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捏造の王国

捏造の王国 その26 災害当日の公邸での出来事 アベノ総理台風当日お籠りの真相

作者: 天城冴

ニホンに多大な被害をもたらしたスーパー台風。被災地への対応に追われる官邸の面々だったが、アベノ総理の台風直撃当日の様子をニシニシムラ副長官が尋ねた途端、ガース長官が挙動不審になる。実はガース長官は当日アベノ総理の側にいた…

10月の終わりに近づき、欧米かぶれのハロウィンを意味もわからず、なんでもいいや面白いんだ、お祭りだと騒ぐニホン国民。その騒ぎのなか、ここ公邸でも災害後の復旧、対策にガース長官らは気ぜわしく動いていた。

「ああ、もうすぐ新茶の季節、いや茶道の正月、茶の封を切るときがくるという。いつもは健康茶だが、今年こそ、本格的なお茶会に参加し、侘び寂びの世界に入って現世の憂鬱から離れるつもりだったのに」

現世から離れるどころか、現世の災厄に対処せねばならぬ我が身を嘆くガース長官。

「しかし、長官、今は臨時国会の最中ですし、台風被害の対応もありますし」

「ああ、そうだな、ニシニシムラ君。国会の答弁も考えねばならないし」

「この間の社会保障費の抑制ですが、“消費税増税したくせに、社会保障費を削るとは!年金他社会保障充実のための税じゃないのか!”とのことで。災害に隠れて何とかなるかと思ったんですが」

「その件は、社会保障費の増え方が予測以上とかなんとか理屈をつけてやりすごせば。どうせマンゲツしか追及しないだろうし」

「その、ヨネダ議員が“子供手当を全部無くして防衛費にあてろ”発言は」

「それか、自分でなんとかさせろ。もう原発マネーで足がついてるからな、あの女。次のネトキョクウのアイドルはミズダにするか。アレはどうもキツすぎるが仕方がない」

「それと台風当日に総理の動向」

ニシニシムラ副長官の言葉にガース長官の顔色が変わった。

「な、なんだ、言っているのは共産ニッポンのシイノかミンミン党のエダノンかレンポーか!」

さきほどまでの落ち着いた様子はどこへやら、動揺して叫ぶガース長官。ニシニシムラ副長官はポカンとした顔で

「そ、そのツィッターで話題になっているようですが。“なんで目立ちたがりで恰好つけるアベノ総理が陣頭指揮とかとらなかったんだ?”とか“前の台風のとき対応遅れで非難されたから、今度はINUHKに最高責任者らしく動いてんの撮らせると思ったのに”とかで、そろそろ誰か質問も」

「そ、それはどうにか断れないだろうか。いや、ダメか。待機してた、では、やはり無理なのか」

うろたえた様子のガース長官。その様子をみて首をかしげるニシニシムラ副長官。

「長官、あのう、何か不味いことでもあるんでしょうか、台風当日のアベノ総理のことで」

図星をつかれて動揺したのか、ガース長官はさらに意味不明なことを言い出した。

「ああああ、こういうときに何故シモシモダ副長官が話に口をはさんだり、タニタニダ副長官がドアを開けて飛び込んでこないんだあ!」

「二人とも災害被害の対応に追われて、各省庁や大臣との連絡で走り回ってます。その、僕もそろそろ行かないと、被災地の首長との連絡がありまして」

「そ、そうか。では早く行きたまえニシニシムラ君。その件については何とか考えるから」

「は、はい」

納得のいかないという顔をしながらもニシニシムラ副長官は素直に部屋を出た。

 残されたガース長官は一人、先ほどの質問にたいして、どう答えようか悩んでいた。

「正直に言えればいいのだが、いや絶対に無理だ、あれが公になったら、アベノ総理の名誉が、地位が。ああ、くそ、気象予報士があんな予測をするから…」

とガース長官は台風がくる直前のことを思い出していた。

ガース長官の回想

台風直撃3日前

「し、史上最大級の台風だと、しかも関東に直撃だとお」

「落ち着いてください。アベノ総理、まだ予報です」

「し、しかし、この間と同じ、もっと強い台風だって、ガース長官」

「だからこそ、事前の対策をしなければならないと思いますが」

「そ、そうだなあ。でもあまり早く対策するのも、その、まだ直撃とは決まってないし」

「わかりました。では明日は」


台風直撃2日前

「わあああ、ありえないカテゴリーだって、ハリケーン最大級を超える台風だって!アメリカの記者がいってるぞ!」

「落ち着いてください、アベノ総理、あくまで予報です」

「で、でも衛星写真で見て確認してるんだろ」

「今はアメリカ国内、グアムあたりらしいですからな。現地の被害も相当なもので」

「で、でも直撃じゃないんだろ、離れていて、冠水したり、車が壊れたりしてるんだろ」

「しかし、まだ台風はニホンからは大分離れてますし、事前の対策はできますが。直撃しないかもしれないですが、高齢者などに避難をうながす、企業へ休業するよう指示をだすなどをすべきでは」

「ちょ、直撃かあ、しかし一斉休業とかになると、その辺は経済とかその、あまり早くても財界から文句がねえ」

「はあ、では、今日はこれで。明日からは公邸にいらっしゃってください」

「そ、そうだね。公邸は頑丈だし、大丈夫そうだからね」


台風直撃1日前

「ア、アベノ総理、なんで外食されたんですか!台風が接近してるんですよ!」

「お、怒るなよおヒック、ガース長官。台風がきちゃうと思うとお、ヒック。怖くて怖くてさあ。ちょっとお、飲んで勇気づけようと」

「落ち着いてください!アベノ総理。なんてことです!ワイン飲んで酔っぱらって怖さを誤魔化したっていうんですか!これから台風対策の会議を行うっていってらしたのに!ああ、今日も災害対策会議はできないのか、台風が来るのに、ど、どうしよう。今回こそ、事前対策をして国民の更なる支持を得ようと思ったのに」

「ちょ、長官もさあ、公邸に泊まるといいよ。だって、公邸はさ、ヒック。ニホンで一番頑丈な建物だろ、最高責任者の僕がいるところだからあ」


台風直撃当日

「ひいいい、こんなに風が吹いてるうう。わあああ、あそこ、水があんなにい!道路が川だあああ」

「落ちてついてください!アベノ総理。だから対策会議して、避難勧告をだそうといったのに」

「も、もう来てるよ、間に合わないよ」

「あれはトーカイ地方の映像です!首都に来るのはまだ10時間以上先です!」

「そんなに離れてるのに雨も風もこんなに強いのか!も、もう駄目だああ!」

「わああ、総理抱きつかないでください!く、苦しい」

「わああ、く、車が倒れたあ!自転車が宙をまわってるううう」

「アベノ総理、私に、抱き着いて、ふ、振り回さないでください、ああ目が回るう」


ガース長官は台風前後のアベノ総理の様子を思い出しながら、深いため息をつく。

「はあ、思い出しても情けないというか恥ずかしいというか。未曽有の台風が来るというから不安なのはわかるが、総理はニホンのトップ。こういうときこそ国民を災害から守るために最大限の努力をし、対策の指揮をとるはずなのに。酔いで不安を誤魔化したうえ、素面にかえったら台風の映像をみて怖くなって私にしがみつくとは」

アベノ総理とは対照的に、冷静にリーダーシップを発揮したのは、野党の党首たち。対策本部をもうけ情報を集め指示をだしたのは共産ニッポンの党首シイノたちなのだ。

「しかも、各都県の首長も早々にジエータイに救助要請を行うし、“最後の一人まで助ける”といかにも上に立つトップらしいことを言った知事もいるというのに」

恐怖のあまり自分に抱き着き振り回したアベノ総理の言動、それはトップにふさわしいどころではない。もし明らかになったら、すぐにでもアベノ総理はその座を追われかねないほど情けない、恥ずかしいものだった。

「はあ、あの様子では当日もし表にだしたら、どうなったか。しどろもどろで、いつも以上に言葉が不明瞭だったに違いない。きびきびと支持をだすシイノ氏のほうがよほど頼もしく見えるな。ひょっとしたらアベノ総理は私でなくシイノ氏に抱き着ついてしまったかもしれん」

不安におしつぶされそうになり野党党首に抱き着き、恐怖のあまり喚き散らす総理。そんなアベノ総理の様子を、ニホン国民が、いや世界の人々がみたらどう思うか。

「その座を追われるどころか、ニホン史上最悪、いや世界でもワースト10に入るトップといわれるだろう。そんな総理の親類縁者、友人知己、支持者全員、末代まで笑われ軽蔑されるに決まっている、むろん私も…」

世界中の物笑いの種となったアベノ総理を支えてきたのはガース長官。当然自分も笑い話の登場人物、嘲笑され最後に倒される悪役とみなされるに違いない。しかも子々孫々まで阿保総理の悪徳お間抜け腹心と語り継がれるのだ、ニホンだけでなく世界中に。

「そんな情けないことは絶対に避けたい。し、しかし本来は陣頭指揮をとるはずのトップが待機というのはおかしいし。ヤプーのコメント欄でバイトや支援者を総動員しているが、屁理屈しか言えんし(あいつ等も日ごろ威張っててイザという時、役に立たん同類だからなあ)。前日に飲んだワインのせいで二日酔いになって休んでいたとか言われるのも…。いや、震えて私にしがみついていたと知れるよりマシか。緊急事態条項を通す策だともいわれているが、激甚災害に対応するなら災害対策基本法がすでにあるのだ。だいたい総理のおじい様ギジダ議員は以前の台風の時、早速視察に出た上、災害対策基本法の成立にかかわってるから、理由としてはちと弱いし…」

知られたら、穴に入って出てこれない恥ずかしすぎる秘密を守るため、どう言い訳しようかガース長官は悩み続けた。


どこぞの国のトップも台風直撃当日は指揮もとらずに官邸にこもったままだったそうですが、アベノ総理のようなお振舞いはなさってないと思いたいですね(まあ、日ごろ目立ちたがりで威張り散らす人ほど、災害時は震えて隅にすわってラジオに噛り付いていたままで、全く役に立たなかったりするのですが)。

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