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キミは死に何を想う  作者: 椿 双樹
1/2

別れ

その人は___ただひたすらに___美しかった。

外見的な意味ではなく___いや、

その雲ひとつない青空のような髪や___

ルビーのような瞳も___

確かに美しい___


ただ___それ以上に___

手の動き___

姿勢___

ひとつひとつの所作が____

ただ___美しかった___




大好きなおばあちゃんが死んだ。

年齢の割には奇麗で、お風呂が好きで、よく大好きな魚の煮込みを作ってくれた優しい人だった。

けれど数ヵ月前に内臓の病に倒れてからは、みるみるうちに痩せこけていき、こまめに手入れしていた髪もボサボサで、年相応...いや10歳は老けて見えるような姿で亡くなった。

亡くなったと訃報を聞かされた昨日はずっと部屋で泣いていた。

ろくに眠ることもせず泣いていたので、まともな思考力なんて残っておらず、ただ目の前の「美しい女性」の「美しい動き」を虚ろな眼で教会の端から眺めていた。


「ご納棺はこれで終了となります。どうぞ皆さまお近くにお寄りください。」


その美しい女性の声にぼんやりとしていた意識が引き戻される。

棺の目の前では母が涙をハンカチで拭い、父は母の肩を抱きながら棺の中をじっと見つめていた。


「ウィグ。おばあちゃんの最後の顔を見てあげて」


震えた声で母が僕を呼ぶ。

おぼつかない足どりで棺まで歩いていく。棺の前に着き、ゆっくりと中を覗き込むと...


「...っ!」


そこにいたのは、白を基調にした飾りに囲まれた元気だった頃のおばあちゃんだった。

ボサボサだった髪は綺麗に整えられ、瘦せこけていた頬はふっくらとしていた。紫色だった唇と真っ白だった顔には血色が戻っていた。

本当にただ寝ているような姿がそこにあった。


「おばあちゃん...おばあちゃんっ!...うぁぁぁぁあああ!」


気付けばおばあちゃんの体に抱きつき大声で泣いていた。

涙なんか昨日流しきったと思っていたけれど、目からは大粒の涙がとめどなく溢れていた...


その光景を傍で黙って見ていた美しい女性は、近くにいた司祭様に


「あとはお願いします」


そう一言告げると、棺に頭を下げ、静かに立ち去るのだった___












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