目隠しをする博士と助手の話
「ふふふ、だーれだ!」
僕と博士しかいない研究室では、今日もそんな博士の声が響く。
「……ちょっといきなり視界を塞がないでくださいよ。作業中なんですけど。」
「だーれだ!」
「聞いてますか?いい加減、この手をどかしてもらいたいんですが。」
「だーれだ!」
あ、これ、ちゃんと反応しないといけないやつだ……
「はぁー、まったく……。……博士でしょ。と言うか博士じゃなかったら逆に怖いんですけどね。」
「ブッブー!博士じゃないよ。」
「え?その声はどう考えても博士でしょ。嘘つかないでくださいよ。」
「その博士の前に付けないといけない言葉があるでしょ?」
「……うーん、ポンコツか面倒くさい、それかバカ。」
「ちっがーう!『可愛い』でしょうが!と言うかそこまで私、ひどくなくない?」
「結構ヤバいとは思いますけどね……、はぁ、それじゃあ、可愛い博士、手をどかしてください。」
「仕方ないな。君がそこまで言ってくれるのならどかしてあげよう。」
そう言って、博士は僕の視界を覆っていた手をどかす。
はぁ、やっと作業が再開できるよ。
「……と言うかいつも言っていますが、自分のことを自分で可愛いというのは如何なものかと。」
「だって、誰も言ってくれないんだもん。それだったら、自分で言うしか無くない?」
「それ、言ってて悲しくならないんですか?」
「別に?事実だもんね!」
博士はまあまあある胸を張りながら、そう言い放つ。
「……さいですか。」
「まぁ、これも君が私のことを『可愛い』って言ってくれたら解決することなんだけどね。」
「さぁ、実験の続きをやっていきましょうかね。」
「え、無視?そこまで露骨に無視されたら、私泣いちゃうよ?いい大人が泣いちゃうよ?」
「泣くなら好きにしてくださいよ。……と言うか、いつまでそこに突っ立っているんですか。早く実験をして下さいよ。」
「うぅ、助手君が冷たい。-273℃並みに冷たい。」
「誰が絶対零度ですか。分かりづらいな。もういいから、そんな無駄口叩いてないで、やりますよ。」
「はーい……」
そうして、若干しゅんとしている博士と共に実験を再開していくのだった。
皆さんこんにちわ 御厨カイトです。
今回は「目隠しをする博士と助手の話」を読んでいただきありがとうございます。
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