固められた太古の価値観と揶揄せざるを得ない。そこには最も大事で唯一無二の愛が抜けているから。


 自己愛だ。


 この世で本当に大切にすべき愛は、自己愛だけだ。

 結局のところ、人間は自分だけを寵愛してしまう生き物だから。


 他人への愛などというのは、種の繁栄のために遺伝子に刻まれた原始的欲求に過ぎない。自己の欲望を正当化するために他人へ配慮しているだけで、愛は後付けの綺麗事でしかない。


 人間は自分が一番大切で、愛はIだ。

 世界には愛が満ちているなんてのは欺瞞の美辞麗句。


 もしも本当に世界が愛で満ちていたのなら――

 小中学生時代の俺に、虐めと闘う辛い日々は訪れなかったはずだから。

 誰よりも大切な幼馴染みの少女と、離れ離れになることはなかったはずだから。

 暗闇の中に置き去りにされて、過去を悔やみ自分を憎む日々にはならなかったはずだから。


 愛と憎しみは表裏一体。

 利己的に抱いた他人への愛が残すのは、それを失った時の悲しみと憎しみだけだ。

 自己満足で他人を愛したところで、結局は最も大切な自身の心を苦しめてしまうだけだ。


 そう知ったからこそ、俺は決めたんだ。


 もう二度と、他人を愛さないと。

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