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第九節 SIDE-アレク-

「えぇ。科学に不可能はありません!!」


 へーカガクってすごいんだなー(棒)


 ミワさんが異世界の人だってのはすごくびっくりしたけど、ちょっと納得も出来た。


 英霊様って事にしたって常識がなさ過ぎるもん。


 さっきの僕にしてきた質問だってかなり変だったし。


 最初は時代が違うからかなーとも思ったけど、それにしても魔法に関する知識がなさ過ぎる。


 この世界の人たちにとって魔法は絶対に必要なはずだ。しかもかなり昔から。


 時代が違うだけで魔法が必要ないなんて考えにくい。


 そうなると魔法の知識がないって事はこの世界の人じゃないってことになるよね。


 だからといって頭が良いという証拠にはならないわけだけど。


「わかりました。そこまで言うのなら家に帰るまでの間に何か考えておきます」


 とりあえず、すぐには浮かばないから家に変えるまで時間を稼ごう。


 まだそこそこの距離はあるから着く頃には何か浮かんでるはずだ。


 ちょっと未来の僕よ、頼んだよ。


「父さん!父さん!!帰るよ?」


「あ、あぁ。そ、そ、そうだな」


 まだ呆けてた父さんを正気に戻して、僕たちは自宅へと歩を進める。


 その後は終始無言のまま歩き続けて家路を行く。


「ただいまー」


 父さんも僕も外から帰って来たんだから誰も居る筈のない家ではあるけど、僕は習慣となっている帰宅の挨拶とともに扉をくぐる。


 当たり前のことだけど、やっぱり返事はない。


 ふと、母さんの思い出が過ぎり少しだけ悲しい気持ちになった。


 いつもならこんなこと無いのに…


 ………気持ちばっかり落ち込んでても仕方ないよね。


 気を取り直してミワさんにお願いすることを考えなきゃ。


 正直なところ、今すぐ困ってることがないから帰ってくるまでの間には何にも浮かんでない。


 さて、どうしよう……


 日も暮れ始めて薄暗くなった室内を歩く。


「イグニッション!」


 父さんの点火の魔法だ。


 ダイニングテーブルの中央にあるランプに火が灯る。


 僕も魔法が使えるようになったんだし、点火の魔法も使えるのかな?


 ん?あれ?そういえば僕の属性ってどうなるんだろ?


 普通は精霊によって属性が決まって、属性次第で系統の得手不得手が決まるわけで、火の精霊なら攻撃、水の精霊なら治癒、土の精霊なら錬金といった感じにそれぞれ得意な系統が決定するはず。


 ミワさん曰く、僕の系統って多岐に渡るのは分かるけどその場合、属性はどうなるんだろう。


 さっきはとりあえずで水を出したけど、もしかして他の属性も何とかなったりする?


 下手すると全属性が使えるとか!?


「ミワさん!」


「ひゃ、ひゃい!!」


 急に呼びかけた所為かミワさんから変な声が出た。


 本当にこの人は…なんか情けない。


 まぁいいや。それよりも本題。


「さっきの父さんの点火の魔法は見てました?」


「イグニッションでしたっけ?先ほどランプに火をつけたやつですよね?」


「そうです。それです。あれってミワさんにも出来たりします?」


「えぇ、恐らく可能です」


 やっぱり!もし全属性が扱えるようにあればそれこそ研究者にでもなれるね。


 ミワさんが頭良いとか悪いとかそういうのが関係なくなる。


「それじゃあ一回ランプ消しますね」


 僕ははやる気持ちを抑えつつランプの火を消す。


「それじゃあいきますね!イグニッション!!」


「まて!アレク!!爆は……」


 いきなり入った父さんの静止を最後まで聞くことなく僕は点火の魔法を発動させた。


 特に問題なくランプに火が灯る。


「…つ!はしなかったな…」


 父さんがランプの火をマジマジと見つめて安堵のため息を漏らす。


 あ!そうか、さっきまでの威力を考えれば大規模な爆発が発生してもおかしくなかったわけだ。


 僕は背筋につめたい物が流れるような悪寒を感じた。


 それにしてもよく普通の威力に収まって良かった。


 あれ?なんで普通の威力なんだ?


 ふと疑問が僕の頭を掠める。


「それにしても爆発しなくて本当に良かった。ちょうど同じくらいの威力に収まったって感じかな?」


 むむむと唸るように考え込む僕を余所に父さんは胸をなでおろしている。


 同じくらいの威力?


 むしろまったく同じような感じ?


 もしかして…


「父さん。ミワさん。ちょっといい?」


 僕は二人に声をかけてもう一度外に出る。


 あたりは夕暮れで空が赤い。


「父さん。もう一度あの岩に向かってファイヤーランスを撃ってもらってもいい?」


「別に構わんが…」


 僕は家から少しはなれたところにある岩を指差して父さんにお願いした。


「それじゃいくぞ。ファイヤーランス!」


 帰路の途中で放ったのと同じような威力のファイヤーランスが撃ち出される。


 結果も同じ。岩に当って四散する。


「それじゃあミワさん。ファイヤーランスを準備してください」


「アレク!?それは!!」


「父さん。言いたいことは分かるけど、僕に考えがあるんだ。ミワさん。さっきの父さんとまったく同じ威力を目指してください」


「!?…そういうことですか、なるほど。わかりました。やってみます」


 どうもミワさんには僕の考えが伝わったみたいだ。


 やっぱり頭が悪いわけではないんだろうね。多分、少し…ちょっと……相当おっちょこちょいなだけなのかな?


「大丈夫です。いけます」


 ミワさんが静かに告げる。


「それではいきます。ファイヤーランス!」


 僕の掛け声とともに炎の矢が撃ち出される。


 父さんとまったく同じサイズの矢が。


 そして着弾。


 岩は爆発することもなく常識的な結果、もっと言うなら父さんのファイヤーランスとまったく同じように四散した。


「やっぱりね」


「どういうことだ?アレク?てっきりあたり一面焼け野原になるかと思ったぞ」


 得意顔の僕に父さんが疑問をぶつける。


 あたり一面焼け野原って…まぁ分からなくてもないけど。


「父さん。それはね。多分、ミワさんは魔法を使う時に結果をイメージすることで発動出来るんじゃないかな?それでイメージがあやふやだったり、言葉だけで聞いた魔法のイメージがミワさんの中で変な解釈されちゃうと非常識な威力になるんじゃないかな?」


「ひ、非常識………」


 ミワさんが打ちひしがれてるけどそこはスルーしよう。


 どうせ僕にしか見えないし。


「なるほど。それで父さんのファイヤーランスをもう一度見せて、同じ魔法を使ったわけか。さっきのイグニッションも同じ魔法をみた直後だったからイメージがし易かったわけだな」


「その通り。流石父さん。理解が早くて助かるよ。つまり、僕が魔法を使うときは『同じ魔法』を使うか『範囲や威力を明確に指定』する必要があるってことだね。例えば…」


 僕は周りを見渡していつも水汲みに使う桶を見つけた。


「ミワさん。あの桶にちょうどいっぱいになるように水を出せますか?」


「え?はい。大丈夫だと思います」


 打ちひしがれから回復したミワさんに対して桶を指差して明確に『範囲と威力』を指定した。


「それでは、いきますね!よっと!」


 ばしゃ!


「良し!完璧!!」


 思ったとおりだ。桶に並々と水が入ってる。しかも溢れてない。


 僕の理論は間違ってなかった。


 これからは必ず『範囲と威力』を明確にしよう。


 それにしても魔法を使ったときに僕の魔力はほとんど減った感じがしないのが気になる…


 普通は発動した質量に対して魔力が減るはずなんだけどね。


 僕がマジョナリーキャリアーだからかな?あとで父さんに聞いてみよう。


 とりあえず、属性で火と水、系統で攻撃と一般の魔法は使えることが分かった。


 次は土で錬金を調べてみようかな。


「ミワさん。次は鉄の塊を出したいんですけど、出来ますか?」


「鉄ですね。大丈夫ですよ」


「それじゃあお願いします」


 僕はついさきほど誓ったばかりなのにもう失念していた。


 そう『範囲と威力』を明確にしていなかった。


 そうすればどうなるかって?そりゃ…わかるよね?


「いきます!」


 どっごぉぉぉぉぉぉぉん!!!!!


 僕の掛け声を合図に一瞬にして出来た鉄の塊は、想像を絶するほどの大きさであった。


 地面から少し浮いたところに出来た為、重力に逆らわず自由落下を始める。


 時間にして1秒~2秒。


 巨大な鉄の塊は轟音と膨大な量の土煙とともに地面へ着地した。


 少し離れたところに居た僕たちは地響きになっている事も出来ず、土煙に巻き込まれた。


 目も開ける事も出来ないほどの小さな石礫の大群に僕はただ身を小さくして脅威が過ぎ去るのをまった。


 どれくらい時間がたっただろうか?


 いつしか土煙は晴れあたりは静寂に包み込まれていた。


 僕達は体中に小さな擦り傷を作りながらも奇跡的に無事だった。


 僕は立ち上がり、鉄の塊が出現したほうを眺める。


 そこには夕日に照らされて少し赤く輝く鉄の塊が鎮座していた。


 僕の身長の20倍はあろうかという高さの塊。


 父さんも起き上がり、呆然と眺めている。


 さぁ、そろそろいつものやつかな。


 それではみんなご一緒に。


「「「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!!!」」」



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