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第32話 復刻バケツの悪魔(25話振り3回目)

 暗殺集団幽鬼(スペクター)の話を聞いたバティン(とドゥルガ)はギルド長室を後にする。

 部屋の外で待っていたクレアとレミエルは戻ってきたバティンに話しかけた。


「バティンさん、何か特別な依頼か何かですか? 暗殺者がどうこう言ってましたけど」

「ふむ、そう言う輩がいるので気を付けろと言う話だ」

「へぇ、怖いですね」


 と、言う割にはそこまで怖がってる風には見えないクレアにドゥルガが言う。


「クレア、アンタあんまり怖くないみたいね? 暗殺者よ暗殺者」

「いや、だってバティンさん居ますもん。ねっ?」

「当然であるな」


 バティンがいるから安心だと言うクレア。

 それはそうなのだが、バティン自身が暗殺者などよりも恐ろしい存在である事は頭から抜けている。


「さて、バティン殿。これからどうする? すぐにパルテナへ向かうか?」

「ふむ、直ぐに向かっても良いのだが……せっかくであるから、この国の名所などを見て行きたいところではあるな」

「この国で有名と言えば、闘技が盛んではあるが。どうだろうか?」



 ―――


 レミエルの提案によりバティン達が訪れたのはナーリアの街外れにある大きな円形の建物。その建物の周りの土地には地面に杭が打ちつけられ、その杭をロープで囲い五角形の仕切りがされたもの数個存在している。

 その仕切りの中では大人2人が殴り合いをしていた。


「うわぁ……なんか皆凄い身体の人達ばかりですね……」

「己の肉体のみで闘い、降参か戦闘不能と見做された場合に決着が着く。クレア殿は闘技を見るのは初めてか?」

「はい、縁が無かったとこなので。皆さん強そうな人ばかりですね」

「五角形の仕切り、舞台と言うのだが。あの建物、グラップと言うのだが、そこの外で闘ってるのは下級の闘技者だ。

 強い闘技者のみがグラップ内の舞台に上がれる仕組みになっている。

 あの建物内での闘いは名誉な事で、皆、そこを目指して必死に研鑽を積んでいるのさ」

「レミエル、アンタ随分詳しいのね」


 レミエルは闘技について説明しているが、妙に詳しい。

 ドゥルガは単純に感想を述べただけなのだが、レミエルは隠し事がバレたかのように恥ずかしがる。

 急に照れ始めたレミエルにクレアが疑問の顔で見つめると、レミエルは観念したかの様に喋り出す。


「実は……私も若い頃、修行のためにここで闘技者をやっていた事があってな……それで詳しいのだ」

「ええっ!? レミエルさん闘技者だったんですか? それじゃこんなムキムキの人達と殴り合いしてたんですか?」

「ああ……合法的に人を殴……んんっ、聖騎士になるための修行として利用していたのだ」


 今、正義の味方の象徴である聖騎士から聞こえてはいけない単語が出てきたような気がしたが、ちょっと危ない気配がしたのでクレアは話題を変える事にした。


「そ、それでレミエルさんはあの建物の中で闘った事があるんですか?」

「勿論だとも。中々の強者もいてな、良い修行になったものさ」

「レミエル、アンタ野蛮ね。そんなのが聖騎士で良いのかしら、アストに言ってやろ」


 確かにレミエル程の強さであれば、そこらの闘技者は相手にならないだろう。選ばれた闘技者のみが闘えるという建物内の舞台に上がるのも納得できる。

 当の本人は「ドゥルガ様、アストライア様に報告はご勘弁を……」と小さな妖精にペコペコとしているが。


「……あれ? そう言えばバティンさん何処行ったんでしょ?」

「む、いつの間にか居ないな……」

「どうせアイツは何か見つけてフラフラ動いたんでしょ」


 3人がバティンの行方を探して周りを見渡していると、外にある1つの舞台から声がする。


「さぁ! 飛び入りで挑戦者が現れました!! お名前は?」

「バティンである」

「そのバケツは何か意味があるんですかっ? あと、その角?とか翼?は本物ですかっ?」

「気にするな、我の衣装だと思うが良い」

「わかりましたっ! さぁ、グラップは目前!現在10連勝中のモーブに対するは、飛び入りで挑戦の謎のバケツを被ったバティン選手!! 果たしてどちらが勝つのか!?」


 あの悪魔、やりやがった。

 クレアはそう思った、最近割とまともな行動が多かったので人間界に慣れたのかと油断していた。

 ちょっと目を離すとすぐにこれである。


「クレア殿、バティン殿が闘技に参加しているように聞こえるのだが……不味いのではないか?」

「不味いです。相手がミンチになります」

「何っ!? 早く止めないと!!」


 急いで声のする舞台へ駆け付けた時には既に遅く、開始の合図が鳴っていた。


「始めっ!!」

「なんだぁ、あの変なバケツ野郎は……飛び入りらしいが」

「はん、あんな奴じゃモーブには勝てねぇだろ。賭けになんねぇよ」

「だな。バケツ野郎は血塗れになっちまうぜ」


 舞台を見ている観客は言いたい放題である。

 違うの! あのバケツ野郎は危険なの! モーブさん逃げて!!

 だが、クレアとレミエルの必死の祈りは女神に届かない。


「イケー! バティンー! アンタの力を見せてやれー!」


 いや、女神には届いていたかもしれないが、悲しい事にその女神はクレア達を見放した。現実は非常である。


「オイ、バケツ野郎! テメェなんかがこのモーブ様の前に立とうなんて10年早いんだよ!」


 モーブは非常大柄でバティンよりも頭1つ大きく、横幅は倍以上。その巨大を活かして肩からバティンに体当たりをかましてきた。

 巨大に見合わず俊敏な動きで迫るモーブは、まるで馬車が突っ込んできたかの様な迫力でバティンに襲いかかる。


 激突。

 周囲の観客はバティンが吹き飛ばされると確信していた。

 巨大な物体が叩き付けられたような重低音を響かせる。

 おいおい、あのバケツ死んだんじゃねぇ?と思っていた観客は舞台を見て大口を開けて固まった。


 舞台に立っていたのはバティン1人。

 モーブは? と誰もが思った時、遅れて届く破壊音。

 音が鳴った方を見れば、モーブと思われる人が建物の外壁に埋め込まれていた。


 慌てて駆け寄った救護班は白目をむいて気絶するモーブを発見する。何箇所か骨折はしているだろうが、命に別状は無さそうだ。


「しょ……勝者、バケツの闘技者バティン……」

「うむ」


 うむ。じゃねぇ! あわや大惨事だよ!

 人が死ななくてホッとしたクレアとレミエルだが、次のバティンの言葉に頭を抱えてしまう。


「さぁ、我は後何回闘えばあそこの建物内で勝負ができるのだ?」




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